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マイクロノベル集 129

916
よいですか。今から宇宙の真理を伝えます。箱を手に持ち、雑念を捨てて受け取りなさい。「もうちょっと早く喋って下さい」雑念を捨てなさい。「いつまでかかるんですか?」雑念を捨てなさい。「空じゃん」あー。またアップデートを受け取ってもらえなかった。


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世はまさにタイパ時代。タイムパフォーマンスの略だよ、なんて説明すら効率が悪い。そんな時代の新サービス。情報を圧縮して教えてあげる。ここにサインしてね。コピペオッケーだよ。パスワードは保存しておくね。ああ、悪魔の仕事が楽でいいなあ。タイパ最高。


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全才能をアップデート! 見ろ、真の実力を!! ……俺の才能ってなに? 力がみなぎってるのは確かなんだよ。飯も美味いし。掃除もはかどるし。よく眠れそうだし。ま、明日考えればいいか。


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学校の帰り道、しっぽが落ちていた。個人情報だし、ウイルスが入ってるかもだし。それにしてもかわいいしっぽだなあ。……あの子のだった。「他人のしっぽを振った感想は?」素敵な化けの皮をお持ちだと思います。「しっぽを出す気はないの」責任を取ります。


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おかあさんが居間でひっくり返ってグーグー眠っている。酔っ払って、お腹を出して、タヌキみたい。ぼくはお腹をしまってあげて、ポンポコ叩く。新しい腹筋マシンだよー。うめき声のシャウトがエモい。うっほっうっほっ。あれ、ゴリラだった。「タヌキだよ」

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