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マイクロノベル集/願いを叶えてやろう 006

026(834)
痩せたいと悪魔に願った翌日、古着屋で「そこそこカロリー計算がうまいです」と書かれたビッグサイズTシャツを発見した。これを着ればダイエットに成功するってこと?


027(855)
俺が営むリサイクルショップに悪魔が入ったマグカップが流れてきた。「あのぉ……前の人間が願いを二つ叶えたから、あと一つだけどOK?」「かまわん。その二つの願いをキャンセルしろ」「りょ」悪魔は去り、超大型リサイクルショップが倒産した。詰めが甘いぜ。


028(900)
ランニングしていたら子供が十人ぐらい着いてきた。「親御さんは?」彼らは道の向こうを指さす。「んじゃ行こうか」俺たちは走って追う。親たちは逃げるように歩く。プライベートを楽しみたい気持ちはわかるが、俺はハーメルンの笛吹き男だぞ、わかってんのか。


029(905)
月が見たい? つまらん願いだ。月の軌道など、たかだか38万キロメートル程度ではないか。我らが魔王の星ルシファーに比べれば庭も同然! 刮目して見よ、地獄の力!! ハァハァ……あ、月見団子くれるんッスか。どうも。


030(906)
「ここに名前を書きなさい」それが悪魔の契約。しかし困ったな。こちとら老眼なんだよ。手書きじゃないとダメなの? 「学校の先生が手書きじゃないとダメだって言うから」そんなあ。えんぴつに名前を書くなんて仏教の修行だろ? おれは悪魔なのにー。

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