見出し画像

マイクロノベル集 122

881
ジョンが光っている。ちょっと待ってね。散歩したくなると身体が発光するんだ。「外に出たい気持ちがエネルギーとなり、体内で濃縮されて放射が――」むつかしいことはよくわからないけど、夜の散歩は楽しいね。


882
これは歌う風鈴。風が吹くと歌います。「チリンチリン鳴ってるだけだが」歌っています。ほうら、風を受けた短冊が揺らす部分が舌で、お椀型の部分が口です。「無理がないか?」じゃああなたは誰と会話をしてるんですか?


883
お風呂で髪を洗っている時に振り返ってはいけないよ。あっ。「変質者か」ぼくは幽霊です。だから隣の住人が体をどこから洗うかも知っています。「変質者か」神様かも。「カツ丼しかないが食っていけ」こうしてぼくはこの家に捕らわれた猫になりました。


884
「押すな押すな。そう、引くんだ。違う違う、上に引き上げるの!」こっち? 「熱いっ! 額にアツアツおでん大根を押しつけるな!!」うーん。やっぱりAIと人間の二人羽織はムリじゃないかな。人間の指示はわかりにくい。でもまあ、みんな笑ってるからいいか。


885
さっき確かに拾ってポケットに入れたんだ。なにって、ネジだよ。回すと奥に入り込んでいくやつ。俺の体に入ったんじゃないかって? 人体に回転する部分なんてないだろ。頭の回転? 表現としてはあるけど……頭の中がカラカラするな。回す物を持ってないか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?