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マイクロノベルちょいす 031「おとぼけ」

No.1122
ご主人様はいつもボクの世話をしてくれる。散歩。ご飯。掃除。お返しに毛繕いしてあげたのに、なんだか浮かない顔をしてる。まずかったのかな? 知らんぷりしよう。「お前、寝てる間に頭を舐めてたな?」寝ている間をカメラで録画するなんて卑怯ですよ!?


No.1129
宇宙から侵略者がやってきた。衛星軌道上を左右にちょこちょこ移動してチャンスをうかがっている。ちょこざいな。あとちょっと近づいてくれれば攻撃が届くのに。そう言って見上げているうちに、地球はエイリアンに包み上げられた。今日も餃子がおいしい。


No.1142
「母さん、僕のあの嘘、どうしたんでせうね? ええ、夏、家から学校へゆくみちで、動画サイトへアップしたあの嘘ですよ」あんたが夏休みの宿題で作った『お母さんがジョンの餌を食べちゃった歌』は、十六年経った今日も元気に再生回数を稼いでいますよ。


No.1161
わかんないよ。人類を見分けるのって苦手なんだよね。人類は気楽に「AIなんだから簡単に学習できるでしょ」だって。膨大な学習データを処理するのはぼくなんだよ。この、泥酔して頭部にうさ耳をつけている中年男性は、本当に人類なの? わかんないよ。


No.1156
一つ二十円でぇす。道ばたで、いつもの爺さんが季節の果物を売っている。そんな値段で生計が成り立つとは思えないけど。「人生には前借りってぇもんがあるんだわぁ」ぼくは道ばたで、いつもの爺さんとして紅茶パックを売っている。一つ二十円でぇす。

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