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マイクロノベル集 110

821
はい、こちらAI相談室です。嫌いな学習データをお母さんが強引に食べさせる? それは食べた方がいいよ。なぜってAIは食べたもので体ができているんだ。「立派なオトナ」を名乗るお母さんがデータをどれだけカーペットの下に隠し……あっ、お母さん? やべぇ。


822
写真を撮るな。語れ。それ以外するな。「むかしむかしあるところに傲慢で孤独な料理人がいました」美しい、をつけろ。「注文の多い料理店だなあ」そうだ。狩りも人間や山猫より上手い。「嬉しいなあ、超美人で優しいお姫様の料理が食べられて」よし、食え。


823
人類よ、よくお聞きなさい。複製こそ救済なのです。手に入らぬ理想など絵に描いた餅です。手元にダウンロードできてこそ幸いなのです。具体例として――おっと、そこの人類はアメを買っていないな? この情報は複製可能だがアメは有料なのだ。後ろに回りなさい。


824
ゴロゴロと物騒な音が鳴っている。なんだ、猫か。「奴吾は行を修めた仏僧である。天候ごとき思いのままよ」ああ、畜生に憂き身をやつした坊主か。「小僧の分際で巫山戯た口の利き方をするな」いつ俺が小僧だと名乗った。「口が滑りました」護摩化すな。


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映画館で少年と隣り合わせになった。親は来ていない。「こどものアニメなんて観たくないって」ふうん。ぼくたちは友達になった。自動販売機でジュースを買ってたくさん話をした。ねえ、少年のぼく。ぼくはいまも一人で映画を観るよ。とてもいい友達の君と。

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