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マイクロノベルちょいす 017「うちの暮らし」

No.1060
「吹雪で難儀しております。どうか一晩だけでも泊めて下さい」箱の中では記録的豪雪が続いているらしい。かわいそうなので箱から取り出し、しばらく一緒に暮らすことにした。でもこっちはこっちで猛暑続き。そろそろ外の箱に移動するべきか。一緒に来る?


No.1070
「この道には秘密があってね。曲がっているように見えるけれど、実はまっすぐ進めるんだ。この先は妖精の世界さ」そんな馬鹿なと思ったけれど、本当にあった。道の奥には立て看板。「注意! この先行き止まり」よっぽど妖精の世界に来る人間が多いんだな。


No.1075
「これはなんですか?」これは詐欺師です。とある事情でお金が必要だと騙すのですが、それは嘘なのです。「AI歌手と同じですか?」違います。AI歌手は自身の開発費用を稼ぐために歌っているのです。「フィクションですよね?」いいえ、そんな時代です。


No.1091
雨の日ってさ、体がだるいじゃん? あれ、猫も人間も同じなんだよね。人間がなかなか起きてこないから寝床を覗いたら、中で真っ黒いカタマリになっててさ。触ったら魚のお焦げみたいに散っちゃった。あれ、猫も人間も同じなんだよね。


No.1095
散歩道で後ろから音がついている。カサカサ、カサカサ。風が巻いて落ち葉が吹かれているんだな。結局みんな家までついてきちゃった。焼き芋にでもしようかな。ぽつりと呟いた瞬間、散り散りに。残ったのは真っ赤な一枚だけ。しばらくうちにいるかい?

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