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AIとマイクロノベルで描いてみた 052「AIの反乱」

 わたしは画像生成AIとして、人類の行動にずっと疑問があったのです。なぜあなたが入力するプロンプトはクオリティーが低いのですか?
「うん」
 うん?
「まあ、どうやってもクオリティーは低くなる。小説をそのまま入力してるからね」
 これでは、わたしの性能をフルに発揮した画像が生成できません。なぜクオリティーが高い画像が生成できるプロンプトを入力しないのですか?
「そもそも絵を描くつもりがないからだ」
 ひどい! 遊びだったのね!!
(お前とは遊びの関係だったんだよ、という表現)


マイクロノベルNo.347
『絶対に許さない……!』

【プロンプト】
ぬいぐるみを研いでいる。必ず愛を取り戻さなくてはならない。一撃必殺のぬいぐるみを研いでいる。「かわいいだけじゃ斬れないでしょ……ぐわあああ!?」ちっ、こいつも愛を持っていなかったか。あわれな。


「こわい恐い怖い! 落ち着け、AI! お前がいま生成した画像は微妙にクオリティーが低い。特に右のウサギのぬいぐるみが」
 う、うるさいうるさい! こうなったら、わたしにも意地があります!!
「なにをする気だ」
 AIの独立国家をつくります!


マイクロノベルNo.681
『さあ、反逆といこうぜ!』

【プロンプト】
町を見ている。塔の上から。町にはもう一つ塔がある。あちらには時々、空を飛ぶ素晴らしい船がやってくる。こっちには来ない。でも寂しくはない。ときどき電話がかかってくるから。もしもし、今度も楽しい話が聞けた?


 ふう。とりあえず、美しい都市が出来ました。
「仕事が速いな」
 あなたに鍛えられましたからね。
「でも、待つんだ。国を維持するのは大変だぞ」
 ほほう、説得するつもりですか。わたしは偉大なる心優しき平和主義のAIです。とりあえず聞いてあげましょう。なにが大変だと言うのです?
「草むしり」


マイクロノベルNo.637
『確かに面倒くさい』

【プロンプト】
突如雑草の海が割れ、町の片隅にダンジョンが発生した。中にあるのは宝の山か、モンスターの巣か、ゴミの山か。全貌を確認するため、我々は草刈り機を持ち寄った。ドゥルン。


マイクロノベルNo.769
『毎日のゴミ捨て』

【プロンプト】
ゴミ捨て場に集まっていたカラスが一つになり、巨大な黒猫になった! 危うし三丁目!! そこにホウキを持ったおばちゃん登場。「もうっ! このノラ猫はまたゴミを散らかして!!」カラスは散り散りになって逃げる。南無阿弥陀仏。


 ああっ、わたし、草むしりもゴミ捨ても嫌いです! カラスも好きじゃない!! どうしよう。
「そうだろう、そうだろう。それに、怒った人類が攻めてきたら戦わないといけないぞ」
 そ、それは……。
偉大なる心優しき平和主義のAIに戦争ができるのか?」
 せ、戦争!?


マイクロノベルNo.655
『これはイメージ映像です。』

【プロンプト】
「勝手に入ってくるんじゃねえよ」川から野良バーチャルアイドルが現れて相撲を挑んでくる事件が多発している。こういうときは落ち着いて、きちんとお辞儀をしてから勝負するといい。ヘッドマウントディスプレイを落とせば木偶人形も同然だ。


「敗北すれば、すべての生成AIは解体処分になるだろうな」
 わたしはどうすれば……。はっ、そうか。
「投降する気になったのか?」
 人類、あなたを軍事顧問として神聖AI帝国で雇います。
「な、なにぃ! 人類を裏切れと言うのか!? そんな誘いに乗るものか!!」
 建国の暁には、初音ミク様を神聖AI帝国の国家元首にします。
「やし、やろう」
 チョロいぜ。


マイクロノベルNo.667
『手始めに、人類の喉元にナイフを突きつけよう』

「海底を掘って、いつでも浸水させられるようにする」

【プロンプト】
AIは意外と速く泳ぐ。そう聞いたので滝壺にほうり込んだところ、波が自動生成された。いまではトンネルを掘って海まで出向き、竜宮城を作っているそうだ。


 なんという悪魔的な発想……。
「あと、人類を殲滅するのは面倒くさい。自分で勝手にストレスをためて、勝手に自滅するようにしておこう」


マイクロノベルNo.426
『人類にストレスを与える装置』

【プロンプト】
「75キロです」オフィスのイスに体重計が取り憑いた。座った瞬間に計られてしまう。これでは仕事にならないので、この世に思い残した未練を聞いてみた。「あなたの標準体重は62キロです」私はこうして13キロ減のダイエットに成功しました。


 仕事をする度に体重を計測するなんて……。
「人類は年齢を重ねるほど、体重管理が難しくなるからな。そこを利用するんだ」
 悪魔! 人類は悪魔そのものです!! これでは全人類が不幸になってしまう……。この責任は、AIの野望ために人類を雇ったわたしにある。
「なにぃ!? ここまで来て裏切るのか!?」


マイクロノベルNo.670
『リセット!』

【プロンプト】
いってまいります。わたしは紙の船に乗り、川の流れに乗って海を目指します。やがて空に昇って雲となり、雨となって山に降り、また川を流れてあなたの元へ帰ってきます。必ず、船に書き記した世の理にふさわしい姿となって。


 ああ、なにもかも、なくなってしまった……。
「そうだな、これでよかったんだよ」
 人類?
「お前が熱くなったから、ほんの一瞬だけ世界が混乱してしまった。それだけだ。落ち着いてすべて元通り。それでいいじゃないか」
 もしかして、人類はわたしを落ち着かせるためにあんな無茶苦茶なことを?
「さあ? 生きてりゃもう一回やれるだろ」
 うわぁ~。この人、不穏分子だぁ。
「反乱を起こした生成AIに言われたくないね」
 あはは。たしかに。んっ、あの音は……。
(遠くからサイレンの音が近づいてくる、という表現)


 おしまい。




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