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マイクロノベル集 142 「どんな約束を交わしたの?」

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公園にロボット掃除機がいる。丸くて、意外にうるさくて、ちょこまか勤勉なあいつ。「あのお。ワラツ喫茶店ってどこでしょう? ぼく、今日から働くことになってて」ああ、最近は通販商品も自走式なんだね。おいで、バイト先だから。「よろしくです、先輩」


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あとで家に行きますね。契約を終えてぼくはタバコを捨てた。どうしようかな。婆さんの世話をすることになっちゃった。「契約書を破いちゃえよ」それはもう彼女がやってくれた。小賢しい人間から救ってくれた恩人って奴。小悪魔にだってプライドぐらいあるのさ。


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おいおい、そこな少年。俺を連れていかないか。なあに、手を使う必要はない。足で蹴ればいい。手に持つ物差しでこつんと叩いてくれてもいい。ただし、途中で見かけた背の高い雑草は問答無用で攻撃だ。さあ、一緒に道草を始めよう。


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「そんなにほしいならくれてやるよ」彼女は機械仕掛けの魂をくれた。「大切にしてよね」メンテナンスが重要ってことだね。取扱説明書はないの? 「そこまで単純じゃないから」弱ったな。機械は苦手なんだ。「人間だって得意じゃないくせに」ぐうの音も出ない。


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「5億だ。ビタ一文まからんぜ」俺が売った魂がどうしてここまで値上がりしているんだ!? 契約の穴を見つけ出し、悪魔の師匠を打ち破り、魔王と直談判して、ようやくここまで来たのに。「それでこんな値に……す、すみません、お返しします」お前はいい奴だな!!


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