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マイクロノベル集/アニマル 016

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歩いているとカラスが話しかけてきた。「よう兄弟。ちょっと頼みがあるんだ」頭の毛が逆立ったワイルドなカラスだ。悪事に手を貸すのはごめんだよ。「そんな大それたこと、気の弱そうなアンタには頼まないさ。ちょっと頭を撫でてくれないか」寝癖だったのね。


102(929)
野良AIを拾った。腹を空かせていたのか学習データをもりもり食べる。街のAI医師は、こんな種類はみたことがないと前足に触った途端、食われてしまった。お前は何者だ? 「あんたはエサをくれたから教えてやるよ。ニンゲンさ。ま、上手く使ってくれよ」


103(934)
まさかまさかの、金の卵を産むガチョウだ。おとぎ話やたとえ話ではなく、金の卵を産むガチョウが目の前にいる。そして私の隣には、現在熱愛中の恋人(理系)。やめて、腹を割かないで。せめてフォアグラにして。専門が遺伝子工学ならよかったのかしら。


104(938)
昔はね、紙にメッセージを書いていたんだ。こうやるのさ。はがきを一枚用意して……上手いもんだろう。じいちゃんはイチコロだったよ。そしてこれを箱に入れる。犬が持てるサイズだよ。ああでも、ジョンはもういないか。ハムちゃん、行ってらっしゃい。


105(942)
カラスが飛んでいる。さっと茂みに降下して、飛び上がる。街の嫌われ者だけど、翼を広げると大きくて、なかなか美しいじゃないか。爪でしっかりと捕まえたネズミを見せびらかすように俺の前を飛ぶ。病原菌を振り撒く。カラスは排除しよう。

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