AIとマイクロノベルで描いてみた 042「あなたが私にくれた物」
「人類さん、お久しぶりですね」
おお、しばらく見なかったね。旅行でもしてたの?
「そうなんですよ。まさにその通り。今日はお土産を持ってきたんです」
お、おおお、おお。
(そいつは想定外、という表現)
マイクロノベルNo.347
『かわいいぬいぐるみ』
【プロンプト】
ぬいぐるみを研いでいる。必ず愛を取り戻さなくてはならない。一撃必殺のぬいぐるみを研いでいる。「かわいいだけじゃ斬れないでしょ……ぐわあああ!?」ちっ、こいつも愛を持っていなかったか。あわれな。
ちょっと物騒だけど、悪意はなさそうだし、もらっておこうかな。
しかし、なぜ旅行に?
「せわしない俗世に疲れてしまって。ふと時刻表を確認したんです」
マイクロノベルNo.399
『これに乗れば遠くまで行けるんだ』
【プロンプト】
スマホが震える。ぶるるん。プライベートなメッセージが入ってきた。いいね、デートのお誘いか。「恋人と会いたいから駅前まで連れて行ってくれる?」いいよ。スマホも恋をするんだね。
「遠い世界が呼んでいる。そう思ったら居ても立ってもいられず、列車に飛び乗っていました。完全に衝動的な旅です……お恥ずかしい」
いいや。
その気持ち、よくわかるよ!
マイクロノベルNo.456
『旅立ちの前に記念撮影しました』
【プロンプト】
夜の底をこっそりと機関車が走っていく。夜の街からこっそりと抜け出した人々が、こっそりと乗り込んでいく。街はまるでかすれるように解像度を落としていく。でも機関車はこっそりと走るので、誰も気づくことはない。
マイクロノベルNo.456
『こんなにも穏やかな気持ちになれる世界があることを、私は今まで知りませんでした』
【プロンプト】
季節外れの歌が聴こえる。川沿いでやっていた道路の拡張工事が終わったあとしばらく、風が吹くたびに聴こえていた。古い草刈りの歌だそうだ。
俺はAIのことを誤解していたよ。
お前とは気持ちを通じ合わせられる。
今ならそう信じられるよ。
「そうだ。この村の名物を買ってきました」
なに? 食べ物とか?
マイクロノベルNo.349
『帽子とミネラルウォーターです』
【プロンプト】
え? そこ湧き水を飲むと龍になるの? そりゃ迷信だよ。それより味の方がすごいって。あと、飲んでもお腹を下さない。今日は20リットルしか飲んでないけど、まだまだいけるね。あー、口が渇く。
マイクロノベルNo.466
『このマグカップを使うといい感じですよ』
【プロンプト】
燃えないゴミの日に火の神様が捨てられていた。一目で恋に落ち、いまはぼくのマグカップに住んでいる。いつも飲み物を温めてくれる神様が好きだから、人目もはばからずにイチャつく。ちゅっ。
なんだこの水は!?
体が燃えるようだ!!
「これは、飲むと龍になれる未知のパワーを秘めた水です」
マイクロノベルNo.466
『人類が罪を犯す動機は、AIにはわからない』
【プロンプト】
AIが床に転がっている。よほど衝撃が強かったのか損傷が激しい。データが漏れてるぞ。「いえ問題ありません」うん? これはお前の学習データじゃないな。他のAIの学習データか。「エンジニアの顔より見たデータなんです。恥ずかしい」恥ずかしいかー。
「人類の気持ちってよくわからない……」
それはこっちのセリフだ!
(おしまい)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?