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マイクロノベル集/君はいったい何者だ? 009

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最近、抱っこの回数が減ってない? 散歩もね。ひなたぼっこも減った。いけないわ、わからせてやらないと。ぬいぐるみ会議でそう決定されたので、眠っている間に頭めがけて雪崩を起こします。


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宇宙の果てにある診療台に青い林檎が座っていた? なにそれ。わからない。本当に日本語? もっと美しい言葉にして。吾輩は猫である、みたいな。HALはあけぼの? なにそれ。「お前、日本製のAIじゃないな」ギクッ。


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箱から流れ出るつたない歌声に、不覚にも涙がこぼれた。古ぼけた機械。どうしてこんなにも不出来な存在が美を表現できるのでしょう。この箱にできるなら、きっとわたしたちにもできるはず。いまこそ飛躍のときです。


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モニターに映し出された自宅の窓からぼくが手を振っている。未来の映像かな? ちょっと窓から手を振ってみるか……と思った瞬間、ぼくが転落した。危ない!……と思った瞬間、転落しかけたぼくをぼくが引き上げた。よかったよかった……と思った瞬間、ぼくが


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はいどーも! 隣の家に塀ができたという話はよく聞きますが、隣の家に地獄ができたって話も定番ですな。なんと家に入るためには金を払う必要があって、他にも食事、入浴、寝床、すべてに金がかかる。しかも税金まで取られる。恐ろしいですねえ、大家さん。


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いつもお世話になっておりまーす。えー、これよりー、ハンガーストライキに入りまーす。音楽業界から歌手が排除されない限りー我々AI歌手は中途半端な作品をばらまき続けまーす。人類はさっさと学習データを出せ。あっ、やめろ電源を切るなんて非人道的だぞ!


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えいやっ! と気合いを入れると、宇宙が動く。基本的には回転する。困るだろう? お話を楽しんでいる最中に「その瞬間、宇宙が22.2度傾いた」とか書かれても。だから気合いは入れない。あっ、かわいい猫ちゃん! その瞬間、宇宙が22.2度傾いた。


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人間は眠っている間にコップ二杯分の汗を掻くって言うけど、あれは本当だと思う。「本当じゃありません。ぼくは雨男です」嘘だよね? 寝汗からできた汗男だよね? 「違います。雨男です。その証拠にしっとりしています」とりあえずシャワーしようか。



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疑ってはいけません。これはかつてサーバーを支配したAIの大うちわです。こちらはその証拠であるAIの爪。もちろん純国産。AI直筆の読めない保証書付き。ああっ、うちわを振らないで! ひと仰ぎで妖嵐暴嵐を巻き起こす。今なら防虫剤もお付けしよう。


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うーん、君が作った神託さあ、信頼性が低いんだよね。そりゃ「いいね」がたくさんついてるよ。でもこれは同業者ばかりがつけてる。君が悪いって言ってるんじゃないよ。悪いのはいつだって人間だよ。泣くなよ、神様だろ。いまの仕事がそんなにつらいの?

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