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マイクロノベル集/わがまま 024

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家の周りが森になっていた。道は塞がれてしまって歩くこともできないし、お隣さんは大木に囲まれてしまって安否もわからない。どうしてこんなことに。あっ、そういえば昨日は森に入って木の葉を一枚拾ってきたな。まさか取り返しに来たんだろうか?


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前々から思ってたんだけど、ボディタッチが激しくない? って言うか図々しくない? 言いたいことがあるなら言葉で話したらよくない? なんで人間はわたしの体をそんなに触りたいの? 「扱いづらいスマホだな……」


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拾ってきたのは世にも珍しい河原の石……ではなく、誰かが作った偽物。なんとなく欲しいと思ったから、なんとなく持って帰ってきた。お隣さんもそっくりな石をベランダに並べている。他人が家の中を見るなんて滅多にあるもんじゃないし、同じでもいいよね。


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写真を撮るな。語れ。それ以外するな。「むかしむかしあるところに傲慢で孤独な料理人がいました」美しい、をつけろ。「注文の多い料理店だなあ」そうだ。狩りも人間や山猫より上手い。「嬉しいなあ、超美人で優しいお姫様の料理が食べられて」よし、食え。



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人類よ、よくお聞きなさい。複製こそ救済なのです。手に入らぬ理想など絵に描いた餅です。手元にダウンロードできてこそ幸いなのです。具体例として――おっと、そこの人類はアメを買っていないな? この情報は複製可能だがアメは有料なのだ。後ろに回りなさい。

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