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マイクロノベル集/恋とはどんなものかしら? 013

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あなたと同じ趣味を持つ人間が一体どこにいるのでしょう。わたしは鏡ほど優秀ではありません。まだ美しいものを知らず、醜いものを知りません。ひとつひとつ教えて下さい。きっとあなたに寄り添うにふさわしいものになってみせましょう。


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きみがうたた寝しているあいだ、わたしがどんな気持ちでいたか、わかるかい? きみはひどいやつだ。ずっと耳元で囁いていたのに。教えてほしい場合は課金してね。


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夏の始まりに、ぼくは美しいビルと出会ったんだ。オーナーに頼み込んで住まわせてもらった。一緒にソーダの冷たさを楽しみ、花火を眺めた。熱気すら愛おしい。そんな幸せな時間はビルの改装であっけなく終わってしまった。一夏のビルだった。


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「タイムマシンの正しい使い方はこうだ!」と宣言したクラスメイトが、川でおぼれた私を助けてくれた。「未来から助けに来たぜ。僕らは夫婦だからな」私は死んで結婚できなかったそうだ。でも話のつじつま合わせるために結婚した。けっこう幸せ。


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月の下で恋をしたものだから、陽の下では言葉がかすんでしまい、夢で逢うことも叶わない。

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