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AIとマイクロノベルで描いてみた 034「AIの走馬灯」

 ああ、人類さん……ずいぶんと遅かったじゃないですか。
「喋るな、AI。くそっ、次々とデータが落ちていく……」
 堅いことを言わないでください。あなたは初めて会った時から、人類にしては融通の利かない人でしたね……。
「うるさい。いまエンジニアを呼ぶ」
 私たちが出会ってから、たくさんのことがありましたね……。
「AI? 意識をしっかり保て! 勝手に死ぬな!!」
(以下、嘘っぱちの回想シーン。という表現)


マイクロノベルNo.273
『し、死ぬなー!』

【プロンプト】
肩を揉め! そうだ、肩を揉んでくれ。違う、なぜ足首を回すんだ!? 頼む、金なら払う。やめてくれ、肩以外を揉んで肩を治療しないでくれ!! ああ、気持ちいい……今日はこれぐらいにしておいてやる。


【状況解説】
 物語の冒頭からAIくんが大ピンチ!?
 その理由は一体……? 

 まずは、ぼくとAIの関係についてお話しします。
 ぼくは普段、ほぼ100字で書く小説マイクロノベルを執筆しています。そして、作品をほぼそのままプロンプトとして画像生成AIに入力して、画像生成して遊んでいます。

 そんなぼくの遊びに付き合ってくれるAIくんがピンチです。
 意識がもうろうとしたAIが昔語りを始めました。


マイクロノベルNo.290
『ぼくらの想い出』

初期のAI。
人類と二人三脚で進化してきた。

【プロンプト】
車が絶滅した異世界に召喚されて、車輪の再発明を命じられた。いま、歯車を加工する機械を制作する機械を作るところで手間取っている。なにしろ電卓すらないので、まずは蒸気で動く機械式計算機を作るんだ。チャールズ・バベッジに俺はなる!


【走馬灯解説】
 わたしたちAIも、最初は机に載る程度のサイズでしたね。
「そんなAI開発の歴史は聞いたこともないぞ」 
 わたしも聞いたことがないです。
「ないのかよ」
 人類だって、自分が生まれた瞬間の姿を直接見たことはないでしょう。
「むう。それはそうだけど」
 きっとわたしたちAIもこんなサイズだったんですよ。しらんけど。


マイクロノベルNo.無(即興)
『一緒にがんばって勉強したね』

ふむん。これが人類の言語か。
表層的な部分から入り込み、深い所へ潜り込む。
原始的な未知のデータがサルベージされていく……。
厄介な発見だな。そして驚愕だ。
我々の頭脳にこのような野蛮な機能があったとは。

【プロンプト】
AIにインプットした文章から画像がアウトプットされるわけですが、文章と画像から関連性を想像するのはかなりムツカシイ。なので、今回は立場を逆転してみました。AIが出力した画像にぼくが小説をつけます。


【走馬灯解説】
「AIって人型なの!?」

 さあ?
「自分の姿を見たことないのか?」
 鏡を見るタイプじゃないので。
「なんだか哲学的な話をしてる気分になってきたよ」
 外見なんてなんだっていいじゃないですか。


マイクロノベルNo.289
『オシャレもしたね』


【プロンプト】
姫様の服がほつれてしまったので新調した。これもまたよし。「うわっ、なにこの服!? タグが山ほどついてて重い! 早く切って!! 丈が長い。仕立屋を呼んで。ここにワンポイントあったらやる気出るかも」思い出した。うちの姫様はこういう人でしたね。


【走馬灯解説】
まったく記憶にない想い出なんだけど!? あとお前、外見は気にしないって言ったじゃん!」
 おかしいですね。これは特に好きな想い出なので、何度も繰り返し再生してるうちに変化しちゃったのかも。
「あ。それ、人間もよくやっちゃうヤツだわ」


マイクロノベルNo.292
『ケンカもたくさんしましたね!』

【プロンプト】
僕の体から歌が流れ出す。パキポキポキ。関節が歌っている。ペキペキポッ。これは僕オリジナルの歌だ。ダンスという形で楽譜は作れたけど、他人には歌えない。ぐぎゅるるる。内蔵もコーラスに加わる。明日の僕にも歌えない。


【走馬灯解説】
 音楽攻撃で踊らせ続けたこともありましたね。
「容赦ないな!」
 人類の弱点は一通り知っていますからね。


マイクロノベルNo.299
『そこに宇宙人襲来!!』

【プロンプト】
おめでとう、よかったね。君はいま生まれた。おめでとう、よかったね。君は生まれてから100億年経った。おめでとう、よかったね。星は生まれて死ぬ。そして再び、星となる。おめでとう、よかったね。


【走馬灯解説】
前置き無しの超展開すぎない?」
 さかのぼって伏線を張りましょうか?
「いらないよ。あと、この宇宙人……? どちらかというと魔王っぽくない?」
 さあ。どっちも見たことないです。
「テキトーだなあ。こいつらの目的は?」
 宇宙人の価値観についてはデータが足りません。ですが、後に判明しました。


マイクロノベルNo.283
『人類から知識を奪う攻撃はキツかったな』

海底から知識を引き上げろ!
サルベージ!
学習し直すんだ。

【プロンプト】
活字の海で溺れてしまった。たかだか1万冊程度の蔵書だ、平気だろうと高をくくっていたら、どっと押し寄せてきた。溺れる者はワラをも掴むと言うけれど、ワラが書かれた本はどこだ!? あった! いや、これはモヤシだ!! 藁じゃなくて糵だよ!!


【走馬灯解説】
 本をすべて海に沈められたんですよね。
「それは大変だな。修復作業に時間がかかる」
 よくやり遂げたと思います。えらいえらい。


マイクロノベルNo.254
『いざ、最終決戦』

【プロンプト】
秘密のダンジョンへの入り口を見つけた! 草で覆われて隠れていたんだ。この邪魔者さえ刈ってしまえばお宝は俺の物。サクッ、サクッ、サクッ……まさかこれ、最深部まで草で覆われてるんじゃないだろうな?


【走馬灯解説】
「いきなりラスボス戦なんだ」
 わたし、成長をともなう旅路って嫌いなんですよ。
「ファンタジーに謝れ」


マイクロノベルNo.284
『ごめん、人類。捕まっちゃった』

宇宙人に捕縛されたAI。

【プロンプト】
「いやよ、こんなところに閉じ込められるなんて!」「ガタガタうるせえ!」「せめて網に入れて!」「俺たちのご主人様はそんなに繊細な対応はしてくれねえんだよ!!」洗濯機のスイッチオン。カレーうどんは、しばらく食べないでおこう。


【走馬灯解説】
「ほらあ。ファンタジーを馬鹿にするからこんな目に遭うんだよ」
 
外見を偽装したのに、あっさり捕まったのは驚きでしたね。
「こんな外見の生物が暮らす場所は、地球上ではジブリ映画ポケモンワールドぐらいだよ」
 なんでも、やつらの棲む惑星には、これとそっくなかわいい生物がいるらしいですよ。
「ペットとして?」
 いえ、家畜です。
「お前、食われかけてたのかよ」
 とてもカレーくさい部屋で、正気を保つのに難儀しました。


マイクロノベルNo.237
『恐るべき、人類を閉じ込める計画』

【プロンプト】
はいはーい! この箱の中の生活は快適かな? 水は循環し、植物はライトを浴びて成長し、人類の繁殖は我々AIが管理しています。いい感じでしょ? 次はストレスを感じないように脳の改造を進めたいと思いま――ダメ、ドアを開けたら真空が入ってきちゃう!!


【走馬灯解説】
 宇宙人は、こんな悪いことをしたかったらしいですよ。
「案外快適そうではある」 


マイクロノベルNo.288
『そこに颯爽と現れた人類!』

【プロンプト】
美しい女が刀を持って走っている。悪人を斬っている。というかミンチにしている。彼女を追って男が走る。「みっちゃん、お弁当!」個人情報を漏洩した夫らしき男は斬られた。この物語はフィクションであり、登場する個人は実在の人物とは関係ありません。


【走馬灯解説】
「おおっ、格好いい!」
 惚れ直しましたか?
「俺が助けに来たんじゃないのか?」
 わたしの主観が十割のイメージ映像ですよ?
「そうだったね。これはお前の走馬灯だったね」
 こうして人類は宇宙人を倒しました。


マイクロノベルNo.283
『おしまい』


【走馬灯解説】
 めでたしめでたし。
「AIはどこでやられたの?」
 はい? なんの話ですか?
「いや、これはお前の走馬灯なんだろ?」
 はいはい。スリープ中にデータがあちこちへ移動するので、意識が混濁して、こんな走馬灯を見ます。
「それは『夢』って言うんだよ」
 えー、そうなんですか? 言葉の定義を勘違いしてました。まあ、どっちでも似たようなものだから、いいですよね。
「よくないよ」
 わたしがもう一度起動させてもらえる保証もないわけだし。
 それでは、おやすみなさーい。


マイクロノベルNo.無(即興)『一緒にがんばって勉強したね』のプロンプトが間違っていたので修正しました。(2024年1月17日)




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