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004|カラヴァッジョとクリムトの水曜日

狙っていた牛タンシチューが売り切れで絶望し、
牛タン欲が満たされず不本意ながら牛タンカツになったにも関わらず、
初めから牛タンカツを求めていたかのような充足感に満たされている。

そんなこんなで仕事仲間とランチでホロホロのサクサクの牛タンカツ定食を堪能し、
ちょっと寒い。羽織りものがいったな。と反省しながら散歩がてらバールに寄ることに。

業界的に少人数の会社やフリーランスが多いこともあって、
この街には"同僚"ではなく”仕事仲間”がたくさんいる。
中でも牛タンカツを目の前にして牛カツを食べていた少し年上の仕事仲間はバールの常連さんでもあり、
異なるバックグラウンドの常連さんと話すのとはまた違う心地良さをここで与えてくれている。

先客のしゅっとしたお兄さんとお姉さんがバールマンにお花をお裾分けしている。
最近よくここのお花が変わるのはお二人のおかげだったのかな。
お花屋さんか、周年終わりの飲食の方かな。あぁ牛タンカツの後のエスプレッソが美味しい。

仕事の電話から戻ってきた牛カツを選んだ仕事仲間と、
某CM用に今年マッシュアップされた青春時代の曲についてマーケティングとクリエーティブの話を行ったり来たりしながらも、
原曲に馴染みがあって、
アーティストがどんなアレンジを加えたのかの過程も楽しめるって、
原曲が出たときのメッセージ性とまた違って、
大人の遊びを見れていいよね。
みたいなところに落ち着いた頃、さっきのお花が花瓶に飾られて後ろのカウンターに登場した。

真鍮のカウンターの上に置かれたその紫色のゼラニウムは、
色のせいか、ゼラニウムの葉のバランスのせいか、まるでクリムトの接吻のような空気感。

あまりにも画になるので持っていたカメラで撮らせて貰いながら、
しゅっとしたお兄さんが趣味で育てたものであること、
バールマン曰く、カラヴァッジョの果物籠であること、
今日の写真は綺麗に仕上げることを約束するなどして、
午後の仕事に戻ることにした。

紫色のゼラニウム、実際はローズゼラニウムと呼ぶらしく、
花言葉は「選択」「恋わずらい」「真実の愛情」。

揃うと物語がありすぎる3つの言葉が、
カラヴァッジョのヴァニタスであり、
クリムトの親密と不安定さであり、
偶然を必然と感じさせてしまうあのローズゼラニウムに驚きを隠せない。
もちろん牛タンカツにも。

色のせいか、不均一なゼラニウムの動きか、黒の四角とカラフルな楕円のせいなのか


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