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無我夢中の1ヶ月。コロナウイルスがNAGOMI VISITに与えた影響(1)

こんにちは。楠めぐみです。「世界中の旅人と食卓を囲むホームビジット」を運営するNPO法人NAGOMI VISITの代表をしています。

今年1月に決めた個人的な目標の1つに「noteで情報発信しよう!」があり、ようやく2月にnote を書き始めたのもつかの間、コロナウイルスの影響が日に日に大きくなり、無我夢中で走り続けて気づけば1ヶ月以上が経っていました。

結論から言ってしまうと、3月にホームビジット活動を一時的に凍結するという判断をしました。2011年から毎日毎日、地道に重ねてきた自分たちの仕事が完全にストップしてしまうことは、私にとってもメンバーにとってもかなり大きな出来ごとです。

でも、「ただ止まっているわけにはいかない。どうしたらこのピンチを未来につなげられるか?」という一心で、まさに無我夢中という言葉がぴったりな1ヶ月でした。

何年後かにこの時を思い出せるように、何を考えどんなアクションをとったのか記録しておこうと思います。

Nagomi Visitとして今、何をするべきか?

2020/02/20

日本国内では既に大きなイベントのキャンセルがニュースとなり、身近なイベントや人が集まる行事も次々とキャンセルされる日々。

NAGOMI VISITには1月末から、少しずつホームビジットをキャンセルしたいという問い合わせがホスト・ゲストから届くようになり、個別に対応していました。秋にクルーズで訪日予定だったオーストラリアのゲストが「日本行きのクルーズそのものがキャンセルとなったので、ホームビジットにも参加できなくなった」というケースや、「ドイツから東京マラソンに参加するために訪日予定だったけれど、東京マラソンそのものがキャンセルとなったので、日本に行かないことにした」というケース。そして、コロナウイルスの感染拡大を心配しホスト側からキャンセルしたいと申し出があるケースも。

通常は、ホームビジットの実施が決まったあとに気軽にキャンセルをすることは極力避けましょうというルールとしていることもあり、今回のコロナウイルスのせいでキャンセルしたいと考えるホスト・ゲストはとても悩んでしまうのではないか、何かしらの対策が必要だと考えました。

2月20に考えていたこと

普通のイベントであれば参加をやめるのは簡単。一方で、ホームビジットの場合は「キャンセルするのは相手に申し訳ないな」という気持ちが強くなり、判断しにくい/判断を誤る可能性がある。
日本国内では、既にコロナウイルスがかなり大きな問題になっている。一方で、ゲストの国ではこの時点で対岸の火事。これからさらに社会に大きな不安が押し寄せたとしても、ゲストもホストも個々人の情報源によって不安の大きさが違うはず。コロナウイルスに対する感覚に大きな温度差があることが、コミュニケーションの弊害になることが想定できる。
キャンセルすると決めたとしても、相手に英語でどう伝えればいいのか?とかなり悩むはず。言語の問題というよりは、どうコミュニケーションすればいいのか、相手に失礼のないようにしたいと思えば思うほど難しいはず。
NAGOMI VISIT としては、お互いに会って楽しい時間を過ごすはずだった相手との関係を、このコロナウイルスによるコミュニケーションミスで台無しにしてほしくない。

このような考えを2月20日(木)夕方にNAGOMI VISIT 事務局メンバーの2人にシェアし、翌日21日(金)にガイドラインとなる文面を作成、夕方にGengoで翻訳依頼をし数時間後に完成、さらに夜になって副理事の真田にダブルチェックを依頼。日付が変わる前にガイドラインを完成させ日英それぞれのサイト上で発信しました。

日本語新型コロナウイルス感染症に伴うキャンセルへの考え方と、 NAGOMI VISIT 開催時の感染防止について (PDF 166KB)

英語Guidelines for Cancellations due to the New Coronavirus and Infection Prevention Measures during a Nagomi Visit (PDF 285KB)

日本語と英語で全く同じ内容を発信することで、NAGOMI VISITからのガイドラインとしてホスト・ゲスト両方に確実に届いていますよ、という状態が必要でした。22日(土)にはマッチングが確定しているホスト・ゲストにこのガイドラインを一斉送信しました。

普段のNAGOMI VISITでは、ホストもしくはゲストがやむを得ない状況(家族の病気や不幸があった場合など)以外でのキャンセルはほとんど発生しません。1ヶ月に1件あるかないか、という程度です。

しかし、このガイドラインをきっかけに、翌月曜日からは毎日複数件のキャンセル対応をすることになりました。でもガイドラインのおかげで事務局にキャンセルの連絡が届くタイミングでは既にホスト・ゲスト間でキャンセルの同意が取れており、事務局内の業務も効率化することができました。

また、キャンセルを相手に伝える時にそのまま使える英語例文を活用してくれた方も多かったようです。

「今回は残念だけれど、状況が落ち着いたら会いたいです」という気持ちをお互いに伝えあえていることを事務局にも伝えてくださる方が多く、ガイドラインが功を奏していると実感できました。

このままだと、4月末で資金ショートすることが判明

2月27日(木)の夜には、翌週から全国の小中高校が臨時休校になるというニュースが舞い込み、ホームビジットのキャンセルもさらに増加。

首相、全国の小中高校に3月2日からの臨時休校を要請

ただ、この時点での私はと言えば「今はキャンセルが続いているけれど、春になればこの状況は落ち着くはず。例年よりも明らかに参加者数は少ないけれど、4月に確定しているホームビジットが予定通り実施できればなんとか乗り越えられるだろう」と考えていました。

その考えが間違えていることを実感したのは、週末29日(土)に夫に何気なくこの考えを話した時でした。

そこで夫が教えてくれたのは「暖かくなれば収まるという話は、まだ根拠がない。誰にもわからない。もっと続く可能性もあるよ」と。

4月以降もホームビジットが実施できないとなると、あまり悠長に構えているわけにはいかないと悟り、すぐに資金状況と今後の支払い予定を確認しました。そして、このままの状況では4月末には資金がショートすることが判明しました。

3月1日(日)は娘とおままごとをしたりパズルで一緒に遊びながら、頭の中で資金繰りについて考えるという1日を過ごしました。

日曜日の夜になり、2日前の28日にセーフティネット4号なるものが発動されることになったというニュースを見つけ、「なにそれおいしいの」状態から糸口を探ることに。

新型コロナウイルス感染症に係る中小企業者対策を講じます(セーフティネット保証4号の指定)

3月2日(月)、娘を保育園に届けた直後からこのセーフティネット保証4号を利用できるのかどうかについて調べ続けました。この日は午後から予定があったので、この日は午前中の3時間しか仕事ができません。必死でした。

NPOはこの仕組みの対象なのか?具体的にどう申し込みすればいいのか?など問い合わせをしたかったのですが、窓口の一覧も多く、かなり迷うことに。

どうやら信用保証協会というところに聞けばいいかもしれない、というところまでたどり着き、電話で問い合わせしたものの、電話口に出た担当者も「国から「発動する」という話は出ているけれど具体的な指示がまだないので何とも言えない」という説明。それでも個人的に調べてくださり、会社所在地の自治体に聞いたほうがいいのでは?ということを教えてくださりました。

そこでNAGOMI VISITの所在地である港区のセーフティネット保証についてHPを確認したところ、情報更新日が数年前という状況で、色んな現場が混乱しているんだろうなぁと実感しました。

振り出しに戻ってさらに問い合わせ先を探し、日本政策金融公庫へ電話。
NPOも基本的には対象であり、NAGOMI VISITの内容をざっくりと説明したところセーフティネットの対象だということ、申込手順などを確認することができました。

5月以降、人件費を含む固定費数百万円は、セーフティネットを利用してまかなうしか団体存続の方法が思いつかず、その線でNAGOMI VISITの監事に相談することを決めました。

自分達の人件費を借金してまで無理やり続けたところで、そもそも今、ホームビジットの需要はあるのか?

3/3 (火)AM

セーフティネット保証4号を利用する方法までたどり着いたものの、自分の中では「本当にこの方法がベストなのか?」という問いに自信が持てませんでした。

正直に言えば、できれば借金はしたくない。

セーフティネット保証を利用するというのはつまりNPO法人として融資を受けるということ。債務の100%が保証されるとはいえ、「借金をすること」に大きな抵抗がありました。いつ活動を再開できるのかわからないからこそ、返せる見込みがない借金をするべきなのか、本当にそれでいいのか、、と。

そんな悩みも含めて、3日(火)の午前中にこれまでのキャンセル状況と資金繰り、そして今後のマイナスをまずはセーフティネット4号を利用してなんとかしようと考えていることについて監事に相談しました。

メールで状況をまとめ、さらに電話ですべて伝えた上で、監事からいただいたアドバイスから、私は大きな気付きを得ることになりました。

「仮に人件費を借金でまかなえたところで、今ホームビジットの需要はないんじゃないか?」と。

そこでハッとしました。

確かに。今の状況で、ホームビジットをしたいと思う人はいない。

さらに監事は続けます。

「であれば、今は一切の活動を停止し、コロナウイルスが終息したときにまた再開するのがよいのでは?」というアドバイスでした。

資金がショートすると判明してから、「どう続けるか?続けるために足りないお金をどうすればいいのか?」だけを考えていたので、活動を止めるというのは完全に盲点でした。

監事からは、「めぐにとってかなり厳しい決断だとは思うけど、よく考えてみて」と言っていただきました。(監事は私が大学生の頃からお世話になっている恩人。若い頃から変わらず下の名前で「めぐ」と呼ばれています)

活動をストップするというのは、自分の仕事がなくなるということ。給料もゼロになるということ。 

それでも、監事からのアドバイスを噛みしめれば噛みしめるほど、今できることはそれしかないと感じることができました。

そして、借金をしなくていい方法があるのなら、そのほうが確実に良い判断だと思えました。

この段階で、「3月中に活動ストップする」「コロナウイルスの状況が好転したら再開する」ことを決め、お昼ごはんを食べながら「NAGOMI VISITの仕組みと団体だけを存続させるために、最低限ラインとして残すべきことは何か?」と考えました。

活動停止する決断を、メンバーに伝えた時の反応

活動をストップすることを、何よりもまずはメンバーに伝えなければということで、すぐに2人に連絡を取りました。

実はNAGOMI VISITは、去年の6月から副理事が産休・育休中。声をかければすぐに話せるという環境ではありません。また、オペレーションコーディネーターの山神はブラジル在住なので、時差的に最短で直接話ができるのはブラジル時間の朝になってから(=日本の夜)でした。

副理事とは、(赤ちゃんのお世話が一段落したあとの)夜9時以降なら話せるということで時間を確保してもらい、zoomで一連の状況と活動停止の決断を伝えました。

4月から保育園に入れることが決まったばかりで、慣らし保育が落ち着いたら本格的に復帰しようと数日前にも話していたところだったので、彼女にとって活動停止の話はまさに青天の霹靂だったはずです。仕事復帰を目標にして育児をがんばってきたから、、と思わず泣いてしまった彼女に返す言葉がありませんでした。

またその後、山神とも連絡がつきその日の夜中に同じくzoom で伝えることになりました。やはり驚いた様子でしたが、「英断だと思うよ」と言ってくれました。

メンバーへの報告が済んだ後で、NAGOMI VISITのシステムをお願いしている会社さんにすぐに状況を報告し、「今後の新しいリクエストを受け付けない、ホストの新規登録も受け付けない」という形にシステムを修正していただくお願いをし、日付が変わったところでこの日は床につきました。

続きます。


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