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グルコースオキシダーゼはワインの苦境を救う一手になるか

グルコースオキシダーゼ (glucose oxidase: GOX) と呼ばれる酵素があります。ブドウ糖 (グルコース) を分解することのできる酵素で、食品の変色防止や酸化防止の目的でも使われているものです。

物理的な手法を使わずにグルコースを分解できるため、一時期、ワインの低アルコール化に利用できるのではないかと考えられ、検証されていました。しかし、そうした検証は2000年前後まででその後は少なくともワインの分野ではほぼ目を向けられることがなくなってしまった技術でもあります。昨今、低アルコール飲料への需要が拡大しており様々な技術の開発と検証が行われているにもかかわらず、です。

この酵素が使われなかった理由は明確です。デメリットが大きかったのです。

酵素を効率的に使う前提としてpHを上げなければならなかったり、温度を上げなければならなかったりすることも課題ではありました。しかし、何よりも工程中に相当量の酸素を投入しなければならず、これが果汁を極端な酸化に導いてしまうことが問題だったのです。

一方でこの酵素を使うと非常に特徴的な結果を得ることが出来ます。そしてこの特徴がこれからのワイン造りには有利に働く可能性があります。この記事ではそうしたグルコースオキシダーゼが持つ特徴とそのワイン造りへの導入可能性について検討していきます。

この記事はNagiと一緒に学ぶオンラインコミュニティ「醸造家の視ているワインの世界を覗く部」に投稿された記事の一部を再編集したものとなります。
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