ワイナリー設立は地域の活性化につながるか

日本では新しくワイナリーを設立する動きがまだ続いています。

こうした動きの中で、ワイナリーを設立することで地域を活性化させたい、と言っている声をよく耳にします。

ここで質問です。

ワイナリーを設立することは地域の活性化につながるのでしょうか?

また、ここ数年で日本ではかなりの数のワイナリーが新たに設立されてきましたが、それらの地域では地域社会は活性化したのでしょうか?

こうした疑問をTwitterにPostしたところ、とある方からご意見をいただきました。

曰く、ワイナリーの設立で新規の雇用が生まれる。曰く、ブドウ農家さんの収入が増える。曰く、そのままでは耕作放棄地になる土地がブドウ畑として使われている。だから、地域は活性化されている、ということだそうです。

考え方は人それぞれです。特に個人の視点から見ればこの方のご意見も、ああそうか、と思えます。一方で地域の活性化という行政的視点から考えれば、残念ながらこれらの事象は一事業者の活性化であって地域「社会」の活性化とはいえないことに気付きます。耕作放棄地になりそうな土地が畑として利用されても、それは活性化ではなく単なる現状維持です。

前述の疑問に答えるためには明確なデータが必要です。ワイナリー設立前と後で地域自治体の就労者人口や所得、税収などの推移を比較し、結論を出す必要があります。

地域自治体の、と書いたように、地域の活性化とは、本来、ワイン造りもしくはブドウ栽培の周りだけに収まるような話ではありません。その地域社会全体において雇用が増え、人件費が上がり、住民人口が増え、サービス業へ落ちるお金が増加し、低技能労働者層の賃金が上がることです。極端にいえば高卒の労働者が地元を離れずにその土地で働いても都会並みの時間給を得られるようになってはじめて、その地域が活性化したといえます。

では地域の活性化に必要な環境とはどのようなものでしょうか。最近流行りの「○○ツーリズム」の在り方も含めて考えていきます。

▼ 地域が活性化していく過程を考える際にはこちらの本などは参考になると思います。

この文章はオンラインサークル「醸造家の視ているワインの世界を覗く部」内に問いかける質問を理解するための前段となる文章です。サークル内ではここからさらにもう一歩踏み込んだ視点、考え方を問いかけていきます。
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