【短編小説】こたつ記事

　こたつ-きじ【炬燵記事】
　独自の調査や取材を行わず、テレビ番組やSNS上の情報のみなどで構成される記事。
　主に、閲覧者数を増やす目的で作成されるインターネット上の記事についていう。自宅で、こたつに入ったままでも作成できるということからの名。

「へぇー、こんな言葉があるんだ」
「え、なになに？」
「ほらこれ。『こたつ記事』だって」
「ふーん……そう言えば最近この手の記事多いよな。話題のツイートをまとめただけのやつとか、テレビやラジオの発言を切り取ってまとめただけのやつとか。あんなの書いてて虚しくならないもんかね」
「…………」
「なんだよ、俺なにか変なこと言ったか？」
「いや、私としては皮肉のつもりで紹介したんだけど……よくそこまでいけしゃあしゃあと他人事のように言えるなって」
「皮肉？　なに言ってんだ？」
「だってあなただってこの前から何日もこたつに入ってパソコンをカタカタしてばっかりじゃない。『俺はウェブライターになる、もう仕事は取ってきたから心配するな』とか言って勝手に会社辞めちゃってさ。それから毎日毎日こたつの中でパソコンいじってるだけじゃない。取材のために電話したり出かけたりしてるところなんて見たことないわよ。あなたこそ虚しくならないの？」
「しょうがないだろ、取ってきた仕事がこのこたつのレビュー記事なんだから」