マガジンのカバー画像

僕たちは陽氷を染める ー とある男子高生の6月の話 ー

18
運営しているクリエイター

2021年3月の記事一覧

僕たちは陽氷を染める ー とある男子高生の6月の話 ー #閑話 兄と友人の6月14日

僕たちは陽氷を染める ー とある男子高生の6月の話 ー #閑話 兄と友人の6月14日

閑話 兄と友人の6月14日
「なんか思い出しちゃうよねぇ」
『……なにが?』
「え、うーん、西とボクが喧嘩した時のこととか」
『かずがひたすらにモテまくってた時のこととか、な』
「ああ、西、やっと来たね」
「悪い、待たせた」

 住んでいる家の最寄り駅で待ちあわせをした友人、兼、同居人が電車を降りた、と電話がかかってきてから数分間、ボクは友人と話しながら、昼間に別れた少し不器用な弟のことを思い出

もっとみる

僕たちは陽氷を染める ー とある男子高生の6月の話 ー #15

第15話 6月15日

「あ」
「あ、おはよう、千家(せんげ)くん」
「お、はよう」
「うん?」

 寝坊をせず、遅刻ギリギリではなく、7時55分に学校に着くバスに乗っていれば、途中のバス停で羽白(はじろ)さんが乗ってきて、ふいに昨日の兄貴の言葉を思い出し、変な挨拶になった。

「どうかした?」
「……うん?」
「うん?」

 普通に、俺の横に並んだ羽白さんは、俺よりも少し背が低いからか、自然と少

もっとみる
僕たちは陽氷を染める ー とある男子高生の6月の話 ー #14

僕たちは陽氷を染める ー とある男子高生の6月の話 ー #14

第14話 6月14日

「買い物?」
「そ。誕生日の時は仕事があって帰ってこれないからね。少し早いけど、誕生日祝いもかねて、成浩(なるひろ)のプレゼントを一緒に買いに行こうと思って」

 昨晩の夕食時に言った兄貴の言葉に、「あ、今月、誕生日か」と呟いた俺に兄貴は「成浩らしいな」と笑った。

「で、何か買うか決まった?」

 昨晩、兄貴が言った通り、駅前にある大きなショッピングモールまで買い物に来た

もっとみる