見出し画像

小5で人生詰んだ

新学期が始まって2週間後のこと。
家庭訪問が行われていた。

私は先生と両親が話す場に居たくなくて
でも、話の内容が気になって
二階の自分の部屋を出て階段の真ん中に座り会話を聞こうと考えた。

しばらく待っていると、先生が家にやって来た。
両親は玄関で先生を出迎える。
ガラガラと玄関の引き戸が開く音がした。
咄嗟に階段を登った。

「お宅ではどういう教育をしているのですか!!!」

こんにちは、も、お邪魔します、の挨拶も無く
開口一番に両親を怒鳴りつけた。

「先生、なぎの母親です。
娘がいつもお世話になっております、玄関で立ち話もなんですから
どうぞ、上がってください」

「ここで、結構です!!」

叫び声にも似たヒステリックな声。
怖いけれど、吹き抜けの階段の上から玄関を覗いていた。

「なぎさんは、はい、と返事すら出来ないんですよ。
名前を呼ばれたら返事をする、そんな基本的なことすら出来ないんです。
しかも、喋らないなんて、病気ですよ!
一度病院で診断書を書いてもらってそれなりの施設に入れたらどうですか?
一体、ご家庭でどんな教育をしたら、そんな子供になるのですか?
あと、もう、何をするのにも、行動が遅い!
給食の時なんか、こうやって口元を手で隠して
まあ、どちらのお嬢様でしょうという感じでのんびり食べるんです。
もう、見ていると腹が立つくらい、食べる以外の行動も全てが遅いんです。
本当に、どういう教育をされていたのですか?
それから、身だしなみもです。長い髪なら、後ろでひとつに結ぶとか
もっとすっきりと出来ないのですか?
いつもヒラヒラしたリボンなんか付けて来て、学校ですよ!
小学生から色気付いてどうするんですか?本当に教育がなっていません!」

まるで、トロい私に対する苛々を両親に八つ当たりしているようだった。

お母さんも、お父さんも何も言わないの?
ねぇ、私を庇ってくれないの?
震えながら、祈るような気持ちで、言葉を待っていた。

「先生、さっきから黙って聞いていますけれど。
先生は担任になってまだ半月くらいですよね?
私たちは、あの子が生まれた時からずっと見ています。
たった半月程の付き合いであの子の何が分かるんですか?
確かに学校では喋らないですけれど
家では煩いくらい喋りますし、病気なんかではないです。
もう少し、長い目で見ていただけませんか?」

お父さんは、黙って聞いていたれど
最後に「よろしくお願いします」とだけ言った。

先生は「そういうことで、よろしくお願いします」と言いたいことを言って
ストレスを発散させたスッキリした顔をして帰って行った。

お母さん、お父さん・・・
ごめんなさい、私が喋らないからなんだ・・・
でも、どうやって学校で喋ったらいいのか、分からない。
頑張って何か言おうとすると、クラス中のみんなが私を見る。
その目が怖くて、間違えたこと言ったり
変な声が出たらどうしようって考えると、もう、声が出て来ない。
どうしたらいいのか、分からないんだ。。。

壁に隠れて、声を殺して泣いた。
学校も先生も好きじゃない、行きたくない。
でも、学校に行かなかったら、バカになっちゃう。
そうしたら、大学生にもなれない。
ねえ、誰か教えて、、私はどうしたらいいの?



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?