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長屋のリノベーションについて2 店舗への改装のポイント

私は古い建物が好きで、自宅も築50年以上の日本家屋をリノベーションして住んでいる。住宅から店への改装とそのまま住宅への改装はもちろん共通する部分も多いが、抑えておくポイントの優先順位は違う部分もある。

今回は店におけるリノベーションのポイントをこちらに記しておく。建築関係者の視点からというより、雑貨店の店主の視点かつ店の運営の視点からの意見だ。(住宅へのリノベーションもまた機会があれば書きたい。)

ポイント1 出来る限り壁はぶち抜く

古い空き家を三好市で地域おこし協力隊の時に沢山見てきたが、中に入ると、窓を閉め切っていたり荷物が多かったりで暗く、そして今の住宅より断然天井が低く窓も小さく自然光が入りにくい。住宅・店舗へリノベーションする共通する重要なポイントは、この暗い印象を払拭することだと思う。

画像4改装前のnagaya.、まず天井が低い。あと、昔の間取りなので部屋が多く壁と建具が多く暗い。もちろん、畳敷だった。一軒の真ん中で区切られ、3DKが二世帯分あったので、大きい部屋で6畳で、押入れなどもありつつ、キッチンも4畳ほどしかなく細切れな間取りだった。

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全体を店として使うことになったので、ひとつの入り口から全て行き来ができるように、かなりの壁を抜いている。また、耐震上抜けない壁は”筋交い"を入れて補強をしている。店ではステンレスの筋交いを使っているが、自宅は木材の筋交いにしている。木材の方が安かったが、太くてしっかり入るので存在感は出てしまうが、あたたかみは出る。好みで素材は選ぶといい。

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壁ごとに色が違うのは、リノベ前の部屋の名残だ。砂壁も残っているし、過去の住人がDIYで塗った後などもそのまま残しているのも味わいのひとつ。押入れだった部分は、飾りの砂壁はなく白い漆喰のみで、逆に今風である。

ポイント2:変化ができる作りにする/作り付けはなるべくしない

2021年、店をオープンして7年目にして店内の改装をもう一度行った。様々なお店が営業の変更を余儀なくされたであろう、コロナ禍の影響だ。コロナ禍で喫茶の売上は低調になり、オンラインショップの売り上げが急激に伸びた。そのため2021年2月に簡単な工事を行い、店内の喫茶席は全て無くし、雑貨のコーナーを増やした。雑貨のストック場所や配送作業をするスペースも確保した。
店は長く続けていくならばその時によって店内のバランスを変える必要が出てくる。そのため、なるべく変化がしやすい作りにしておいた方がいい。nagaya.は毎月展示会があるので、展示する内容(うつわ、洋服、カゴなど様々)に合わせて位置を簡単に変えられる什器(古道具の机や棚、ハンガーラックなど)を使っている。もし、作り付けにしてしまうと場所が変えられないので店舗の運営がしにくい。飲食店の場合もテーブルの位置を変えることでガラリとイメージが変わったり掃除もしやすかったり、コロナの対応のように席の配置も変えられるので、可変式にしておくのは有効かと。店の種類にもよるが、参考にして欲しい。

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最初のリノベーションでカウンターを作り付けにしたのだが(上の画像の右側のキッチンとの間、茶色い部分)45cmくらいの分厚い板をしっかりつけてあり、板に筋交いも貫通している。下の変更希望を元に、工務店さんと話し合ったが、このカウンター部分は結局簡単な工事では取り外しが難しかった。そのため店舗空間に、100cmほどの高さのところに45cmの板の出っ張りがある状態で、下に棚をおくことで現在は凌いでいるが、まっすぐ立ち上がっただけの間仕切りだったらもっと便利だったのかなあと思う。長い期間の店の運営を考えると、どんな間取りにも変更できるように、レジカウンターなどもできれば可変式な方がいいだろう。

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ポイント3:天井はなるべく高く

この部分は、住居のリノベーションと大きく違う点だと思うが、なるべく天井は高くするといい。ポイント1と被ってくるが、その方が明るく広く感じるし、一気に店らしさが出る。nagaya.は予算の面から内側は断熱を足さず、天井はぶち抜き、木造構造表しのままになっている。そのため、夏は日光がガンガン当たった屋根の熱がもろに来て暑く、冬は冷える。2021年の小改装の時に、風向きを上下に変えられるシーリングファンを付けたら、だいぶエアコンの効率は良くなった。予算が許せば断熱を入れるか、ファンをつけるかは、お勧めしたい。

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ポイント4:木製の建具はなるべく残す

もし建具が木製であればなるべく残すといい。nagaya.も、木製建具に模様の入ったガラスが入っていて、その雰囲気がなんともいえない味わいがある。ほぼ残しているのだが、入口部分は新しい木に黒い塗料を塗った建具になっていて、これもオープンがら7年間毎日お客様が触るため、黒い塗料が剥げてきてあまり見栄えが良くない。元々の木製の建具であれば経年変化も楽しめたのになあ、、と後悔している部分だ。ただ、木製だと隙間風が入ってくるし、虫も入ってくる。(自宅の方は、防寒・防熱対策でリビング部分は二重窓にした。)予算に余裕があれば新しく木製建具を作るのも手だが、新品の木材だとやっぱり取ってつけたような新しさは出てしまう。折角なので、既存の木製建具は残してみるといい。
写真は過去の玄関部分がトイレ前の手洗いになったところ。

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以下はリノベーションにかかった費用を項目ごとに分けておく。有料となるので興味がある方のみ、2013年徳島市での見積もりとして参考にして欲しい。

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徳島県徳島市でnagaya.という雑貨店を営んでいます。ナガヤプロジェクトオーナー。