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「これからのクリエイティブな賃貸経営 〜空き家のDIY賃貸とまちづくりが大家業のスタンダードになる時代〜」イベントレポート

はじめに

ここのところ、不動産に興味を持っています。
一つは、ファイナンシャル・プランナーとして何か得意分野を身につけたい、という思いがあるのですが、元々、空き家問題に関心があったこと、そして、将来的に店舗兼住宅を購入して喫茶店経営ができないか、という構想があること、も大きな理由になっていて、そのためには適切な物件探しが重要だと考えたところにあります。

その際、仮に「元空き家」の中で適切な物件が見つかったとして、だいたいはリノベーションが必要でしょう。
その場合、DIYでリノベーションする、という選択肢もあるかもしれません。
というわけで、2021年6月6日、こちらのイベントにお邪魔しました。

※本イベントはBONUS TRACK HOUSEでの会場観覧と、オンライン観覧のどちらかをお選びいただき、ご参加いただく形式になっております。
※オンライン観覧チケットをご購入いただいた皆様には、メールにて配信用URLをお知らせ致します。
※現在の感染拡大状況を踏まえ、お客様同士が一定の間隔をとることのできる人数への制限を行っております。
現地観覧をご希望の方はお早めにチケットをご購入ください。
※現地観覧でのご参加の際には、事前にこちらのイベントガイドラインをお読みください。

◉今回のトークテーマ:これからのクリエイティブな賃貸経営 〜空き家のDIY賃貸とまちづくりが大家業のスタンダードになる時代〜
日本全国にある空き家はなんと876万戸。しかもこの数字には集合住宅の空き部屋は入っていません。日本中に溢れているといっても過言ではない空き家もDIY賃貸により街の宝物として蘇ります。
空き家を愛してやまない不動産屋、建築家、まちづくり会社の3者が、空き家をDIY賃貸してまちづくりつなげていく、クリエイティブでサステナルブルな賃貸経営についてディスカッションしていきます!
主なトーク内容
・DIY賃貸によって、どんな空き家も蘇る
・地方と東京の空き家の使い方の違い
・業界の課題について

◉こんな人にオススメ
・DIY賃貸で自分の住まいを作ることに興味関心がある方
・空き家オーナーの活用に困っているオーナー
・空き家の再生、DIY賃貸の賃貸経営に興味がある方

◉概要
日時 2021年6月6日(日) 15:00〜16:30
場所 BONUS TRACK HOUSE1F
   東京都世田谷区代田二丁目36番12号
   https://goo.gl/maps/YbWWZnZFfWqsHVpL6

◉出演者プロフィール
加藤渓一 建築家 HandiHouse project
1983年東京都八王子市生まれ。武蔵工業大学(現:東京都市大学)大学院修了後、MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO所属。2010年studioPEACEsign設立。翌年HandiHouse project始動。「妄想から打ち上げ」を合言葉にデザインから工事のすべて自分たちの「手」で行う集団の一員。ロックバンドのライブの様に演者と観客が一体となって盛り上がり、熱狂の渦が巻き起こるような家・場作りを目指す。2015年第一回「これからの建築士賞」受賞(東京建築士会主催)

殿塚建吾 omusubi不動産 代表
1984年千葉県松戸市出身。2014年に独立し、おこめをつくる不動産屋「omusubi不動産」を設立。築60年の社宅をリノベーションした「せんぱく工舎」など多くのシェアアトリエを運営。とにかく空き家をDIY可能物件として扱い管理戸数は日本一。2018年より松戸市、アルス・エレクトロニカとの共同で国際アートフェス「科学と芸術の丘」を開催。2020年4月より下北沢BONUS TRACKに参画し、2号店を出店。田んぼをきっかけにした入居者との暮らしづくりに取り組んでいる。

渡邊享子 株式会社巻組 代表取締役
2011年大学院在学中、東日本大震災をきっかけに石巻へ移住。2015年に巻組を設立。地方都市の資産価値の低い空き家を買い上げ、クリエイターをターゲットとした大家業をスタート。シェアやリユースを切り口に地方の不動産が流動化する仕組みづくりを模索中。

◉「NO BIG DEAL DIYのある暮らし」とは…
DIYに興味はあるけど、なかなか始めるきっかけが無い。
なんだか難しそう。
いえいえそんなことはありません。
時間がかかっても、間違えても、
上手じゃなくてもOK!完璧なんて必要ありません。
プロセスを楽しんじゃいましょう。
手間がかかるかもしれないけど、
ほんのちょっとだけでも身の回りのものを自分でつくることができれば、
生きるチカラになり、
きっと暮らしを豊かにしてくれるはず!
合言葉は、No big deal !!(大したことないさ)

以下、簡単なイベントレポートをしたいと思います。
会場でiPadでベタ打ちした文章を整えただけの文章なので、追いきれなくて若干意訳したところなどもありますが、適宜修正を加えたいと思います。

イベントレポート

殿塚(以下、と):
今日はBONUS TRACKという場所で「NO BIG DEAL!!」というイベントを開催します。

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今回は、「これからのクリエイティブな賃貸経営」をテーマに話します。
「No  Big  Deal」というのは、英語で「大したことないよ」という意味。DIYでの賃貸不動産も、「やってみると大したことないよ」というお話になります。
この会場の場所は元々、線路の跡地。
新しい場所、現代版商店街として食住近接の商店街となっていて、今回は木工のワークショップ、ブックマーケットなどを開催しています。
実際に手を動かす、とともに、僕らが普段どういうことを考えて、建築、不動産に携わっているのか、について語るのですが、今回のトークセッションは2部構成の第2部で、テーマが「これからのクリエイティブな賃貸経営」。
言い切らせていただきましたが、不動産寄りの話が多いかな、と思います。
冒頭、10分くらいで自己紹介をして、そこから1時間くらいトークセッションをして、その後、Q&Aに移りたいと思います。

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omusubi不動産は、松戸でお米を作る不動産会社。空き家を使ってDIY賃貸をしています。

250件くらいやっていて、日本で一番多いと言っていただいています。
入居者の方とのアートフェスティバル、街全体とのアートフェスティバルをやっています。
今回、なぜBONUS TRACKかと言うと、去年4月に不動産屋さんの2号店として、こちらに出しました。

BONUS TRACKの管理と、こちらの運営会社との共同運営とをしています。
では、加藤さん、自己紹介を。

加藤(以下、か):
HandiHouse project(以下、ハンディ)という取り組みをしていて、設計施工を請け負ってます。

僕らは建築家、工務店と違うのは、できるだけ自分たちの手で全てを行おう、お客様を建築プロセスに巻き込もう、とやっています。
僕らのホームページのプロジェクトページにはお客さんとの集合写真が載っています。
出来上がった空間自体も大事ですが、お客さんと一つのチーム、一つの目的を作る関係性が大事なので、こういう出し方をしています。
妄想から始まり、お客様と模型を作ります。
毎週土曜、家族ごと現場に来る方もいらっしゃいます。
家をDIYする、ということは、お客さんの空間、見え方、リテラシーを格段に向上できるツールです。
それをすることで、僕らは家が完成したらプロジェクトは終了ですが、お客さんはそこに10、20年住むわけで、そうしたガラッと変わる経験をすれば、住み方も変わるのではないか、と考えています。
僕らが10年活動して大事だと思うのは、住宅は、最初、賃貸に住んでその後に購入して、という過程を双六に例えるなら、賃貸の段階でどういう暮らしが合っているか、体感しながら理解しながら、時には作りながらの経験が大事だと思っています。
ハンディとしても、DIY賃貸の大家になる、という活動を2年前から始めています。
アパートキタノは、20平米くらい、全47戸のワンルームのマンションを次々DIY型にしています。

あと、練馬区の江古田駅の徒歩5分、アパートの1室をDIY可能賃貸として運営しています。

一緒に登壇しているお二人からすると、僕らはまだ賃貸業としてペーペーなのですが、そんなところでやっています。

渡邊(以下、わ):
私は巻組という会社をやっていて、宮城県石巻市、三陸海岸から来ました。

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大家業と設計をしています。
石巻市は東日本大震災で大きな被害があった土地で、その時は大学院生だったのですが、今はそこに移住しています。
そこでは、トタン張り、ただのぼろ家。トイレもボットンと、条件の悪い物件が空き家として増えていて、「どうにかしてくれないか」という相談が来ます。
都市計画における既存不適格の物件、一旦壊しちゃうと二度とは建て替えられない敷地。建物としても土地としても価値がなくて、大家は持っているだけで負債、という物件なのですが、そこの大家となって賃貸しています。
200平米300万円くらいで購入するのですが、こういう物件はDIYの余地が広かったりします。
4LDK、5LDKといった物件ですが、自分なりに住みたい、と思ったり、DIYしながらものづくりをしたり、アーティストが住んだり。単身者も増え、地方にも外国人が増えていますし、多拠点居住で住む人のニーズもある。大きすぎる古民家を買い上げて、シェア型で運用する、というのは、「それって結構、ビジネスチャンスになるのでは」と思ってやっています。
omusubi不動産さんの5分の1くらいの規模ではありますが、本日はよろしくお願いいたします。

と:
この3者でお話をしていきますが、omusubiは不動産屋で、ハンディさんは建築、巻組はまちづくり会社、と僕は思っていて、それがみんな、不動産賃貸をやっている。
でも、収入が入れば、という感覚ではやっていなくて、クリエイティビティーがあるのでは、と思っています。
空き家の最大限の活かし方とアプローチ法について話しますが、僕らは空き家を見て、「超いいじゃん」と思うんですが、でも、アイデアと知恵が必要になります。
加藤君の話をびっくりして聞いたのですが、施主さんから請け負っている会社があるとか。

か:
きっかけは、青木淳さんがやっている大家の学校のレクチャーシリーズに出ている時、八王子に物件を持っているから、見に来て、という人がいて、僕、生まれも育ちも八王子なので、「すぐ行きます」と行ったんです。

その物件は投資用だったのですが、八王子って地方都市の典型。
ワンルームのアパートがめちゃくちゃいっぱいあって、築古も新築もある。
僕が行ったのは築25年で、家賃3万、4万でも来ない。あとは値下げするしかない。何とかならないかな、という物件でした。
僕はちょうどそのくらいのタイミングで、「家を買う前くらいの時期にDIYで家の見せ方を変えれば、家の購入の決断の際に大きく変わるのでは」という仮説を持っていたので、それにちょうど良いのでは、と思ったのがきっかけでして、僕、大家さん、地元不動産屋でサブリース会社を立ち上げて、そこで運営含めてやっています。

と:
革命的な話ですよね。
DIY賃貸をする時、ハンディさんがサポートしているのですが、ワンルーム以上シェアハウス未満というか、コミュニティーがあるんですよね。

か:
47戸あって、全部がDIY型ではないのですが、DIY型じゃないと客づけができない。普通の賃貸では、そこを求めてくる人がいないんです。
今のところ、DIY型が16戸、17戸くらいで、どこか空いたらまたやろう、と思っています。
入ってくる人は「自分でやろう」という意識がある人。
ちょっとコミュニティーを作ると、共通のキーワードがあるので、コミュニケーションしやすいんです。
でも、令和世代の人は、近づきすぎると面倒臭い。
そこで、僕らはSlackというチャットアプリで、オンライン上でコミュニティーグループを作っています。
「ここのカフェのご飯が美味しかったです」とかの情報もやりとりし、シェアハウスよりは距離があるけれど、隣に誰が住んでいるか分からないワンルームマンションよりは距離が近い、という関係性で、それがコロナ禍で有効に働いています。
いろんな距離を取れて、しょっちゅう会っている人もいれば、会っていない人もいる、というように。

と:
石巻にも泊めていただいたのですが、「シェアハウス×民泊」というのは「クリエイティブ過ぎない?」と思いました。
普通に貸すと、単価が安いわけですが、これが生まれた経緯は。

わ:
良いとこどりですよね。
生々しい話ですが、シェアハウスで、運営が回っているのは40何戸とか、「それってもうシェアじゃなくない?マンションで、共用部分が広いだけだよね」というところがありますよね。
で、一戸建てシェアハウスを法人オーナーでやるのは、事業化するのはなかなかのチャレンジ。
じゃあ、もっと多くの人で、3LDK、4LDKで、とやると、一緒に住めるのは4人くらい。
それだとどうしても天井が見えますが、1部屋民泊にすることで、収益化を図ろうと。
しかも、民泊は年180日以内しかできないから、合わせて行くのがやり方としてあるのかな、と思いました。
石巻は生活スタイルが多用で、関係人口的な人が増えてきています。
何回も通ったり、短期的にいたり。観光じゃなくて、雰囲気を変えたい。
民泊は、プロの清掃業者を頼むのが大変なのですが、家賃を安くするから、住んでいる人に世話してね、という感じで、コストを抑えて住む形にしています。
そうすると、継続的に住む人にはメリットが大きいんです。
そんなふうに柔軟性が必要です。

と:
家主居住型で、民泊の資格も取るなんて、すごくない?

わ:
いろんな不都合点が解消されるんですよね。
今後の解消ポイントとしては、日本の古い家屋は防音と断熱性能が良くないのをどうするか、というのと、セキュリティーの問題が居住者にどう響くか。
そう考えると、AirBnBは優秀ですね。
コミュニケーションが取れるし、貸主も借主もお互いを評価できる。
この取り組みに手応えはありますが、運営に入る側、シェアハウスに入る側のコミュニティーが効いてきます。住む人が運営に主体的に関わるのが良いことかな、と思います。
基本、AirBnBのサイトは、宿泊したい、と訪れます。
田代島という猫の島で有名な離島がフランスのミシュランに載っているらしく、そこに一番近い。そこで巻組のところに泊まりたい、と。直に来る人はそうですが、半々くらいいます。

と:
お二人のお話で、アパートも石巻も、物件の目利きをした瞬間があるはずなんですね。
僕らは、街目線で見た時、「この建物、必須じゃん。オセロの角じゃん」とノリでやっちゃうこともあるのですが、お二人は考えてやっているのでは。

か:
あまり考えていないですね。
アパートキタノの決め手は、47戸という数でした。
DIYは孤独で、そこが結構、ハードルが高くなるんですね。
それが、周りに同じような人がいて、気軽に相談できる。
それ以外の条件では、駅から徒歩10分以上で、築20何年で全然魅力がない。数が唯一の決め手でした。

と:
数があるからコミュニティーが作れる。

か:
そうですね。

わ:
私も直感。「オセロでできる」みたいに考えられるのが、結構すごい。「ここが空けたら」というのは不動産屋のすごい勘だと思う。
それでomusubiさんはうまくやっているわけだけれど、あえて言うなら、たぶん立地。立地の考え方をポータルとは変えています。
「駅から何分」というのは、地方ではそんなに重要ではない。
うちら、古い市街地で、再建築不可物件が多いけれど、元々、家が密集するところ、古い市街地は地盤が良かったり、日当たりが良かったりする。
だって、その街で最初に使われていた場所なわけだから、メリットが多いんです。
そうなると、最初に考えていた条件が、「本当にその条件、大事でしたっけ?」と考え直した際に、メリットがあるわけです。

と:
不動産って妥協の塊なんですよね。
お客様に要望を言われて、100点満点は出せない。
無限の予算があっても、「そんな物件、地球上にないかも」ということがあるように、制約条件がすごく強い商品なんですよね。
だから、ダメなところを見るよりも、良いところを見出すのがポイントだな、と思いました。

わ:
同じようなハウスメーカーを3社くらい見て、結局は消去法ですよね。
萌えポイントで選んでくれると良いですよね。
幸せな形になります。

か:
でも、「駅から徒歩何分」の物件にまだ負けるんですよね。
その辺が苦しい。苦労しています。
でも、負けたくないな。

と:
僕ら、1個象徴的なのは、せんぱく工舎なんですね。

駅から徒歩20分くらい。昭和35年築。
平成で使われなかった社宅を転貸するとなると、コミュニティーを作るしかない。あと、店舗転用した。そもそも、不動産賃料は、住宅より店舗の方が高いんですね。
床の下地しか貼っていないぼろぼろだったのですが、でも、「そこからDIYできる!」という形にしたり、エリアの価値を作るためにイベントをしたりとか、少しずつ値打ちを上げていく。
まず、僕らのいるところから半径何メートル、徒歩15分くらい、そこに三つくらい拠点みたいなものがあると、エリアと言える。その小さなエリアは、僕らのフィルターを通してみると、ちょっと面白い。そのフィルターで見る人が「ちょっと面白い」と感じるものがないと、地方は難しい。
単体だと難しいので、賃料メリットを出すしかない。クソ安い。月数千円くらいですが、エリアの価値を作るための投資だ、とやってみる。
あと、入居者と継続的にコトを起こす。DIYは一人でやると孤独。実は物件の価値って、そこに住む人が作っているんですよね。気持ち悪くないところで工夫しています。

か:
僕らのSlackは狙ったわけではなく、良いな、と思ったのは、ワンルームってそう長くなく退去するんですね。そんな、10年も住まないわけです。
でも、Slackに退去者が残ることがある。新しい居住者にコメントしてくれることがある。
短いスパンで退去するとなると、住み続ける価値をどう作るか、を考えたわけですが、その人だけが良いわけではなく、住み心地の良さがどう伝わると良いか、ということを考えました。

わ:
グループはSNSで作りますが、意図して作るわけではないのだけれど、そこを出た人同士が「あそこに住んでいた」と仲良くなって繋がって飲んで、時期は被っていないのに住民同士で繋がって、という話があります。そういうブランドに家がなるのは良いことですね、アイデンティーというか。
うちは、あまり仕掛け過ぎないようにしています。
「パーティーやらなきゃ」と言って、一緒に住んでいるわけではないのにやると違和感があるようで、人が集まらないんです。勝手にご飯を食べている方が良い。
入れる時にどれだけ良い人を選んでも、一緒に生活しないと分からない部分があるから、「去るもの追わず」は結構大事ですね。
一般的な賃貸は、途中だと違約金が発生するのですが、違約金を設けずに短いペースでその代わり、合う物件を提供する、という方が良いかもしれない。3ヶ月とか回転を良くするとか。
もちろん、ライフタイムが長い方が良い物件だと思いますが、全部やるのも難しいから選択性と柔軟性を高めるとか。

と:
人の採用みたいですね。

わ:
そうですね。
某アウトドアメーカーは同じようにしているみたいです。辞める人には20万円くらい準備金を出して、それで意思のある人だけの良いコミュニティーにしている。

か:
大変ですね。
大家としては、長く住んでもらえた方が良いわけですが、そうか、1年で出ちゃうか。

と:
僕もそれを思っていて、最初7部屋でやったのですが、そうすると、1部屋辺りの事業に対するインパクトが大きい。
「この部屋を抜けられたら終わりだ」となりますが、でも、それは健全な関係ではない。囲い込まないといけなくなるんですね。
そうなると、スケールメリットを出すしかない。
物件単体よりも、全体の需要で見られるようにしたいな、と思っています。
ちなみに皆さん、契約はどうされています?

わ:
定期借地。

か:
うちは普通貸借。

と:
うちは定期借地ですね。
今は本当に期間限定で終わりにできる法律に変わり、それで古い物件の活用が進んできたのですが、うちは定期借地にしています、シェアハウスは。

わ:
シェアハウスはそこが大きい。
本当は人間関係が8割くらい。そこが何とかならないか、とは思いますね。

と:
何か可視化される時って、数%の悪い方が広まるんですよね。

わ:
シェアハウス内で何か悪くなっても、大家とその人の1対1の関係であるのが大事。別に、私のことを嫌いになったわけではない。個人ではない。そこに明確な答えはない。
まちづくりもそう。うまくいかない、クレームのつく人は一握りなのに、「この地域は」と言われてしまう。そこはスルーして、何かポジティブな方を膨らませる努力をするしかないですよね。

か:
アパートキタノはコミュニティーが嫌だから、というのは全然ないですね。
でも、「なぜオンライン?」と言うと、初期の入居者と話した際、「リアルは距離がありすぎるし、facebookだと個人情報が分かり過ぎる。Slackだと良いよね。距離の取り方が自由で良い」という話があった。
コミュニティーの深さが入居の長さに繋がるわけではないんですよね。家庭や個人の事情で引っ越す人は、不可抗力でどうしようもない。

と:
うちも悩んでいて、Slackの前にfacebookでやったところがあって、そこは今もそうなのですが、このBONUS TRACK自体は、Slack回覧板をやっています。
昨日も「明日のイベント、よろしくお願いします」というようなことが書けるんです。

わ:
自分はSlackにも参加しないタイプなので、それが良かったのかな。参加を強要されない感が良い。

か:
僕もそんなにコミュニティーとか好きじゃなくて、ずっと部屋にいたい方。

と:
うちが唯一やっていない取り組みがシェアハウスなのですが、それは、僕ができないからなんですね。
一度住んだんですが、僕には難しかった。
だから、入居者の気持ちが分かってあげられないから、良いサービスができない。

か:
DIY賃貸もそう。キーワード先行でちょっとやってみよう、というのはちょっと危険な香りがしますね。

と:
DIY賃貸、やるのは30平米くらいかな。
工期を考えると、月でMax8日間しかやれないとなると、作業が進まないから、そのくらいの広さがちょうど良い。

か:
提供する側として意識では、こちらで最低限のインフラは整えて、DIYを楽しむ方にしてもらいたい。「マイナスからゼロ」ではなく、「ゼロから暮らしを楽しくするため」として。
たぶん、うちの賃貸価格は、omusubiさんより高いと思います。ちょっと賃料は高いけれど、若いうちに、ちょっと高いけれど、自分の暮らし方が分かる賃貸に住むことで、後々家を買うとき、よりお得に考えられる。
理解しているから騙されないし、自分の価値観が分かれば、5000万円と騙されずに、求めるものが3000万円でできる、とか。
どう自分で投資にかけられるか、ですね。

と:
僕らは「マイナスからゼロ」はあるけれど、加藤君のところはハンディさんがいて、教えてもらえるから、それが価値、付加価値になっている。
普通、物件の付加価値と言えば内装なのですが、内装じゃないところで付加価値がついているのは面白いな、と思いました。

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さて、次のお話。
「大家業は暮らしを支えるサービス業」。
不動産は公共性が高いのに、個人で持てる。ここをこう使えばみんなハッピーなのに、あの大家さんが、みたいな話もある。
皆さん、大家業は不労所得と思っているかもしれませんが、僕はサブスク型の事業構造だと思っています。
地価が上がり、そこで大家に還元。僕ら、サービス業として大家業をやっているのではないか、と思っているところです。

わ:
10件ボロ家をやって、不労所得とか思ったことがないです。
その時は完璧にしたつもりでも、何かが起こる。手のかかる商売です。
カメムシが出てダメ、とか。

と:
新築でもありますよ。雨漏りがあるとか。

わ:
ユーザー側と作っていく、と考えないと、古い不動産はやっていけないですね。空き家問題が解決しない。新築住宅は持続可能ではない。
手がかかるところからお客さんと共有できて、「そこが楽しい」に切り替えていけないと、と思いますね。

か:
今のD2C感覚が大事ですね。
万人受けする賃貸は100均です。安いから選ばれる。
アパートキタノは、ポータルを介さずに人が来ます。入居者の95%くらいは、ポータルサイトを介さずに「内覧、お願いします」と来ます。
特別な価値を自分たちで作り、発信し、自分たちで売るB2Cの考え方が、住まい領域でもどんどん広がっていくんだろうな、と思います。
それが、立地とか、ポータルサイトで判断される価値観から抜け出すには大事なんだろうな、と思います。

と:
仲介業者を介さないと、仲介手数料がかからないから安いですよね。アパートキタノはブランディングされているから強みがある。

か:
僕は八王子に住んでいるから良いけれど、そうじゃないと都心まで1時間かけて通うのに、それでも良い、というのは、付加価値がつけられているからかな、と思います。

と:
石巻は、不動産屋がいなかったりとかありますか?

わ:
結構いるし、結構買ったので仲良くなっていますが、基本、クチコミでのやりとりですね。ポータルには出していない。掲載料もったいないから、そこはまあ、ありかな、と思います。

か:
そこのジレンマが江古田ではあって、DIY賃貸で募集しているのですが、江古田駅から徒歩5分、50平米くらいで、2人暮らしのSOHO考えられる。出して1週間で決まるかな、と思ったけれど、決まらない。それをハンディの初めてのDIY事業でやっている。ハンディが賃貸、まだないなかでやっているので、ポータルサイトからの内覧希望が多いのですが、20件近く内覧対応していても、古さが気になる、耐震、防犯、とデメリットばかりに目が行き、自由に暮らせる、というプラスの方に目を向けさせるのが、すごく大変。
アパートキタノも、最初1年くらい大変でした。「遠い」とか。駅徒歩何分の物件の方が選ばれるから、空室が増える。

と:
アパートキタノの隣に物件があれば、決まったかも。

か:
江古田は、ここまで来たら直接行くしかないですね。
SNSとかで、知り合いの知り合いを無理やりスカウティング。アパートキタノもそう。そうやって住んでもらって発信してもらい、いずれ問い合わせが来るように待つ。今は我慢の時期ですね。江古田は僕ら、地縁がなく、物件ありきで行ったので。

と:
僕らは基本、松戸です。違う地域でやるなら、コミュニティーがその場にある人と繋がる。例えば、第1部に登壇されたつみき設計施工社さん。市川の物件は、つみきさんも入ったからうまく行きました。

か:
ちょうど先ほど、江古田でコミュニティースペースがあるので繋がりませんか、という話がありました。

と:
そういうやつですね。
いかに素敵な隣人的な方を持っている人たちと一緒にやれるか、が価値なところがありますね。

わ:
3人入れば埋まる、というのがある。
一緒に入れば、管理人さんがお友達何人かで住みたい、とばんばん派生するのが持続可能なのでは、と思います。
100人連れてこい、は難しくても、3人くらいなら。それは大手ではできないやり方。

と:
自分たちが貸主の時も、管理会社の時も、大家さんとの交渉jは結構大変で、その理解度は大きいですね。

か:
渡邊さんはなぜ、建築が専門なのに今のような活動を。

わ:
元々、都市計画が専攻で、図面が引けないんです。
学生時代、尾道とかにいたので、自分じゃ想像がつかないけれど、こういうところ、一般的な不動産価値は下がっているけれど、入る人、自由に暮らしたい人、結構いるんだな、と感じて、その可能性を信じることが大事だったんです。
都市計画で勉強しているところが狭すぎて、アーバンデザインみたいなのは、多くの人が関わるところでもないので、もっとこういう不動産的なことを学べれば、と思いますね。
どこかの企業に勤めて不動産をやったこともないのですが、勉強せざるを得なくなったら勉強する、というのが大事かな、と。やりすぎないのも大事。専門家はいるので、地元の不動産屋さんと一緒にやったのが良かった。
あと、ノリじゃないとできないところもありました。やってみたら意外と収益化できるぞ、となって。あまり凝り固まっちゃったりするとできないですね。

と:
撤退できるギリギリのラインでやる。

わ:
賃貸でやるよりも、買った方が早くペイするんですね。

と:
最悪、売却できる。

わ:
不動産は買っては売り、買っては売り、の業態だと思います。
うちの物件はリスキーで、絶望的な立地だから、買っては売り、地価を上げる、とやらないと。

と:
ストック住宅は、日本は米国より古い物件の価値が半分くらいなんですね。

わ:
3年くらいで売る、というような形になれば。

と:
ホームインスペクションというのがありますが、40年前の物件でも、大家さんがちゃんとやっているとちゃんとしているんですよね。

わ:
どんどん転売された方が価値が上がる方が良いと思うんですよね。借りるのも良いけれど、売れば良いじゃん、でやるのも良いと思います。

Q&A

と:
たくさん質問が来ています。

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空き家、どうやって探す?

わ:
大家さんが困っているので、ほとんど持ち込みですね。立地的な観点から探しているような物件は、不動産屋で探します。仲良くなって、未公開情報を得る。

と:
未公開情報については魔法はなくて、ゼンリン地図で見て回って、「ここ、空いているな」というのをコツコツ探して、普通に歩いていて空き家かな、と思ったら謄本を取り寄せて。

か:
僕は犬の散歩をする際、空き家に気づきますね。

と:
「めっちゃ地方でもDIY賃貸できる?」という質問。
東京から1時間くらいならできます。

わ:
できます、できます。でも、コンテンツによる。
地方、どうにでもして良い、という物件が多いので。
最近は歴史ある不動産屋も、DIY賃貸に手を出し始めましたね。

と:
付加価値を上げるには内装。あと、コミュニティーですね。
次の質問。「日用品メーカーとコラボで何か良い空き家の活用法」。具体的ですね。
ある海外業者が日本に入って来て撤退しましたが、めちゃくちゃ高くサブリース料を取っていたわけで、どうやって儲けるのかと思ったら、「我々、生活情報を入手して売るんだ」と。絶対うまく行ってほしくない、と思いました。入居者の感情も大事ですが。

か:
どう手を入れたら魅力的に、というのは試行錯誤中ですね。
空き家、投資、誰かに貸す、とお金がチラつくので、どこまで手を入れるかが大事。やりすぎなのか、やらなすぎなのか。やりすぎはお金がかかり、やらなすぎは誰も借りない。

と:
建築側は良いものとして作り、不動産側は資産として物件を見ますね。
「注意点と問題点」。注意点と問題点しかないですよ。その中でやれることをやる。

わ:
「注意点と問題点」。さらに言うと、うちは大家業に特化しています。
ランニングコストと、シェアハウスを作ってランニングさせて、そこからどのくらい収益を、とバランスを取るのが面白いな、と。
ものづくりとは違う視点で、資産とも違う視点。断熱にお金をかけてどのくらい光熱費がかかるか、とコストパフォーマンスを考えるのが面白い。
大家業とはちょっと違う話になるのかもしれませんが、創造性が面白い。使うところの数字までイメージしてやっていく。管理するスパン、関与するスパンが長くなればなるほど、点数が増えてくる。そこのバランス、制約も増えて、ソリューションの多様性は面白いな、と思ってやっています。
ただ単に初期コストをかける話でもなく、いいものを作ろう、という人も、とにかく安く、という人もいる。自分で光熱費もかけて、入居者も探して、だとどっちでもなくなる。
意外とITが良いとか、付帯にクリエイティビティーを考えられるなど、結構楽しいんですね。どれでもないな、と思っていて。野菜宅配サービスとかあると良いよね。

と:
入居者の幸福度を上げるために。

わ:
そうですね。

か:
うちはDIY賃貸に特化しています。
住民さんがやったことが面白いと、ワクワクします。「こうしたか」と。
ムラっぽい感じがあるのが、ツイッターでバズって、それで入居者が来たこともあります。それが楽しい。
暮らしを楽しみたい人が、実際、DIY、どういうふうにするんだろう、という関心があります。
ブルーノ・ムラーリが好きで、床を青、壁を黄色するとか。

と:
大家業を通じて、自分の興味関心が見えるところがありますね。
自分は、芸のある人を支援しています。入った人がイベント出展、シェアカフェを借りてくれて、そして実店舗を出す、みたいに世に旅立つのを見るのが楽しくて、そのためにやっているところもあります。
もはや賃貸ではなく、暮らすことのソリューションの提供ですね。

わ:
入居者のためにやって、それがビジネスにつながると良いですよね。

か:
DIY賃貸って、できる範囲をある程度決めるところがある。
どこでも何でもして良いですよ、と言うと、何もできなくなるから、範囲を限定し、可能な面積を更新可能にする。
普通の壁、ビスがどう留まっているか分からない。交換しづらい。ビスで壁が外せる、ビスを打って、仕上げで出てくる。普通の家の作り方としてタブーで、普通は隠すのですが。

と:
構造を露わにする。

か:
どこまで許せるか。ハイオクすぎるとダメ。

と:
土地として見る、というところもありますね。
倉庫が乗っかっているけれど、作業場として最適、と土地として貸している。身の危険が感じるくらいの物件はやめた方が良いけれど、「屋根のある土地」くらいで考えていた方が良いことも。

か:
僕らはクリエイティブ管理、DIY側の賃貸の管理をすることをやっていきたい。
正直、リアルに何かを教えるのも大事だが、意外にオンラインで相談されて、YouTubeの良い動画を流す、みたいなのも、これを見ながらやってごらん、というのもあり。素人の方は逆に、情報がありすぎて分からない。

と:
DIYがうまい人って、YouTubeの検索能力が高いですよね。
僕らの物件については、「分からないから、DIYのことはハンディさんのオンラインサロンに」と紹介しています。

わ:
それやりたい。

と:
そんなに盛り上がっていないですが。
次、「コミュニティー、関係人口」について。

わ:
関係人口ほど作りやすいものはない。何でもなる。
でも、観光だと強烈な観光コンテンツ、移住だと人生かけて、とどちらもハードルが高いですが、ちょっと気分を変えて、1週間でも1ヶ月でも暮らしてみれば、と思います。
地域における担い手発掘、という言葉好きじゃなくて、自分でやろうぜ、と。1人で踊ると、みんな踊りたくなる。最初の踊る阿呆が必要です。

と:
「旗を立てる」というやつですね。

わ:
自分でやってみる。

か:
僕は、まちづくりがしたいと思わない。特殊な賃貸を作り、面白いものを作ったら、何か起きると良いな、という気持ち。

と:
オンラインの繋がりは、アパートキタノの関係人口とも言えますね。まちづくりって、結果論なところがある。集合体、まちづくりと言われるが、その瞬間はまちづくりではない。やりたいなら、自分の気になる街でやってみると良いし、公園の掃除をする、というのでも良いと思う。
「コミュニティーとアソシエーション」。自分が大家になることで関わり。アパートキタノはアソシエーションっぽかったりしますね。
次、「失敗談」はありますが。

か:
全然ありますよ。入居が決まらない。ある瞬間、47戸のうち、1月の繁忙期で10部屋一気に埋まったが、つまりは10部屋空いていた、ということ。3分の1くらいが空いていて、立地には勝てないと思った瞬間でした。なのに今、江古田は立地が良いのに全然決まらない。

と:
「これから起業する人に対してのアドバイス」。
今日の第1部でも、DIYすることで自分の失敗への許容を高める、という話がありました。
今も失敗しているんですが、それを失敗で終えるか、多少でも解消するまで粘ったか。その積み重ねかな、と思います。

か:
DIYはそれができるのが良いですね。

と:
では、これで終わりとしたいのですが、皆さん、最後、言いたいことは。

か:
DIYは試行錯誤の後、壊すこともDIY。壊せるように作る。ビスをうまく使う。その感覚がどんどん自分のスパイラルをアップさせる方法。その辺、DIYというキーワードは大事だな、と思います。やり続ける。

わ:
今日はすごく面白かった。
加藤さんは設計ベースで、殿塚さんは不動産で、私はどっちでもない。そこから考えるんだな、という違いが面白かった。
空き家活用、リノベーション、賃貸経営の話。賃貸は、これといった特技がなくても、素敵な人と繋がれるきっかけにもなる。これから空き家が増えていくから、可能性が広がっている。こういうことが話せると良いですね。

と:
賃貸経営は、相続で突然やらないといけなくなったりして、なかなかプロがいない。それを、サービス業として昇華させる。
今、地方では数百万円で物件が買える。車を買ったのと同じくらいの感覚で、副収入が得られる。
その人たちなりのやり方で、何かを積み重ねると、面白くなると思います。

おわりに

最後に、私なりの感想を書きます。
今回のイベント、最初の「はじめに」に書いた私の問題関心とストレートに直結する話だったか、と言われるとちょっと違ったところもあったかもしれませんが、とても勉強になりました。

「空き家を安く購入し、付加価値をつけて売ったり貸したりする」という手法、調べてみるといろんなところで見かけるようになりました。
私がシェア別荘をしている三浦市で「空き家レスキュー」という活動をしている人たちもいるし、鎌倉市が拠点の「ENJOYWORKS」という会社もそう。

先日は、空き家物件のマッチングをする「空き家ゲートウェイ」というプラットフォームも知りました。

不動産の有効活用はとても可能性がある分野だし、空き家問題の解決に繋がればそれは社会貢献にもなる。
ただし、それなりの目利き力と実務経験がないとなかなかに難しい分野だな、ということは、不動産の勉強を進めるに連れて思います(不動産の勉強には、先日読んだ「正直不動産」という漫画が役に立ちました)。

自分がこのnoteに記している内容は、多拠点居住からVRSNSからグルメから今回は不動産、と、人によってはバラバラに見えるかもしれません。
移り気だよな、と。

ただ、自分としては「根っこは一つ」と思っていて、それが、状況の変化や問題関心の膨らみに伴って、現場が広がっているだけ、というように感じています。

今回のイベントで面白かったのは、不動産は上手く活用するのは難しいけれど、とてもクリエイティビティーが求められる分野でもある、ということ。
まだまだ具体的な何か、に繋がるかは分かりませんが、机上のものも実務も含め、勉強を深めていきたいと思います。

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