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🍀「リリーマルレーンが教えてくれたこと」

 第二次世界大戦中、ナチスドイツが占領していたルーマニア。その首都、ベオグラードのドイツ軍放送局から放送された一枚のレコードが奏でる歌声。
 売れてなかった歌手、ララ・アンデルセンの歌声。

 そのレコードが選ばれた理由は、放送禁止になっていないレコードがその一枚だけだったから。

 若い女性のリリー・マルレーンが兵舎の外にある街灯の下で兵隊の恋人を待っているというストーリーの歌「リリーマルレーン」

Lili Marleen
リリー・マルレーン

Vor der Kaserne,
兵舎の前の
Vor dem großen Tor
大きな門の前で
Stand eine Laterne.
街灯がそこにあった
Und steht sie noch davor,
その下に彼女はまだ立っている
So wolln wir uns da wiedersehn,
そうさ、ぼくたちはもう一度会いたいね
Bei der Laterne wolln wir stehn
街灯に照らされて二人で
Wie einst, Lili Marleen.
あのときと同じように
愛しいリリー・マルレーン

Unsrer beider Schatten
ぼくたちの影は一つとなって
Sahn wie einer aus.
すっかり見えている
Dass wir so lieb uns hatten,
ぼくたちが愛し合っていると
Das sah man gleich daraus.
見ればわかること
Und alle Leute solln es sehn,
みんな見ることになるんだよ
Wenn wir bei der Laterne stehn
ぼくたちが街灯の下に立てば
Wie einst, Lili Marleen.
あの時のように
愛しいリリー・マルレーン

Deine Schritte kennt sie,
きみの歩みも
Deinen schönen Gang,
きみの美しい歩く姿も街灯はおぼえている
Alle Abend brennt sie,
毎晩、街灯は灯って
Doch mich vergaß sie lang.
でもぼくのことを街灯はわすれるだろう
Und sollte mir ein Leids geschehn,
もしも、ぼくが戦場で命を落としたのなら
Wer wird bei der Laterne stehn
だれがぼくの代わりに街灯の下に立つのだろうか?
Mit dir, Lili Marleen?
きみとともに、リリー・マルレーン

Aus dem stillen Raume,
静かなあの世界から
Aus der Erde Grund
地の底の世界から
Hebt mich wie im Traume
まるで夢がよみがえるように
Dein verliebter Mund.
きみの愛しい唇が浮かびあがる
Wenn sich die späten Nebel drehn,
静かに忍び寄る霧がたちこめて
Werd ich bei der Laterne stehn
ああ、あの時のように街灯の下に立ちたいよ
Wie einst, Lili Marleen.
あの頃のように
リリー・マルレーン

 この歌が戦場のドイツ軍兵士のハートを掴んだ。

 でも、ラジオから流れる歌声を聴いているのはドイツ兵だけでなくてアメリカ兵やイギリス兵、ソ連兵もいたんだね。

 敵味方関係なくみんな「リリーマルレーン」を歌うドイツ人の女性歌手ララ・アンデルセンの歌声に涙したんだよ。

 やがて、ナチスのドイツを嫌ってアメリカに亡命していたマレーネ・ディートリッヒが英語で歌った。

 戦争は憎しみと理不尽な暴力によって支えられた悲しい出来事。

 その中に国や言葉を越えてリリーマルレーンは愛された。
 そのやさしさに心奪われた。

 この歌を聴けば、だれもが憎しみあうことが嫌になる。
 ナチスドイツはそのことに気づいて、この歌をラジオで流すことを禁止した。
 でも、みんなはリリー・マルレーンを歌うことをやめなかった。

 恋人が恋人を想う心はどこでも同じ。
 人が人を愛し、想い幸福を願う気持ちは同じ。

 どんな国の人でも。
 どんな肌の色でも。
 どんな考えの人でも。

 いのちは一つで
 心もひとつで

 変わることはないんだよね。
 
 何にも変わらない優しい心を求めるのが人も心なんだよね。

 だから、人の心を信じたい。
 どんなときでも
 どんな世界でも
 
 憎しみや争いは信じない。

 やさしい心が、
 きっと誰もをやさしくするのだから。

 リリー・マルレーンを想う心。
 ぼくたちの中にもあるんだから。

💐


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