『神さまショッピング』角田光代ー読書メモ#10

『神さまショッピング』角田光代 新潮2024年6月号
純文学度:60
キャラ:3
テーマ:5
コンセプト:3
展開:2
文体:2

タイトルの神さまショッピングとは、許しを求めて、様々な神さまの元にお参りすること。
診療の結果に納得いかない人が、次々と医療機関を変えて受診することをドクターショッピングと言うらしく、それが元ネタになっている。

罪悪感というのは小説でもよく取り扱われるテーマで、それはすなわち、多くの人が人生で向き合うことになる問題ともいえる。
今多くの人って書いたけど、よくよく考えたら人類の半分ぐらいは、罪悪感と無縁の人生送ってそうだな。
憶測でしかないけど。
つまるところ、罪悪感とは一種の作られた感情であり、人類すべてに共通の基本プログラムではなさそう。
この小説の主人公のように、ある日突然インストールされてしまうこともある、みたいな。
そもそも、罪悪感って何なのかっていうと、長良は防衛プログラムだと思うんだよね。
「自分は悪いことをしてしまいました。自分はそのことを自覚しています。だから許してください」っていう。
他人にとって不都合なことが起きて、かつ、それに自分が対処できない、もしくは、対処したくないってときに、一番手っ取り早い解決方法が罪悪感を抱くって行為なんかなーと。
まあ、責任逃れの方法と言ってもいいかもしれない。

ただ、人間って当然ながらすべての他人の不都合を解決することはできないわけで、そんな場面に出くわすたびに罪悪感抱いてたら正直コスパ悪いんだよね。
大事なのは、その特定の相手とか世間から攻撃を受けないことなのであって、罪悪感を感じるのはその攻撃に対するあくまで防御手段なわけですから。
なので、その時々に合わせた他人とか世間からの攻撃(あるいは攻撃可能性)に対する防御手段を身につければ、過剰な罪悪感に苛まれることはなくなるはずです。
ちなみに、今回の主人公に関して言えば、子供を産むことができない、という事実に対する攻撃可能性への過剰な免疫反応が罪悪感の正体です。
過剰な免疫反応という意味では、アレルギーと同じですね。
ということは、罪悪感治療のために神さまショッピングしてる主人公は、アレルギー治療のためにドクターショッピングしてる患者と、構造的には全く一緒になりますね。おもしろい。

罪悪感について思うことをつらつらと語っていたら、罪悪感=アレルギー反応という、おもしろそうな関係が見えてきました。
罪悪感というモチーフは、小説読んでる上でたびたび出会うことになると思うので、今後も考察し続けていきたいですね。

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