お兄ちゃんと鬼いちゃん
鬼滅のアニメ2期、遊郭編が終わった。
テレビのリアタイを見びれたので配信で昨日の夜見たし、泣いた。最近はもう人の泣き顔を見るだけで涙腺が緩んでしまう。
子供がいるわけでもないのにはじめてのおつかいとかを見たらグッとくるし、家族の感動ものも心臓に悪い。ヒロインが病死する系のやつはまだ好きになれないけど。
そんな今回の鬼滅の遊郭編、色々と考えさせられることが多々あり、見終わってからもしみじみと余韻に浸っていた。
もう国民的作品になったものとして鬼滅を扱うのでほんの少しのネタバレとかその辺を気にする方はここで戻ってください。
鬼になってしまった妹を助けるべく、鬼を狩る集団に所属し毎度死にかけながらも信念のもと剣を握り続ける主人公である炭次郎。
この章では遊郭に潜む鬼を探し退治すべく仲間たちと潜入するところから始まる。
鬼の正体を突き止め、その鬼を倒さんとぼろぼろになりながらも戦う果てに、鬼はもう一体いたことが判明する。
まさかの敵は鬼の兄妹だった。奇しくも自分と同じ兄妹を相手にする炭次郎、それでも妹を守り救うためにはそんな兄を斬らないとけない。
決着の末に、偶然か運命か、首だけになった兄妹が出会うシーンから鬼の兄妹の回想が始まる。
梅毒の母親から生まれた妓夫太郎とその妹堕姫、兄であった妓夫太郎はその母親の遺伝か知らずか、醜い容姿であれば生きる価値がないとされる遊郭で毎日死を望まれ生きていた。
一方後に生まれた妹である堕姫はそれはもう美しい容姿をしていて、いつの間にか兄である妓夫太郎はそれを誇りにしていた。
唯一の価値基準が容姿であった遊郭の世界では最高級の弱者の妓夫太郎は美しい妹を持つ兄としてのアイデンティティを確立させていく。
妹を溺愛し、妹の見えないところで粉骨砕身し、妹が何かをすればそれを当たり前のように助ける。
妹が生き残ることだけを望む姿が画面に同時に2人も映っていた。
生きること、生かすことを目的にしている兄たちの胸がつまる戦いは終わる。
勝った方の兄は負けた方の兄の生死を確かめるべく不用意にも負けた兄妹のもとへ近づき、2人の会話を耳にしてしまう。
「お前なんて生まれなければよかった」と口走りそうになった兄の口を塞いだ兄はどれだけ慈しみ深いのかと泣きかけながら見ていた。
生きることだけに執着し、妹の無事だけを求め続ける鬼いちゃんは、はたして悪者としてよかったのか。
誰よりも優しい鬼いちゃんを持った妹が、兄によって生かされ一緒に生きたいと願うことは悪いことだったのだろうか。
同じ妹がいるお兄ちゃんと鬼いちゃんの意地比べは、時代と場所が違えばもっとほのぼのとしたものだったはずなのに、どうしてここまで綺麗に決着をつけなければいけなかったのか。
色々と考えさせられてしまう。本当に少年漫画かこれ?
そんな鬼たち、それも上弦の鬼たちは人よりも生きることに執着するように感じている。
それも、生きることではなく、生きていればあり得たかもしれない空想に入り浸ることに執着しているように見えてならない。
今回出てきた鬼の兄妹だって、人らしい生活をしていればあり得たことを望み、それに縋りながら生きていた。
それでも、今回の敵であった堕姫は遊郭の花魁として頂点に立ちながらも、自分を虐げてきた醜い人たちを大層雑に扱う姿は、かつて自分がされたことをなぞっているだけであり、本来の少女らしい当たり前の日常を謳歌することはなかった。
それ以前に、当たり前という当たり前を知ることがなかったのだ。
兄の妓夫太郎だって同じように、叩きを生業にしているも、それ以上のことを知らなかったし、そもそもの「成りかた」を知らなかった。
もしかすると、鬼になってからの生活は死後のロスタイムなのかもしれない。そんなことをふと考えた。
遊郭編の直前であった炎柱、煉獄さんと戦った鬼はこう言っていた。
「鬼になれ、俺と永遠に戦い続けよう」
鬼になれば永遠に戦えるし致命傷だってすぐに回復できる。鬼であることのメリットだけを押しつけ続ける傲慢な鬼の姿は真っ当に老いながら人らしく生きた彼にとってはさぞかし滑稽で空虚に見えたことだろう。
死ぬ直前までの価値基準や環境しか知らず、全てを自在にできるほどの力を得たって、それまでと同じようなことしかできずに人を喰らい続ける。
そんな全能の異形の姿になってなお、「お兄ちゃんの妹になる」と駄々をこねたあの妹と、そんな妹の兄をすることが妹を汚すとしていた兄の顔が切なかった。
どうかあの兄妹にきっちりとした罰を与え、それから暖かい家とご飯を恵んでやってくれないか。そんなことをふと神か仏かに願ってしまった。
鬼であろうと救済を与えてはいけないわけではないだろう。それくらいの救済があったっていいはずだ。
同じ長男でありお兄ちゃんである自分はそんなことを考えた話でした。
最近は調子に乗ってうるさくアホな妹だけれど、愛してやらんとなぁとしみじみ思うものです。昨夜、余ったらしいチョコをくれました。愛してやりましょうとも。
そんなわけでなんともまとまりがない文章だったけど今日はこの辺で。
ではまた明日。焼き鳥食べてきます。
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