D・カーネギー「人を動かす」は対人関係をよくするための名言の宝庫だった
本書は1936年に初版が刊行された後、世界中で読み継がれているリーダーシップ本である。日本では主にビジネス書としての位置付けで引用されたり参照されることが多いが、英語の原題は「How to win friends and influence people」であり、ビジネスの場面以外の友人関係の場、社交の場でも十分応用が効く原則ばかりが並んでいる。
以下、本書に記載されていた記述のうち、心に残った言葉を書き留めておきたい。
1.相手を批判してはいけない、賞賛せよ
自分の家の玄関が汚れているのに、隣の家の屋根の雪に文句をつけるな(孔子)
我々は他人からの賞賛を強く望んでいる。そして、それと同じ強さで他人からの非難を恐れる(ハンス・セリエ、心理学者)
人間は誰しもお世辞を好む(リンカーン)
お世辞とは、相手の自己評価にぴったり合うことを言ってやることである
人間の持つ性情のうちで最も強いものは、他人に認められることを渇望する気持ちである(ウィリアム・ジェイムズ)
私はこれまでに、世界各国の大勢の立派な人々とつきあってきたが、どんなに地位の高い人でも小言を言われて働く時よりも、ほめられて働く時の方が、仕事に熱がこもり、出来具合もよくなる。その例外には、まだ一度も出会ったことがない(チャールズ・シュワブ)
2.他人に関心を持ち、話を聞くべし
成功に秘訣というものがあるとすれば、それは、他人の立場を理解し、自分の立場と同時に、他人の立場からも物事を見ることのできる能力である。(ヘンリー・フォード)
まず、相手の心の中に強い欲求を起こさせること。これをやれる人は、万人の支持を得ることに成功し、やれない人は、一人の支持者を得ることにも失敗する
他人のことに関心を持たない人は、苦難の人生を歩まねばならず、他人に対しても大きな迷惑をかける。人間のあらゆる失敗はそういう人たちの間から生まれる(アルフレッド・アドラー)
我々は、自分に関心を寄せてくれる人々に関心を寄せる(パブリアス・シラス)
物事には、本来、善悪はない。ただ我々の考え方いかんで善と悪とが分かれる(シェイクスピア)
フランクリン・ルーズヴェルトは、人に好かれる一番簡単で、わかりきった、しかも一番大切な方法は、相手の名前を覚え、相手に重要感を持たせることだということを知っていた
どんな褒め言葉にも惑わされない人間でも、自分の話に心を奪われた聞き手には惑わされる(ジャック・ウッドフォード)
商談には特に秘訣というものはない。ただ、相手の話に耳を傾けることが大切だ。どんなお世辞にも、これほどの効果はない(チャールズ・エリオット)
自分のことだけしか考えない人間は、教養のないい人間である。たとえ、どれほど教育を受けても教養が身につかない人間である(ニコラス・バトラー、元コロンビア大学総長)
相手の関心を見抜いてそれを話題にする。それは結局双方の利益になる
3.笑顔を見せよ
およそ、人は幸福になろうとする決心の強さに応じて幸福になれるものだ(リンカーン)
動作は感情に従って起こるように見えるが、実際は、動作と感情は並行するものである。動作のほうは意志によって直接に統制することができるが、感情はそうはできない。ところが感情は動作を調整することによって、間接に調整することができる。したがって、快活さを失った場合、それを取り戻す最善の方法は、いかにも快活そうに振る舞い、快活そうにしゃべることだ(ウィリアム・ジェイムズ、ハーバード大学教授)
笑顔を見せない人間には、商人にはなれない(中国の昔の商人)
4.常に相手に耳を傾け、相手のことを考えよ
常に相手に重要感を持たせること
すべて人にせられんと思うことは人にもまたそのごとくとせよ(イエス・キリスト)
人は誰でも何らかの点で他人より優れていると思っている。だから、相手の心を確実に掴む方法は、相手が相手なりの世界で重要な人物であることを素直に認め、そのことをうまく相手に悟らせることだ
人と話をする時は、その人自身のことを話題にせよ。そうすれば相手は何時間でもこちらの話を聞いてくれる(ディズレーリ、政治家)
自ら顧みて、自分に対する強烈な関心と、自分以外の者に対するいい加減な関心とを比較し、次に、その点については、人間は皆同じであることを考えれば、あらゆる職業に必要な原則を把握することができる。すなわち、人を扱う秘訣は、相手の立場に同情し、それをよく理解することだ(ケネス・グード)
人間は一般に、同情をほしがる。子供は傷口を見せたがる。時には同情を求めたいばかりに、自分から傷をつけることさえある。大人も同様だ。傷口を見せ、災難や病気の話をする。ことに手術を受けた時の話などは、事細かに話したがる。不幸な自分に対して自己憐憫を感じたい気持ちは、程度の差こそあれ、誰にでもあるのだ(アーサー・ゲイツ、教育心理学者)
5.議論を避けよ
議論に負けてもその人の意見は変わらない。議論は、ほとんど例外なく、双方に、自説をますます正しいと確信させる終わるものだ。議論に勝つことは不可能だ。もし負ければ負けたのだし、たとえ勝ったにしても、やはり負けているのだ。なぜかといえば、仮に相手を徹底的にやっつけとして、その結果はどうなる?やっつけたほうは大いに気をよくするだろうが、やっつけられたほうは劣等感を持ち、自尊心を傷つけられ、憤慨するだろう
議論したり反駁したりしているうちには、相手に勝つこともあるだろう。しかし、それはむなしい勝利だ。相手の好意は絶対に勝ち得られないのだから
できれば、人より賢くなりなさい。しかし、それを、人に知らせてはいえない(チェスターフィールド卿)
理屈通りに動く人間は滅多にいるものではない。たいていの人は偏見を持ち、先入観、嫉妬心、猜疑心、恐怖心、ねたみ、自負心などにむしばまれている
人を納得させるには、外交的であれ。つまり、相手が誰であろうと、口論をしてはいけない。相手のまちがいを指摘して怒らすようなことはせず、外交的手法を用いよ
自分に誤りがあるとわかれば、相手の言うことを先に自分で言ってしまうのだ。そうすれば、相手には何も言うことがなくなる。十中八九まで、相手は寛大になり、こちらの誤りを許す態度に出るだろう。
バケツ一杯の苦汁よりも一滴の蜂蜜のほうが多くのハエをとれる。人間についても同じことが言える。もし相手を自分の意見に賛成させたければ、まず諸君が彼らの味方だとわからせることだ。これこそ、人の心をとらえる一滴の蜂蜜であり、相手の理性に訴える最善の方法である(リンカーン)
相手にいったんノーと言わせると、それを引っ込めさせるのは、なかなか容易なことではない。ノーと言った以上それをひるがえすのは自尊心が許さない。ノーと言ってしまって、後悔する場合もあるかもしれないが、たとえそうなっても、自尊心を傷つけるわけにはいかない。言い出した以上、あくまでそれに固執する。だから、初めからイエスと言わせる方向に話を持っていくことが非常に大切なのだ
敵を作りたければ、友に勝つがいい。味方を作りたければ、友に勝たせるがいい(ラ・ロシュフコー、フランスの哲学者)
相手は間違っているかもしれないが、相手自身は、自分が間違っているとは決して思っていないのである。だから、相手を非難してもはじまらない。ひなんは、どんな馬鹿者でもできる。理解することに努めねばならない。賢明な人間は、相手を理解しようと努める
6.その他の名言
相手の信用状態が不明な時は、彼を立派な紳士と見做し、そのつもりで取引を進めると間違いがないと、私は経験で知っている。要するに、人間は誰でも正直で、義務を果たしたいと思っているのだ。これに対する例外は比較的少ない。人をごまかすような人間でも、相手に心から信頼され、正直で公正な人物として扱われると、なかなか不正なことはできないものなのだ
仕事には競争心が大切である。あくどい金儲けの競争ではなく、他人よりも優れたいという競争心を利用すべきである(チャールズ・シュワブ)
成功者は皆ゲームが好きだ。自己表現の機会が与えられるからだ。存分に腕をふるって相手に打ち勝つ機会、これが、いろいろな競争や競技を成立させる。優位を占めたい欲求、重要感を得たい願望、これを刺激するのだ
相手の自己評価を傷つけ、自己嫌悪におちいらせるようなことを言ったり、したりする権利は私にはない。大切なことは、相手を私がどう評価するかではなくて、相手が自分自身をどう評価するかである。相手の人間としての尊厳を傷つけることは犯罪なのだ(サン=テグジュペリ、作家)
偉人は、小人物の扱い方によって、その偉大さを示す。(カーライル、イギリスの思想家)
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