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Y Combinatorの登壇企業を見ながら、優れたビジネスアイデアとは何かについて考える

https://www.youtube.com/watch?v=_Kmgj9MAEN0&t=84s

元野村證券の営業マンで今はプルデンシャル生命で完全成果報酬型の営業マンである人気YouTuber、宋世羅氏の動画が好きでかれこれ3年近く観続けているが、この度大変共感した動画を見つけたため共有しておきたい。

「起業センスの無い者ほど妄想のビジネスプランを語り、起業センスのある者ほど地に足ついたビジネスプランを語る」

これが上記の動画の趣旨である。

確かにビジネスを自分で立ち上げたことのない素人ほど、壮大なビジョンを掲げ、AI・ブロックチェーン、メタバース、Web3.0などのその時々のバズワードに追従したビジネスを立ち上げ、そして失敗する。

一方で優れた起業家ほど、既に確立されたビジネスを取り上げ、それを従来とは少し異なる視点を取り入れ、成功させる。素人ほど壮大なビジョンとビジネスアイデアを重視し、優れた起業以下ほど実現可能性を重視する。

ここにはいくつかの重大なインプリケーションが含まれているように思える。

まず一つ目は、「市場が存在しないところにビジネスチャンスはない」ということである。「まだ競合が存在しないブルーオーシャンを攻める・市場を創出する」というと格好いいが、実際にはビジネスチャンスがないから誰も参入していないだけ、ということが多々ある。これが素人が陥りがちな点である。

一方で優れた起業家は、ビジネスモデルや市場が既に確立されている(=既にビジネスチャンスが存在することは競合によって検証されている)領域において、競合とは少し違った視点や価値観を提供すること(これをリフレーミングという)で差別化を図り、顧客を獲得し事業を拡大させていく。

わかりやすい例が世に多く存在するフィンテック企業ではないだろうか。彼らは何か目新しい金融サービスを創出したわけではない。

株式売買手数料を無料にしたRobinhoodも、海外送金を安く・速く行うWiseも、何か目新しい機能やサービスをつけたわけではない。だがそれでも彼らは急速に顧客を獲得し、ユニコーン企業に成長し、上場を果たしている。では彼らのサービスは何が違ったのか。

彼らのサービスが既存の金融機関のそれと明らかに異なっていたのは金融サービスに対する視点である。

「お金という命の次に大事なモノを扱う以上、金融サービスとは真面目で堅苦しく、様々なリスクもつまびらかに丁寧に説明したサービスを提供しなければならない。わかりやすさ・見やすさ・親しみやすさは二の次である」が既存の金融機関の商品設計における基本的な考えだとすれば、RobinhoodやWiseの考えは「わかりやすく、見やすく、毎日開きたくなるような親しみやすい金融アプリは作れないだろうか。人気Webアプリの概念を金融アプリに移植できないだろうか」というものだった。

WiseとJPモルガンの海外送金サービスは、同じ「海外送金サービス」を取り扱っていても、その目指すべき価値観が根本から異なっていたのである。

優れた起業家といのは、「そこに市場はあるか」を見極める能力と「リフレーミング」により既存市場の参入機会を見極める能力に優れている。

もう一点目は、ビジネスアイデアよりも実現可能性が重要、ということである。確かにメタバースやブロックチェーン等の絵空事が含まれたビジネスアイデアの方が、まるで「ドラえもん」や「鉄腕アトム」の世界を想起させてくれるので聞いている側は気持ちがいい。だが、ビジネスとは現実世界の話である。結局、実現可能性があるかどうか・地に足ついたアイデアかどうか、という点が重要なのである。

こんなことを思いながら、もう5年以上も昔に参加したY Combinatorデモデイに登壇したスタートアップたちのビジネスアイデアを読み返してみた(以下ご参照。登壇した約120の企業のうち、一部を記載)。

Y Combinatorと言えば現Open AIのCEO、サム・アルトマン氏が元々はCEOを務めており、シリコンバレーNo.1のアクセラレータとして名高い集団である。

そのアクセラレータに採択されたスタートアップの事業アイデアは、確かにそのほとんどが既存ビジネスのリフレーミングであり、かつ実現可能性に重きを置いたものが大半である。

https://www.ycombinator.com/companies?batch=S18
https://www.ycombinator.com/companies?batch=S18
https://www.ycombinator.com/companies?batch=S18

「市場のないところを狙っても無駄。既存市場の中からチャンスを見つけよ」「空想のビジネスアイデアではなく、その実現可能性を突き詰めろ」この点に関する嗅覚の優れている方々が、成功する起業家になるのではないかと考えている。


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