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「サードドア」を読んで心に残った言葉「全てはグレーだ」について書いてみた

過去、ひろゆきが著者と対談をしたり、けんすう氏が自身のNoteでとりあげたりする等で話題になった書籍「サードドア」が、家の本棚を整理していたら出てきたので読み返してみた。そこで、改めて印象に残った箇所を記載しておきたい。まずはアマゾンのサイトから要約を以下、抜粋する。

要約

<本の要約:アマゾンの書籍ページより>

【サードドアとは】
人生、ビジネス、成功。
どれもナイトクラブみたいなものだ。
つねに3つの入り口が用意されている。
ファーストドア:正面入り口だ。長い行列が弧を描いて続き、入れるかどうか気をもみながら、99%の人がそこに並ぶ。気をもみながら、99%の人がそこに並ぶ。
セカンドドア: VIP専用入り口だ。億万長者、セレブ、名家に生まれた人だけが利用できる。
それから、いつだってそこにあるのに、
誰も教えてくれないドアがある。サードドアだ。
行列から飛び出し、裏道を駆け抜け、何百回もノックして窓を乗り越え、キッチンをこっそり通り抜けたその先に─―必ずある。
ビル・ゲイツが初めてソフトウェアを販売できたのも、スティーヴン・スピルバーグがハリウッドで史上最年少の監督になれたのも、……みんな、サードドアをこじ開けたからなんだ。

以上の要約からわかる通り、本作品は正攻法ではない、誰も通らない第3の扉(サードドア)を見つけて成功したビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグ等の超著名人のインタビューが記載されている。

同時に、コネなし・金なし・学歴なしの状態の大学生(当時)の著者が超著名人とのインタビューを実現させるために、著者自身も第3の扉(サードドア)をこじ開けて著名人とのコネクションをあの手この手で築き上げ、目標を達成していく、という半ば自伝的な話になっている。そして、この本は実際に著名人がインタビューで話す内容よりも、そこに至るまでの数々の挑戦の中で、むしろ著者自身が成功の法則はこうなんじゃないかと、自分自身の思考が次第に変化し成長していく過程が非常に面白い。

「全てはグレーだ」

そんな中、最も印象的だったのは著者が著名人とのインタビュー活動に集中すべく、大学を辞めようか悩んでいる場面であった。もしマーク・ザッカーバーグやビル・ゲイツが同じような状況に置かれていたならば、果たして彼らも大学を辞めていただろうか、と自身の境遇に著名人たちの行動パターン・思考パターンを重ね熟考した挙句、「全てはグレーだ」との結論に辿り着いたその場面が以下である。

<以下、本文からの引用>

 フェイスブックの映画『ソーシャル・ネットワーク』を観てからというもの、僕はザッカーバーグは大学を中退した反逆者で、空に中指を突き立て、決して後戻りしない人だと思っていた。(…)僕は何年もの間、「ドロップアウト、マーク・ザッカーバーグ」という見出しを見て、彼は自分の意志で進んで大学を辞めたんだと思い込んでいた。
 見出しとか映画は、物事をはっきりさせて描くことが多い。でも僕にはわかってきた。真実は決して白か黒かで割り切れるものじゃない。グレーだ。すべてはグレーだ。(…)ビル・ゲイツの本を取ってみると、ゲイツも大学を中退するに当たって、勢いにまかせてなんてことはしてない。(…)リスクを取るときに難しいのは、取るかどうかの決断ではなく、いつそうするかというタイミングの判断だ。(…)いざ大きな決断をするというときに、それが正しいタイミングかなんて決してわからない。後で振り返ってみて初めてわかることだ。だから僕にできるは、できるだけ慎重に一歩を踏み出すことだけだ。

この後、著者は大学を辞めるといった行動は取らず、一時的に大学を休学することで、小さな一歩を踏み出し、インタビューを続けることになったのだが、同時にこの場面はまだ何者でもなかった頃のビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグがリアルに描写されている部分でとても印象に残った。

巷では上記2名のハーバード大学中退が「退路を断つ」「大学行きながら事業をやるなんて中途半端なことはしない」「俺たちにはこの事業の成功しか見えない。余計なことはやってられない」といった文脈で武勇伝的に語られることが多いが、実際には2名とも、創業当初の段階では自分たちの事業がうまくいくという確信は100%持っていなかった。大学中退を決断したのはある程度事業が軌道に乗ってからで、学生と起業家という二足の草鞋を履きながら慎重に事業の見極めを行っていたのがファクトだったのだ。

今となっては地球上の富の大半を手中に収めるこの2人でもこんな人間らしいエピソードがあったと言われると、何者でもない一般人としては「ああ、彼らも(少なくとも昔は)同じ人間だったんだな」とほっとさせられるし、何か不思議と勇気付けられる。最初はビビりでもいいんじゃん、と。

また、この本には出てこないが、マーク・ザッカーバーグについて言えば過去、Facebook(現Meta。言わずもがなですが)の事業が拡大している最中、共同創業者であるChris Hugesに対し小さな声で「従業員が増えた。これでもう絶対に失敗できなくなってしまったな」と弱気なつぶやきを発したエピソードが過去のThe New York Timesに掲載されている。映画「Social Network」で描写されていたあの天上天下唯我独尊で自信たっぷりのマーク・ザッカーバーグとは違い、実際の彼はなんて人間らしいのだろう。映画の彼は完全にフィクションだったのだ。

思い返せば、シリコンバレーの起業家も意外とリスクヘッジしていた

思い返すと、自分自身の経験を振り返っても、シリコンバレー駐在時、起業家の方々と話す機会はあったが、彼らがスタートアップに自分&家族の人生全てを託していたケースは予想外に少なかったことを思い出す。起業家と面談をしていて「この人はすごいなあ。自分、そして家族の人生全てをこの事業に託しているんだ」と思いながらよくよく話を聞いていると、実は配偶者が弁護士や安定した大企業に勤務している等、きちんと家庭でのリスクヘッジがなされていることが判明することがよくあった。もちろん、起業家自身が100%自分の事業に賭けているのは紛れもない事実なのだが、少なくともその家族の人生までは巻き込んでいなかった。もしくは、大手IT企業の初期従業員で既にストックオプションを手にして生活には困らないケース、等が多かった。

「全てはグレーだ」。この言葉がこのサードドアで学んだ最も大きな収穫だった。自分の事業の成功を100%確証して突き進むまるで漫画のような起業家は実際には(そんなに)存在しない。退路を断つなんて真似はせず(※)プランB(だめだったら大学に戻る、等)も周到に用意しながら事業の成功を慎重に見極めていく。

起業・独立したいサラリーマンの方々であっても、巷にあふれている格好良い起業家サクセスストーリーのフィクションに惑わされることなく、まずは副業等で事業性を見極め、ある程度成功の見通しが立った段階で慎重に一歩を踏み出す、というのがビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグといった成功者から学べる法則なのではないか。

※そういえば、「学校中退が条件」で本当に退路を断たせてしまうピーター・ティールの起業家育成プログラムがあったが、その後成功しているんだろうか。時間があったら調べてみたいと思います。

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