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日本で哲学の替わりになったもの

哲学は、僕が最近になってようやく注目したジャンルである。

思えばあれほど学校の勉強が嫌いだったのに、高校の倫理の授業で、「ゼノンのパラドックス」の話を聞いたとき、「なんて面白いんだ!!」って感動したのを覚えている。

哲学への興味が育つ土壌が無い

日本では、宗教、哲学というのは、かなり白い目で見られることが多く、その道の専門家に会うということも、日常生活では滅多にないことだ。

勉強嫌いの僕がせっかく興味を持ったことも、その後、育つ環境が無かったが、ネットの普及で、哲学の専門家による生の発言や、なんなら本人と直接コンタクトすることだって、それほど難しいことではなくなった。

そんなこともあって、興味をぶり返したということがある。
この辺は時代の恩恵が大きい。

しかし、昭和の頃までは、日本人は哲学に出会うチャンスが少なく、数学や語学のように一般に広く知られる学問では無かったように思う。

文学

そんな日本にも、哲学に代わるものがあった。
それは、文学だ。

哲学=文学という意味ではないが、文学に対する日本人の態度というのは、哲学的だったんじゃないかなと思うのだ。

作中の登場人物の言動に深く思考を巡らせた。なぜ、そういう行動をしたのか、どうしてこう言わなかったのか・・と。

その思考に、自分や社会を照らし合わせて、自分はどう生きるべきか、世の中はどうあるべきかということを考えた。

だから、哲学の世界のように多くの人が議論して正解を探してく作業というよりは、それぞれが「フワッと受け取る」というのが日本人らしいところなのかもしれない。

もちろん、日本の文学の世界でもその解釈を深く研究している専門家はいるけど、日本人の一般庶民が文学作品に触れるというのは、数少ない哲学的な機会だと思う。

宗教

自分を客観視して思考したり、自分とは違う思想に触れる機会としては、日本人限定で考えると、宗教の方が多いのではないだろうか。

日本にも哲学研究者は沢山いるのだが、思想家という括りになると、どちらかといえば宗教家のイメージが強い。

たとえば日本の仏教における、各宗派の祖師というのは、それぞれに強烈な思想を持っているが、一般檀信徒に対して直接その思想を説くということは、あまりされてこなかった。(宗派によっては、ややその傾向がつよい場合もあるが・・)

たぶん、この辺りは先にも書いたように「フワッと受け取る」のが日本人の感性に向いているからなのかもしれにない。

あるときは道徳と組み合わせて、またあるときは「方便(ほうべん)」という形で、教理と直接関係ないことであっても、生活の中で習慣や行、儀式を通じて、それを伝えようとした。

仏教以外の神道やその他の宗教でも、そのようなことはあるかもしれないが、自分が触れていないのでわからない。

それらも、失ってしまった

「純文学」という言葉も、ほとんど使われなくなった。
読書といえば、かつてはわざわざ「大衆小説」と言い分けていたものが、一般的な対象だろう。その大衆小説すら、今や読むことを楽しみにしている人はほんの僅か。

宗教に関しても、公立学校から排除され、家庭毎の格差が広がった。
それ自体は、公立であることの公平性を保つためにも、悪いことではないと思うのだけど、平成7年の地下鉄サリン事件以来は、ますます宗教に対する目線が厳しくなり、団塊の世代あたりから、家庭でも宗教が次の世代に伝わらなくなった。

結果的に、現代は「生き方難民」みたいな人がとても多いように感じる。

「生き方難民」は本を読め

もし、これを読んだあなた自身がそう感じていたら、読書と、宗教に目を向けてみて欲しい。

ただし、少ない情報を盲信するのはとても危険。
日頃、本を読まない人が初めて良い本に出会うと、バイブルとなってしまう事がある。それはとても危険なことだ。

「悪い本」というのは滅多にないが、少なくとも筆者の主張がそれぞれ書いてあるものなので、少数特定の本だけに心を動かされ(それはとても良い事)、その後、別な考え方の本を拒否する様になってしまうと危ない。

それは、宗教でもまったく同じ事がいえて、人生を壊すような危ない宗教も中にはあるが、善く生きるための本物の宗教と区別をつけることは、見る目が育っていないと難しい。

なぜなら、どの宗教も自分たちは正しいと思っているからだ。
「中の人」に話を聞けば、どれも素晴らしい教えに感じる。

歴史があるから正しいとか、新宗教はあやしいとか、そんなことはない。
素晴らしい新宗教もあれば、危ない伝統教団もある。

哲学へ興味が育たない日本では、文学と宗教というのは、生きていく上でとても大切な事だと考えている。


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