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【マッチプレビュー】2023 J3 第6節 AC長野パルセイロvsカマタマーレ讃岐

2023 J3 第5節 振り返り

試合結果

FC大阪0-1富山 (1,435)
岐阜3-1琉球 (3,805)
今治1-1奈良 (4,578)
八戸1-1北九州 (1,456)
福島0-2岩手 (1,021)
相模原0-0沼津 (2,044)
松本0-0鳥取 (8,407)
長野1-0YS横浜 (2,421)
讃岐2-0鹿児島 (1,474)
宮崎0-0愛媛 (2,932)

2023 J3 第5節

 4月1日、2日に行われた2023 J3 第5節、各会場の結果は上記の通り。ホームチーム勝利試合が3試合、アウェイチーム勝利試合が2試合、ドロー決着試合が5試合となった。前節に引き続きドロー決着の試合が5/10を占めた。ただ、前節と異なる点として今節は比較的得点が動かなかったということ。10クラブが無得点で敗北or引き分けとなっており、全く流れが読めないJ3リーグの面白さを露呈してくれている。首位松本、2位今治は共にホームでドロー決着となり、思うように勝点を伸ばすことができなかった。しかし、松本のホームゲームは8,000人超の観客、今治のホームゲームは4,000人超の観客と注目度は十分だった。圧倒的なサポーター基盤があるからこそ、早めにホームの利を活かした勝点3を掴みたいところだろう。

順位表

 第5節を終えてJ2昇格圏内の上位2クラブは、岩手と富山。第4節終了時点で順位表のトップハーフは、勝点1しか差がなかった。この僅差を制する形になったのが、岩手であり、富山であり、讃岐だった。そうはいっても、まだまだトップハーフの勝点差は2。勝点差2の間で10クラブが鎬を削っている。1試合で順位が入れ替わる可能性のある勝点差3まで視野を広げると、12位の鹿児島まで第6節終了時点での首位の可能性が生まれてくる。集団状態から抜け出すチームは現れるのだろうか。それとも、折り返しまでこのままの様相で走っていくのだろうか。1節1節が非常に大きな意味を持ってくる。
 ボトムハーフに目を移すと、YS横浜・福島・FC大阪の3クラブは、やや今季のJ3に馴染むことに苦戦している印象。福島・FC大阪に関しては、1勝こそしたものの、その後は勢いを活かしきれずに敗戦を喫している。YS横浜は、今季初勝利が遠い展開。昨季も初勝利まで10試合を要したが、今季からJ退会制度があることを考えると、一刻も早く勝点3を掴んで順位を上げていきたいところである。

2023 J3 第6節

YS横浜vs鹿児島
岩手vs相模原
沼津vs福島
愛媛vs岐阜
琉球vs奈良
FC大阪vs今治
鳥取vs八戸
長野vs讃岐
富山vs宮崎
北九州vs松本

2023 J3 第6節 対戦カード

 前節マッチプレビューで注目試合に挙げた「松本vs鳥取」の一戦は、0-0のドロー決着。松本が優位に試合を運びながらも、決定的な得点を奪うには至らなかった。矛盾対決という点で言えば、鳥取の連続複数得点を止めた松本に軍配が上がったと言える。しかし、上位対戦でも今季のJ3クラブの力が拮抗していることは明白。一度連勝して抜け出してしまうチームがあれば、手に負えなくなるかもしれない。
 個人的に今節の注目試合は、「FC大阪vs今治」の一戦。順位表上の位置には開きがあるが、非常に見応えのある試合になると考える。FC大阪は、得点・失点ともに好調とは言えないが、相手の隙を突いて一瞬で得点を奪うことに優れている。対する今治は、昇格候補筆頭に数えられながらも、前節の奈良戦を見る限り、盤石とは言い難いスタートになっている。FC大阪がホームで、無敗の今治を破ることがあれば、今季のJ3はより混戦に突入するだろう。

ホームで今季初の連勝を

 そして、我らがAC長野パルセイロ。前節は、ホームでYS横浜と対戦し、1-0でホーム初勝利を掴んだ。支配率やパス数という指標で見ると、YS横浜が大幅に上回った試合だったが、チームとしての"賢守猛攻"のコンセプトを完遂。ボールを握る時間帯は少なかったが、一度の攻撃で決定的な場面を創ることが多く、ゴール期待値やシュート本数でYS横浜を上回った
 今季ホーム初勝利を達成し、自らの手で追い風を吹かせることに成功した長野。今節はホーム連戦となり、直近3試合負けなしの讃岐を迎え撃つ。勢いという点では、順位が上の讃岐に分があるかもしれないが、何と言ってもホームゲーム。スタジアム全体で讃岐を倒しにいくことが求められる。

マッチプレビュー

通算対戦成績

 長野は讃岐に対して、J3通算6勝2分0敗を記録している。4シーズンしか積み重ねがないという背景もあるが、J3では長野は讃岐に負けたことがない。勝率に換算すると、75%という圧倒的な数値である。過去の対戦成績は以下の通り。

讃岐0-1長野
長野0-0讃岐
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長野1-0讃岐
讃岐1-2長野
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讃岐0-2長野
長野0-0讃岐
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長野3-1讃岐
讃岐0-1長野

長野vs讃岐の歴史(J3)

 過去4シーズンでシーズンダブル達成は2回。ちょうど交互にシーズンダブルの年とそうではない年がやってきている。流れとしては、長野のホームゲームはスコアレスドローとなる予測ができる。一方で、長野のホームゲームが前半戦に行われたシーズンは、長野が讃岐に対してシーズンダブルを達成しているとも読み取れる。いずれにせよ、長野は讃岐に対してJ3で無敗ということが事実。数字上では非常に得意とする相手なのである。
 長野のホームゲームに限定して見ると、長野の2勝2分0敗となっている。全体成績のドローゲームは、全て長野のホームゲームで記録しているということだ。これだけ相性の良い相手でありながら、このデータは嬉しくないものになっている。そして、過去の対戦では、讃岐の調子が上がりきっていない状況で対戦することが多かった。しかし、今季の讃岐は、現在進行形で絶好調を迎えている。ホーム3連勝で勝ち癖を掴んでおり、全く油断できない相手だ。讃岐としても、J参入以降、クラブカラーがオレンジのクラブに勝利したことがなく、呪縛を解くにはこの試合しかないと、相当意気込んでくるはずである。この勢いと熱量を跳ね返すだけの雰囲気とチームの躍動が求められる。

昨季対戦の振り返り

 前半戦は、讃岐をホームUスタに迎えての一戦。長野は開幕から1勝1分の無敗で、素晴らしい開幕スパートを決めた状態での対戦になった。
 この試合の長野は、3-5-2のシステムを選択。昨季の立ち上がりは4-1-2-3・4-3-1-2に続き、3試合目で3つ目のスタイルを見せての試合だった。それまでの2試合と異なり、讃岐2トップの空中戦を警戒して3バック(守備時に5バック)を適用。クロスの制度が高いWBをビルドアップの流れからサイドに追いやり、苦しい体制からクロス供給をさせることを強いた。そして、中央では、喜岡・秋山・池ヶ谷が数的優位な状態でクロスボールを弾き返すという設計。讃岐にやりたいスタイルをやらせないまま、前半の早い段階でセットプレーから2点を奪うと試合の主導権を完全に掌握した。前半のうちに更なる使い点を奪い、3-0で試合を折り返す
 後半も試合の主導権を握りながら試合を進めていったものの、追加点を奪うには至らず。一瞬の隙を突かれて、カウンターから1失点を喫した。しかし、3-1での勝利は上々の出来であり、開幕スパートを加速させる勝利となった。

 後半戦は、アウェイ讃岐に乗り込んでの一戦。直前にシーズン2度目のリーグ戦連勝を達成した長野は、調子が上向きの状態で乗り込んだ。対する讃岐は直近の試合で3連敗を喫しており、調子としては最悪な状況だった。
 試合の内容も好不調がはっきりと読み取れるものになった。前半から長野が4-1-2-3の形でボールを保持。讃岐のプレッシングを引き出した上で、背後に抜け出す攻撃を展開。何度も讃岐ゴールを脅かす場面を作ったが、前半のうちにゴールネットを揺らすことはできなかった。
 後半に入ると、確実な決定機を増やそうと慎重なプレーが増えた長野に対して、讃岐のプレッシングが牙を剥いた。背後のスペースを活用した長野の攻撃が減り、讃岐DFは自信を持って表側で対応できるようになった。この後方からの押し上げによって、ショートカウンターから讃岐が決定機を迎えるような場面が後半になって増加した。しかし、長野も何とか無失点で乗りきり、迎えた後半アディショナルタイム。左サイドからのアーリークロスに藤森がヘディングで合わせて、長野が1-0で劇的勝利を収めた。

前節の振り返り

 長野は前節ホームにYS横浜を迎えての一戦。ホーム開幕戦で奈良に衝撃の大敗を喫し、リバウンドメンタリティが求められる中での試合になった。
 前半からYS横浜がボールを握り、長野がロングボールやショートカウンターから攻撃に転じるという構図。YS横浜の擬似4バックのビルドアップに対して、奪いどころを共有しきれない状態が続いた。一方で、YS横浜も決定的な得点機会は多く創ることができなかった。中里を中心に行うビルドアップの安定感は流石のものだったが、長野の5-3-2ブロックの内側へ進入する回数が多くならなかった。
 後半に入っても、試合の流れはおおよそ同じ。長野が立ち上がりから積極的なプレスに切り替える時間帯もあったが、思うようにボール奪取には繋がらなかった。そんな中で迎えた60分、長野が杉井・三田に代えて、音泉・西村を投入。この交代の直後に、西村が宮阪のFKに合わせて貴重な先制点を奪った。その後も試合の流れが大きく変わることはなく、時間が過ぎていった。YS横浜はC.アローヨと松井を投入して攻勢を強めたが、長野の5-3-2ブロックが最後まで集中力を保ってクリーンシートを達成。1-0で長野が勝利した。

 讃岐は前節、ホームに鹿児島を迎えての一戦。讃岐は、開幕からホームで連勝を達成しており、非常に良い感覚を持ちながら試合に臨んだはずである。
 前半はお互いに球際のバトルで強度があり、攻守の入れ替わりも激しい展開が続いた。徐々に鹿児島がボールを握り、LSB薩川とRWG五領を起点に強烈なサイド攻撃で讃岐ゴールに迫る。CKや流れの中で何度か鹿児島がシュートチャンスを作ったが、讃岐が決死のディフェンスで満足なシュートを打たせない。対する讃岐も、積極的な4-4-2の守備からショートカウンターを狙い、鹿児島ゴールに迫る。迎えた34分、讃岐がCKのチャンスを迎えると、こぼれ球に川崎が反応し、右足を振り抜く。見事にゴール左上隅に突き刺さり、讃岐が先制に成功した。
 後半も前半と同様に鹿児島が握り、讃岐がカウンターを起点に決定的な場面を創るという構図。鹿児島はボールを保持しているものの、讃岐堅い守りに対してなかなかシュートチャンスを創れない。讃岐が森本や赤星といった長身FWを起点にロングカウンターで何度もシュートチャンスを創る。そして、鋭いサイド攻撃から複数回CKを獲得。69分、江口のCKから奥田が合わせてホットライン開通。第4節の鳥取戦での2得点に続いて江口→奥田の得点が、2試合連続で決まった。2点差を追いつくために、鹿児島が猛攻を仕掛けるも、讃岐は体を張った守備で最後まで失点を許さない。そのまま、2-0で試合終了となり、讃岐は今季ホームゲーム3連勝を達成した。

予想スタメン

 長野の基本システムは前節同様に3-5-2を予想。GKに濵田。3バックは右から池ヶ谷・大野・秋山。WBに船橋・杉井。アンカーは宮阪。IHに佐藤・三田。2トップに進・山本を予想した。ポイントとしては、3バックの組み合わせ。古巣対戦になる砂森を継続して先発起用する可能性もあるが、森本や赤星といった高身長FWに対しては分が悪いと考え、弾き返す力に優れる大野を起用した。
 讃岐の基本システムは前節同様に4-4-2を予想。メンバーも前節の先発と同様の並び。GKは高橋。4バックは右から金井・小松・奥田・臼井。ボランチに江口・長谷川。サイドアタッカーの位置は、右に川崎、左に。2トップに森本・鳥飼を予想した。鹿児島を苦しめた4-4-2のブロックは健在。江口のキックから生み出されるセットプレーやカウンターの攻撃には、長野側としては十分な注意を払う必要がある。

注目ポイント

◎1点の重み
◎Aggressive Duels

 長野vs讃岐の一戦で注目したいポイントは、上記2点。第一に1点の重み。今季のJ3は早くも混迷を極めているが、最終的に勝負を分けるのは、得点への執念と失点をしないという強い覚悟だと感じる。精神論になってしまうが、今季の讃岐はこの執念と覚悟が頭抜けている。終盤のセットプレーから2得点を重ねたり、何度も相手のシュートを身体で止めたりと泥臭いスタイルを原動力に、確実に勝ち点を積み重ねている。
 第二にAggressive Duels。この注目ポイントは前節のYS横浜戦と重複してしまうが、非常に重要なポイントになると考える。讃岐の守備は、かなり人に対する警戒が強く、少しでもボールキープに隙があれば、足を出してかき出してくる。また、人基準で守ることが影響し、鹿児島戦では4-4-2ブロックが5-4-1ブロックに可変することも見られた。ボールへの食いつきはもちろんだが、人への食いつきも多く見られるため、長野としてはこの特徴を上手く活用して決定的な場面を創出したい。

まとめ

 長野は前節、ホームUスタで嬉しい今季初勝利を飾った。相手は前節開始時点で最下位のYS横浜だったわけだが、簡単な試合にはならなかった。ボールを握らせる時間を耐え、隙を突いて何度もYS横浜ゴール前に迫った。決定機の数からすると、1-0という数字は物足りないかもしれないが、勝点3は勝点3である。今節もホームの声援を受け、苦しい時間帯がやってきても乗り切れるかどうかが重要になる。また、讃岐は守備が堅いため、先制点を奪えるか否かは勝負に大きく影響する可能性がある。
 讃岐は前節、ホームで昇格候補筆頭に数えられる鹿児島を破り、ホーム3連勝を達成した。今季ホームゲームは全勝しているものの、アウェイでは未勝利。特に、第4節鳥取戦こそ終盤の2得点でドロー決着としたが、北九州戦と鳥取戦は共に複数失点を喫している。アウェイゲームで先制点を奪えるかどうかは讃岐にとっても大きなポイントになるだろう。

 過去を何度引き合いに出しても意味はないが、個人的に讃岐には勝ち続けなければならないと思っている。長野が唯一、直接的にJ2昇格を阻まれた因縁の相手だ。当時と比較すると、所属選手も監督も、長野にとってはホームスタジアムも変わった。目に見えるものは何もかも違うかもしれない。しかし、これまでのJ3で讃岐に6勝2分0敗を記録しているのは、間違いなくあの時讃岐の地で、長野の地で流した涙が活きているからだと思っている。チームは、過去など気にせず存分にフットボールを楽しんで勝利を手繰り寄せて欲しい。スタジアムの雰囲気を創る我々サポーターは、讃岐の好調を飲み込むほどの圧倒的なアウェイを創り上げよう。必ず、"このチーム"と長かったJ3時代を抜け出せると信じて最後の笛がなるまで戦い続けよう。

獅子よ、千尋の谷を駆け上がれ。