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【マッチレビュー】2022 J3 第19節 カマタマーレ讃岐vsAC長野パルセイロ

3連勝

 7月30日、Pikaraスタジアムで行われた2022 J3 第19節 カマタマーレ讃岐vsAC長野パルセイロの一戦は0-1でアウェイチームの勝利となった。
 カマタマーレ讃岐はこの敗戦によって4連敗となり、いまいち勢いを戻せない状況である。そして、"オレンジの呪い"というべきか、またもやオレンジのチームに勝利する事はできなかった。また、対パルセイロというところで見るとJ3通算0勝2分6敗、カマタマーレ讃岐のホームゲームでは4戦4敗となった。パルセイロの昇格を直接阻み、2014シーズンのJ2残留を決めたスタジアムだが、J3に降格して以降は当時の因縁を晴らすかのようにパルセイロが勝ち続けている。今週末の休みを挟んでホーム連戦、7連敗の沼から抜け出したテゲバジャーロ宮崎を迎える。8戦勝ちなしの相手から勝点3を奪うことにフォーカスして仕上げていきたいところだろう。
 一方、パルセイロはこの勝利で3連勝を達成した。今季初の3連勝となり、無敗記録も5試合まで伸ばした。7月に行われたリーグ戦で4勝1分の勝点11を獲得し、5月・6月で取りこぼした勝点を回収するかのような巻き返しを見せている。この試合では、試合終盤まで相手ゴールを脅かしながらも、相手の攻守に阻まれ1得点となった。数字だけ見れば物足りなさを感じるかもしれないが、勝負どころを落とさない強さが身についてきたのではないだろうか。第16節FC今治戦から続いて4試合連続でヘディングでの得点となり、最後に足で得点したのは7月2日と興味深い記録も継続中だ。"継続"をキーワードに約2週間後のカターレ富山との上位対決に照準を合わせられるかが今後の昇格争いをかき乱す上でも重要になるだろう。

前半

基本システム

 お互いにスタメン発表がされた段階で想定されるシステム同士でのぶつかり合いになった。カマタマーレ讃岐は長谷川選手が累積警告による出場停止でRCBを伊従選手が務めた。対するパルセイロは前節と比べて変更は0人。上図では4-1-2-3として選手を配置したが、これは守備ブロックでの配置をベースに並べたものである。実際は攻撃時と守備時で各選手の配置が異なる場面が多く見られ、前節に続いて攻守で明確な狙いが感じられる配置となっていた。

プラン通りの攻撃

 贔屓目なしで見ても、前半はパルセイロが主導権を握り続ける試合展開だった。パルセイロは最近の試合の傾向と変わらず、DFラインでボールを握りながら相手の背後を伺う構図。前半は、個々人のスキル面におけるミスからロストし攻撃を受ける場面はあったものの、相手のプレスで引っかかるような場面は全くと言って良いほど見当たらなかった。

パルセイロのビルドアップ局面

 パルセイロは4バック+GK+宮阪or水谷でボール保持陣形を整える。ボール保持局面ではSBが開きすぎず、およそPA幅程度に収まる位置でCBからのボールを引き出す。開いたとしても+3m程度で徹底して4バックの幅のコンパクトさが特徴だったように感じた。また、全体として4-1-2-3の構え方から各ラインが若干右肩上がりにシフトし、4-2-2-2とも見えるような配置になっていた。

 パルセイロの4バックに対してはカマタマーレ讃岐の2トップ+IHが噛み合うような形でビルドアップに睨みをきかせる。4人がそれぞれ4バックに対して1vs1を臨める体制ではあるが、その4人の背後に位置取る宮阪や水谷の扱いにはかなり苦労していた印象。前線の選手から"人基準"守備の意識を強く感じ、背後のスペースまでは管理できていない状況が続き、外側に追い込んでも4人の背後にあるスペースに逃げられる構図が出来上がった。

 パルセイロとしてもSBがサイドいっぱいに開きすぎないため、オンザボールで余程のミスがない限りはプレス回避経路が用意できている状態だった。ボールをDFラインで動かしていく過程でカマタマーレ讃岐が食いつく場面ができてくる。ボールホルダーであるSBの自由を十分に奪えていれば、ボールサイドからマークにつかせて同サイド圧縮からカウンターが打てるが、奪いどころが徹底されていなかったように思える。SBが左右問わずフリーな状況でも、WBやアンカーが中途半端に高い位置をとることで背後のスペースが使われてひっくり返される。思うようにボール奪取ができない45分間に見えた。
 逆にパルセイロとしては狙い通りの前半だったと推測する。中継の集音マイクでも拾われていたようにシュタルフ監督は「蹴れるときは背後」ということを強調していたように思う。局所局所で+1の状況を自陣DFライン付近で作り出し、背後に蹴れるノープレッシャーの場面では出し手と受け手がスペースを共有してスルーパスを通す。そんな前進方法を志向しているように見えた。
 奪いどころがはっきりしないカマタマーレ讃岐の守備と狙い通り手前で食い付かせて背後を突くパルセイロの攻撃が重なり、カマタマーレ讃岐アンカー脇スペースは格好の狙いどころになった。そのスペースを生かし、二次攻撃もスムーズにでき、相手のゴールに脅威を持って迫った。カマタマーレ讃岐の水際での献身的な守備もあり、0-0で前半を終えた。
 前半終盤にカマタマーレ讃岐がボールを握る時間帯もあったものの、4-3-3ブロックで構え、PA内に向けてスピードアップすることはさせなかった。カマタマーレ讃岐がPA内に侵入できた攻撃はほとんど見られなかった。このまま後半に入ると、いずれカマタマーレ讃岐の水際での守備が決壊するように思えた。

後半

歯がゆい時間帯

 前半45分間の様子から見て、何らかの変更がない限りパルセイロに主導権がある状態で時間が進んでいくと思われた後半だったが、カマタマーレ讃岐が盛り返すことになる。
 まだボールの落ち着かない展開が続いている中、前半同様にカマタマーレ讃岐の2トップ&IHの背後で受ける水谷を起点に左サイドから崩しにかかるパルセイロ。杉井が森川とのパス交換で深い位置まで進入したものの、折り返しのクロスは無人のスペースへ。下川選手が追いかけカマタマーレ讃岐カウンターに繋がった。パルセイロの守備陣形が整う前に左サイドから攻撃し、後藤選手の決定機までつなげるも秋山が決死のブロック。後半立ち上がりだっただけに非常に危険な場面だった。

後半序盤の攻撃

 後半立ち上がりから飲水タイムまで両チームともに決定的な場面を作る回数が少なかった。特にパルセイロの決定機数の減少は明らかだったように思える。メンバー・システムともに大きな変更がないにも関わらず、流れが止まった原因の一つとして「背後を使わなくなった」ことが挙げられる。
 前半の攻撃ではカマタマーレ讃岐DFに対して背後に抜け出される恐怖を匂わせ続け、WBを含めて前に出づらくなる状況を作り出せていた。しかし、後半に入り確実な決定機を増やそうとしたのか、若干思い切りに欠けるミドル〜ロングパスが増えた。カマタマーレ讃岐DFが前に出て対応するような浮き球での前進が増えたことにより、受け手である山本や森川の位置も後ろ側に重くなる。ボールとマーカーを同一視野に入れやすくなったカマタマーレ讃岐DFは前半よりパワーを持ってボール&マーカーにアタックできるようになった。その結果、中盤にこぼれたセカンドボールをカマタマーレ讃岐に拾われることが増え、なかなか押し戻せない時間帯になったと考える。
 3バックが自信を持って前に出ることができるようになるとWBも同様にマーカーに対して厳しくアタックすることができる。パルセイロが4バックでボールを動かしている最中、前半よりもSBに対して川崎選手や後藤選手らが圧力をかけられるようになり、パスの配球源も抑えられる場面があった。
 その状況下でも62:30のチャンスシーンのように相手のミスを逃さず、個々のクオリティで相手ゴールに襲い掛かることができている場面もあった。後半の飲水タイムまでお互いにシュートは2本と静かな試合運び。前半の流れから考えると、パルセイロとしては歯がゆい時間帯だったのではないだろうか。

交代策がもたらした影響

 72分のパルセイロの交代を皮切りに両チームが交代選手を使って状況の打開を試みる。パルセイロの最初の交代カードとして起用されたのは藤森とデューク。森川と山本に代わっての投入であり、押し戻せない時間帯の原因とも言える背後への強い意識を取り戻すための交代だったように思える。76分には、カマタマーレ讃岐が残り3枚の交代カードを一気に切り、パルセイロの交代に対応しながら得点を狙う采配。対するパルセイロも1点を取るために、79分に坪川、三田を投入した。

 この交代の直後にカマタマーレ讃岐はこの試合2つ目のビッグチャンスを迎えた。後半途中から疲れが顕著に現れていた船橋と投入から間もない三田の右サイドから臼井選手が仕掛けて、ポケットに入り込んでクロスを供給。

 得点にこそつながらなかったが、後半立ち上がりの後藤選手のカウンターからの決定機に並ぶ決定的なシーンだった。数こそ少なかったが、こういった場面で決めきる力がついてくると終盤戦に向けて昇格戦線を荒らすチームになるのではないだろうか。

 80分以降は交代選手が中心になり、パルセイロがチ決定的な場面を多く作るようになった。82:10頃の船橋からデュークへのクロスであったり、度々訪れたデューク&杉井のホットラインからのチャンスが多かった。最後の最後までカマタマーレ讃岐の高橋選手を中心とした堅い守りを崩せず、歯がゆい終盤を過ごしたが、ついに均衡が崩れることになる。
 92:35頃、水谷の仕掛けのこぼれ球を秋山が杉井に渡し、すぐさまファーサイドにクロスを上げると藤森が頭で合わせて先制点を奪う。残り時間わずかなところで値千金の2試合連続ゴール。その後は、大きなクリアなどで自陣ゴールからボールを遠ざけて試合終了。歯がゆい苦しい時間帯を乗り越えて3連勝を達成した。

まとめ

 今節を勝点1で終えるか、勝点3で終えるかは非常に大きな転換点となり得る状態であった。この試合とは無関係だが、上位対決となった「藤枝MYFCvs鹿児島ユナイテッドFC」「カターレ富山vsいわきFC」において上位側が勝点3を手にしなかった。また、「松本山雅FCvsヴァンラーレ八戸」ではアウェイのヴァンラーレ八戸が勝点3を手にした。いわきFCと松本山雅FCは未消化試合が1試合あるが、上位3クラブが勝点38で並び、暫定5位までが勝点差2の間にひしめくことになった。
 上位が足踏みしているおかげではあるが、それ以上に自分達の"ORANGE FOOTBALL"に矢印を向けて日々成長できていることによるところも大きいと言える。夏の移籍で主力である喜岡を失ったが、シュタルフ監督の言う「一人が抜けてどうこうなるチーム作りをしていない」がまさに体現できているのではないだろうか。ピッチに立っていない選手も含めた日々の競争がチームの底上げにつながっている。
 次節は1週空いてUスタでカターレ富山を迎え撃つ。パルセイロは直近5試合負けなし。最後に負けたのがカターレ富山とのアウェイゲームだ。早くもリベンジのチャンスが訪れ、奇しくも勝点差3の6ポイントゲームでの激突。4連勝を目指すのではなく、あくまでも目の前の一勝を"One Team"でつかむ。その積み上げの結果として、昇格&優勝を目指そう。
 まだまだやれる。獅子の反撃はここから始まる。

獅子よ、千尋の谷を駆け上がれ。

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