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【マッチプレビュー】2023 J3 第18節 AC長野パルセイロvsガイナーレ鳥取


2023 J3 第17節 振り返り

試合結果

YS横浜1-2讃岐
宮崎0-2鳥取
岩手0-1北九州
琉球2-1松本
八戸4-0長野
今治1-1沼津
奈良1-0岐阜
FC大阪1-0相模原
鹿児島3-1福島
愛媛4-3富山

 2023 J3 第17節 各会場の結果は上記の通り。ホームチーム勝利試合が6つ、アウェイチーム勝利試合が3つ、ドロー決着試合が1つとなった。今季のJ3リーグも前半戦ラスト3節に差し掛かった。近年稀に見る混戦模様を呈しているが、第17節の結果にも色濃く反映されたと言える。
 1位・2位直接対決となった愛媛vs富山の試合は、首位攻防戦にふさわしい激しい試合となり、両チーム通算7得点を奪い合う乱打戦となった。結果は第16節終了時点2位だった愛媛が4-3で勝利。自力で首位を破って今季初の首位の座を手にした。
 また、4位・5位直接対決であった今治vs沼津の一戦は1-1のドロー決着。勝利すれば大きくライバルと差をつけるチャンスだったが、沼津が試合終了間際に同点弾を決め、勝点1を分け合う結果となった。
 そして、第17節全体として印象的だったことは、80分以降の得点が各会場で目立ったことだ。首位攻防戦である愛媛vs富山では両チームともに80分以降に得点を奪っている。他にも琉球vs松本の逆転劇、八戸vs長野のダメ押し弾、今治vs沼津の同点弾、奈良vs岐阜の先制点というように試合終盤で得点が動く試合が多く見られた。夏本番が近づく中で、試合終盤まで力強さを維持することは、昇格に向けて重要な要素になるだろう。

順位表

 第17節を終えてJ2自動昇格圏内に入ったクラブは、愛媛・鹿児島となった。第12節終了時点から5週間にわたって首位を堅持した富山だったが、愛媛との直接対決に敗れ、約1ヶ月ぶりに首位の座を明け渡した。
 首位に立った愛媛は、今季初の首位の座につくこととなった。今季開幕戦のホーム岩手戦を1-5で落とし、不安が残るスタートとなったが、その後はすぐに復調を見せる。今季初の首位だが、第6節以降は常に6位以内に位置し、首位奪還のチャンスを虎視眈々と狙う立ち位置だった。第17節で訪れた千載一遇のチャンスを逃すことなく、首位富山を破ることに成功した。
 2位につけた鹿児島は、第14節終了時点以来の昇格圏内につけることとなった。直近のホーム戦は鳥取戦・八戸戦と0-1での敗北が続いていたが、第16節アウェイ富山戦での快勝の勢いを生かしてホームで約2ヶ月ぶりの勝利を掴んだ。第16節では、それまでホーム無敗の富山にホーム初黒星をつけ、第17節では苦手とする5バックを固める福島を相手に3得点の快勝。苦手を克服しながらの成長曲線と言えるだろう。

2023 J3 第18節 プレビュー

相模原vs奈良
富山vs琉球
岐阜vs今治
讃岐vs宮崎
八戸vs愛媛
沼津vs鹿児島
岩手vsYS横浜
松本vs福島
長野vs鳥取
北九州vsFC大阪

 2023 J3 第18節 各会場の対戦カードは上記の通り。
 首位に立つ愛媛は、八戸とのアウェイゲームに臨む。八戸は第17節で長野と戦い、今季初のホームナイトゲームを4-0と快勝で飾った。今季最多得点を記録し、チームとしても勢いがついていることだろう。ただ、勢いという点に関して言えば、愛媛も負けていない。堅守の富山から4得点を奪い、3失点を喫したものの、試合終了まで1点リードを確実に守り切った。首位に立つことで勝利から遠ざかるというジンクスもあるが、愛媛は富山同様にゾンクスを打ち破ることができるだろうか。
 2位につける鹿児島は、沼津とのアウェイゲームに臨む。沼津は第17節で今治との上位直接対決を行い、1-1のドロー決着とした。先制点を奪われる難しい展開だったが、試合終了間際にエースのブラウンノアが同点弾を決め、勝点1奪った。鹿児島は、相手にボールを握らせる5バックスタイルを苦手としている印象があるが、沼津は4バックでボール保持を志向するスタイルである。平均ボール保持率もJ3トップであり、鹿児島としてはやりやすい相手と言えるかもしれない。また、沼津とは勝点差4であり、一気に差を縮められたくはないところだろう。

賢守の再建と猛攻への一手を

 それでは、我らがAC長野パルセイロの第18節を深掘りしていく。長野は第17節八戸とのアウェイゲームに臨んだ。前半序盤に先制点を奪われる苦しい展開。第7節以降クリーンシートがないことを課題の1つに挙げるシュタルフ監督だが、再び早い時間帯での失点を許した。そして、53分までに3-0と失点を重ね、試合終盤にもカウンターからダメ押しの得点を被弾。第16節今治戦に続いて4失点&無得点で大敗を喫した。
 第15節アウェイ北九州戦でリーグ戦の連敗を止めたものの、今治戦・八戸戦と大量失点での連敗を許した。賢守のベースは見る影もなく、スーパーゴールorミスで先制点を献上し、慌てて前に出たスペースをひっくり返される。勝利が遠ざかっていることがチームの自信を失わせ、それぞれの意図が噛み合いにくくなっている場面も目立つようになってきた。
 長野の第18節の対戦相手はガイナーレ鳥取。2014シーズンに新設されたJ3リーグで初年度から鎬を削るライバルである。J2経験クラブであるが、J3参加以降は昇格を達成することができていない。10年来のライバルクラブを相手に勝利を掴み、再び昇格戦線へと復帰するきっかけを作ることができるだろうか。

マッチプレビュー

通算対戦成績

--2014--
鳥取1-1長野
長野1-1鳥取
鳥取1-1長野
--2015--
鳥取0-1長野
長野2-0鳥取
長野1-0鳥取
--2016--
長野0-0鳥取
鳥取2-0長野
--2017--
鳥取1-0長野
長野3-0鳥取
--2018--
長野0-1鳥取
鳥取1-0長野
--2019--
長野0-1鳥取
鳥取1-1長野
--2020--
鳥取1-1長野
長野0-1鳥取
--2021--
鳥取1-8長野
長野3-2鳥取
--2022--
鳥取0-1長野
長野1-2鳥取

〈Jリーグ通算〉
長野7勝ー6分ー鳥取7勝
〈長野ホーム通算〉
長野4勝ー2分ー鳥取4勝

 
長野と鳥取の通算対戦成績は上記の通り。
 Jリーグ通算記録でも長野ホーム通算でも全くの五分となる成績を記録している。2014シーズン以来昇格を争ってきたライバルであることが感じ取れるデータとも取れる。
 完全に五分の対戦成績であるため、相性や会場による違いを考えることは難しい。ただ、強いてあげるとするなら、長野ホームの方が決着がつきやすいということだ。鳥取ホームでは4分を記録しており、長野ホームに比べると勝敗がついていない印象を受ける。
 同対戦カードでは相手を完封することも、複数得点を奪うこともあり、そのシーズンごとで色が出やすいという印象がある。今季はどんな戦いを繰り広げるのか注目していきたい。

昨季対戦振り返り

2022 J3 第17節

2022 J3 第32節

※記事省略

勝点・順位推移

 長野は第10節前後で印象が明確に分かれる印象を受けるだろう。第10節以前の10試合では連勝を2度達成。3連勝、2連勝を達成した週末は首位で次節を迎えることになっていた。しかし、第10節以降の7試合では0勝1分6敗と完全に足踏み。昨季はシーズン終盤まで連敗を喫することがなかったが、今季は前半戦の間に2度の連敗を経験することになった。連敗を喫した後、踏ん張りが効かないまま気づけば15位まで順位は後退した。目標に掲げたJ3優勝達成のためには前半戦残り2戦で、勝点4は最低目標と言える。
 鳥取は順位こそ奮っていない印象を受けるが、確実に勝点を積み重ねていると見える。連敗は第11節・第12節の1度きりであり、勝利が少ないため急激に勝点を伸ばせていないが、順位ほどの低迷は感じない。第14節ホーム北九州戦での敗戦を受け、金監督を解任。増本HCがそのまま監督に就任し、第15節から指揮をとっている。体制変更後は2勝1分0敗と復調の流れを感じさせる。また、鹿児島戦・宮崎戦とアウェイゲームでは全勝中とアウェイゲームでの強さを見せている。残り前半戦で勝点4を積むことができれば、トップハーフの位置で後半戦に臨めるだろう。

その他データ比較

長野 | 鳥取
---平均勝点---
1.24(15) | 1.29(12)
---平均得点数---
1.4(5) | 1.4(5)
---平均失点数---
1.6(20) | 1.5(15)
---平均ゴール期待値---
1.215(10) | 1.252(8)
---平均被ゴール期待値---
1.514(18) | 1.460(16)
---平均チャンス構築率---
9.3%(17) | 11.4%(5)
---平均被チャンス構築率---
12.1% (19)| 10.8%(12)
---平均ボール保持率---
46.4%(16) | 51.7%(7)

※( )内は各指標リーグ内順位

長野
・J3リーグ最多失点タイ
・被ゴール期待値&被チャンス構築率
 
長野は賢守猛攻のスタイルを掲げながらもデータからは厳しい現実が伺える。最多失点に関しては、直近2試合の8失点が響いていると言えるが、他の守備スタッツが良いとは言えない数字になっている。

 「…ここ最近我々はずっとスーパーゴールを決められていますが、スーパーゴールを決めたいチームは今パルセイロと対戦すればいいんじゃないかと思ってしまう…」

 アウェイ北九州戦後のシュタルフ監督の言葉だ。確かにスーパーゴールは印象的であり、失点はスーパーゴールかもしれない。ただ、対戦相手のゴール期待値が高くなり、チャンス構築率が高くなるということは、失点の可能性が高いということ。つまり、失点に直結しているのはスーパーゴールかもしれないが、失点の危険性を下げられているわけではないということ。
 今季の軸になるスタイルであるため、シュタルフ監督体制を続行する以上は大きな転換は考えられない。しかし、"賢守"を見つめ直す段階であることは間違いない。

鳥取
・チャンス構築率
・被ゴール期待値
 
チャンス構築率とは、シュート数を攻撃回数で割って算出される数値だが、鳥取はこの数値がリーグでトップクラスに高い。鳥取よりも高い数値を示しているのは、今治・鹿児島・沼津・松本であり、どのクラブも攻撃力をスタイルの軸に据えているクラブである。これらのクラブと肩を並べる鳥取の攻撃完結力には警戒する必要があるだろう。
 鳥取は得点数・チャンス構築率としては良い数値と言えるが、長野と同様に被ゴール期待値の数値がリーグの中で悪い部類に入る。相手のゴール期待値が高くなるということは、シュートを打たせる位置やボールホルダーに対するプレッシャーが効果的に機能していない可能性がある。相手のゴール期待値を下げるような守備が構築できれば、失点数を減少させ上位に食い込む躍進が期待できる。

予想スタメン

 ホーム長野の予想システムは3-5-1-1。GKはキム。3バックは右から池ヶ谷・秋山・佐古。アンカーは宮阪。WBは右に船橋、左に杉井。IHは西村・三田。トップ下は佐藤。1トップは。2戦続けての大敗を受けて大きな変更も考えられるが、開幕戦のスタメンを軸に自分たちの目指すスタイルを再確認する必要性があると感じる。また、シュタルフ監督としては、これまでの軸を大きく転換するつもりはないだろう。
 アウェイ鳥取の予想システムは3-4-2-1。GKは井岡。3バックは右から鈴木・増谷・飯泉。ボランチは世瀬・長谷川。WBは右に田中、左に。シャドーは牛之濵・普光院。1トップは重松。増本監督体制になってから3バックを基本軸に戦う試合が多く見られる。体制変更から無敗と調子も良く、基本的には直近3試合の基本形を踏襲するスタイルで臨むことが予想される。

まとめ

 鳥取は、シーズン開幕のスタートは非常に優れたものだった。「失点をしてもそれ以上に得点を奪って勝つ」という金監督のスタイルが非常によく現れていた。基本的に得点を狙うスタイルは変わらないものの、徐々に自分たちの攻撃力を上回る失点数になり、ドロー決着や敗戦が増えていった。今季はJFLへの退会可能性があり、監督変更という決断を迫られたと思われる。監督交代後から、まさに監督交代ブーストと言わんばかりの好調を見せている。2013シーズン以来のJ2復帰に向けて前半戦で1つでも多くの勝点3を掴みたいところだろう。
 長野は、第10節の信州ダービー以降調子は右肩下がり。ダービー直後の連敗は、やや運に左右される側面もあったかもしれないが、運の無さがチームの自信を必要以上に削ぎ、スタイルを見失っているように見える。見失っているのか、固執しすぎているのか、結果論でしか評価は下せないが、J3優勝という目標に向けてこれ以上勝点を逃すことは許されない。今一度自分たちの魅せるサッカーを心の底から楽しみ、ORANGE Footballを繰り広げることに期待したい。

獅子よ、千尋の谷を駆け上がれ。

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