【マッチプレビュー】2023 J3 第11節 アスルクラロ沼津vsAC長野パルセイロ

2023 J3 第10節 振り返り

試合結果

YS横浜2-2相模原
奈良0-1FC大阪
長野2-1松本
鳥取2-2沼津
八戸2-3岩手
今治0-0愛媛
鹿児島2-0琉球
富山1-0福島
讃岐0-2岐阜
北九州0-1宮崎

2023 J3 第10節

 5月13、14日に行われた2023 J3 第10節の各会場結果は上記の通り。ホームチーム勝利試合が3試合、アウェイチーム勝利試合が4試合、ドロー決着が3試合となった。2023年5月15日がJリーグ30周年記念日ということもあり、各地でダービーマッチが組まれたJ3第10節だった。各会場ダービーマッチということもあり、非常に拮抗したスコアが並んだ印象を受ける。
 前節終了時点で首位に立っていた奈良は、生駒山ダービーでFC大阪に敗戦。第1節松本戦以来の黒星となった。同じく昇格圏内の2位に位置していた愛媛は、伊予決戦で今治とスコアレスドローに終わる。一方で、前節終了時点で3位の長野、4位の富山は順調に勝点3を積み上げて、それぞれ首位と2位に躍り出た。また、開幕からいまいち波に乗り切れていなかった鹿児島が、琉球との一戦を制して3連勝を飾った。どの事象も今季のJ3が混戦模様になることを予感させるデータと言えるだろう。

順位表

 第10節を終えてJ2昇格圏内につけたのは、長野富山。すでにどちらのクラブも今季のJ3で首位を経験している。しかし、どちらも前節の奈良と同様に、首位で迎える試合で勝利することができていない。長野も富山も第10節で勝利を飾り順位を上げたが、1試合ごとに首位が入れ替わる今季のJ3では安心するには早いだろう。
 首位の長野は、5月に行われた岩手戦、松本戦で連勝を掴んだ。4月終盤で福島に逆転負けを喫したが、その悔しさをバネに5月のリーグ戦と天皇杯では複数得点を継続し、好調を維持している。得点数ではJ3で単独トップ。堅守で勝点を積み上げてきたこれまでの長野とは異なる印象だが、昇格に向けて10年目で殻を破るには良い兆候だろう。
 2位の富山は、首位で迎えた第9節は、相模原に先制される展開で苦しみながらも追いついて勝点1を手にする。前節は福島に対して、セットプレーから柳下が先制点を奪い、先制点を確実に守り切って勝点3を掴んだ。首位の長野に次いでリーグ2位の得点数を記録している。富山も長野と同様にチャンスクリエイト数値が高いわけではないが、確実に得点を重ねている。昇格圏内で迎える今節で連勝を飾れるかが非常に重要になってくる。

2023 J3 第11節

YS横浜vs北九州
FC大阪vs八戸
讃岐vs奈良
愛媛vs福島
松本vs鹿児島
今治vs鳥取
宮崎vs岩手
相模原vs琉球
沼津vs長野
岐阜vs富山

2023 J3 第11節

 首位の長野はアウェイで沼津との一戦。2位の富山はアウェイで岐阜との一戦。今季のJ3は第2節以降、首位クラブが臨む次節で勝利できていないという流れがある。シーズンの約4分の1を終えて、奇妙な流れが染み付いてしまったわけだが、この流れを破るクラブが出てくれば、文字通り昇格戦線を牽引する立場に躍り出るだろう。
 今節の対象となる首位クラブは長野。前回は第7節終了時点で単独首位だった。しかし、第8節で福島をホームで迎え撃ち、2-3と逆転負けで首位の座を明け渡してしまった。シーズン途中の順位を気にしすぎても仕方ないが、流れを掴む上では今季初の首位クラブとしての勝利を求めたいところだろう。
 個人的な今節の注目カードは「松本vs鹿児島」である。昨季いわきとともに昇格戦線を牽引した両クラブ。昨季の成績と今季の陣容を見る限り、満足な序盤戦を送っているとは言えないが、どちらが勝利して浮上のきっかけを掴むことができるかに注目したい。両クラブの勝点差は3。松本が勝利すれば、勝点差を0に。鹿児島が勝利すれば4連勝かつ優勝争いに参戦することになるだろう。ビルドアップから決定機を創出していくお互いの"美しいフットボール"から眼が離せない試合になるはずだ。

5月全勝へ

 それでは、我らがAC長野パルセイロの第11節を深掘りしていく。前節はホームで松本との信州ダービーを戦い、2-1で勝利した。2008年以来のリーグ戦での勝利となり、J参入後初めて松本に勝利を記録することになった。加えて、他会場の結果を踏まえて単独首位として第11節を迎える。第7節終了時点で単独1位に立った際は、第8節でホーム福島戦で痛い逆転負けを喫した。第7節勝利後のゴール裏には首位を喜ぶチームとサポーターの姿があったが、第10節勝利後のチームは目の前の勝利に歓喜していた。ダービーマッチ勝利ということもあるが、最後に順位表の1番上にいるためには、後者の喜びがふさわしいのだろう。第8節と同じ轍は踏まないように気を引き締めなければならない
 今節の対戦相手は沼津。今季より中山雅史監督が率い、情熱的な本人の姿とは対照的にロジカルなポゼッションスタイルを構築している。第10節終了時点の順位は11位と芳しくないようにも見える。しかし、こうしたロジカルなスタイルは試合を重ねれば重ねるほど強みを増してくるものである。経路は違えど、積極的にゴールを狙う両チームのフットボールに注目したい。

マッチプレビュー

通算対戦成績

 長野は沼津に対してJ通算6勝4分2敗を記録している。数字だけで見れば、長野にとって相性は悪くない相手だと言える。勝率に換算すると50%であり、苦手な印象がある長野サポも多くないのではないだろうか。

--2017--
沼津1-1長野
長野1-0沼津
--2018--
長野2-2沼津
沼津2-3長野
--2019--
沼津0-0長野
長野1-0沼津
--2020--
長野3-1沼津
沼津1-0長野
--2021--
沼津0-1長野
長野1-1沼津
--2022--
沼津1-0長野
長野2-1沼津

沼津vs長野 対戦成績

 一覧で見てみると、お互いにシーズンダブルを記録したシーズンはない。沼津がJ初参入となった2017シーズンは長野の1勝1分。続く、2018シーズン、2019シーズンも長野の1勝1分。近年最もJ2昇格に近づいた2020シーズンの後半戦で初黒星を喫した。この試合に勝っていれば昇格できていただけに、このシーズンの黒星は印象に残っている。
 2021シーズンの前半戦での勝利も長野サポーターとしては非常に印象的だったのではないだろうか。試合が終盤になって荒れるようになり、ラストプレーで水谷(現:秋田)のクロスに吉村(現:秋田)が飛び込んで先制点を奪った。SB to SBというダイナミックな攻撃かつ劇的な決勝点ということでサポーターの心に残っているゴールだろう。
 ただ、沼津のホームゲームでの戦績に焦点を当てると、通算2勝2分2敗を記録。つまり、沼津のホームゲームにおいて同対戦カードは完全に五分となっている。この戦績でも勝率は50%と言えるわけだが、長野ホームで負けていないことを考慮すると、長野にとって"愛鷹"は得意なスタジアムとは言い切れないだろう。

昨季対戦の振り返り

 前半戦は、沼津のホームゲームで対戦した。5月の緒戦という位置付けであり、翌週には信州ダービーが控えているという状況だった。ダービーマッチに燃える中、勢いをつけたい試合で足元をすくわれる結果になってしまった。
 前半は、攻撃局面では沼津の前線からのハイプレスに苦戦。長野の4-1-2-3ビルドアップに対して、4-4-2で堅牢なブロックを固めたところから積極的にボールを奪いにきた。長野としては、船橋が負傷離脱し代役のRSBが定まらない中でビルドアップを模索している状況だった。その影響も大きく、なかなか意図的に前進できる場面が作れていなかった。スローインの流れからミドルシュートがディフレクトして不運な失点を喫する。最悪とは言い難い試合運びで失点というマイナス要素を背負って後半に向かうことになった。
 後半は、一進一退の攻防が続く中、シュタルフ監督が大きな変更を加える。普段最前線に起用されることの多い山本と三田をIHとして出場させる。最大火力で守備網を破りにかかったが、前線5枚と後方5枚の距離感が間延びしてしまい、効果的なビルドアップが大幅に減少した。決定的得点機会は創り出せていたものの、あと一歩及ばず0-1で敗れた。

 後半戦は、長野のホームゲームでの対戦になった。9月に入り、ジャッジの不信感など長野にとって不運な出来事が重なり、いわき・岐阜・福島との3戦で勝点1しか回収できていない中での対戦となった。この時期、長野は限定ユニフォームを着用していた。Jリーグ夏の風物詩である「勝てないリミユニは特級呪物」の雰囲気が、当時の長野でも漂っていた。
 前半は、当時ベーススタイルとしていた5-1-3-1→4-2-3-1の可変システムを活用し、沼津のハイプレスをビルドアップで剥がしていく場面が多く見られた。しかし、アタッキングサードでの精細さが足りずに、得点には結びつかない時間帯が続いた。このままスコアレスで前半を折り返すことになる。
 後半は、攻撃のギアを一段階上げるために2列目の交代を敢行。ポストプレーを得意とする山本とフレッシュな2列目との相性は最高。沼津が長野ビルドアップを捕まえることを諦め、撤退守備に切り替えたが、山本のポストプレーと2列目の機動力で打開を図った。自陣のミスから1失点を喫したが、長野の攻撃の勢いは止まらない。失点の10分後に山中が同点弾を奪い、終盤に水谷がミドルシュートで逆転弾を決める。この後は最後まで守備を引き締め、2-1で逆転勝利を収めた。

予想スタメン

 沼津の基本システムは、今季の軸となっている4-1-2-3を予想。GKは武者。4バックは右から安在・藤嵜・附木・濱。アンカーは菅井。IHは徳永・持井。3トップは右から森・和田・津久井を予想した。沼津は自分たちのスタイルであるポジショナルプレーを熟成しており、基盤となる後方のメンバーは大きく変えないことが推測できる。ただ、相手の守備の特性を見ながら3トップの組み合わせは変えてくることが多い。長野の守備ラインは高さに強みがあり、アジリティの面ではやや不安な側面もある。そのため、アジリティで勝負できる面々を最前線に並べてくると予想した。
 長野の基本システムは、今季の軸である3-5-1-1を予想。GKはキム。3バックは右から池ヶ谷・秋山・佐古。WBは右に船橋、左に杉井。アンカーは宮阪。IHは佐藤・西村。トップ下は近藤。1トップは山本を予想した。長野は今季チームトップタイの得点数を記録している進が怪我で長期離脱。


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