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2022 J3 第8節 アスルクラロ沼津vsAC長野パルセイロ マッチレビュー

 GW3連戦の2試合目となった2022 J3リーグ第8節のアスルクラロ沼津戦でしたが、結果は厳しいものになりました。Y.S.C.C.横浜戦、鹿児島ユナイテッドFC戦に続き、勝点3を奪いたかった一戦ですが、そう簡単に勝てる甘いリーグではありませんでした。結果として0点に抑えられて点が取れなかったですが、その理由はどこにあったのか。得点を奪えない試合では攻撃に焦点が当たりがちですが、守備からのトランジションはどうだったのか。信州ダービーに向けて悔しさからくるモヤモヤを少しでもクリアにして負けられないダービー2連戦に挑みましょう!

①試合結果

 信州ダービーに向けて勢いをつける、この心持ちの時点で目の前の相手に焦点を合わせられていなかったのでしょうか。結果は1-0でホームチームの勝利となりました。開幕から8試合を終えて今季初のアウェイゲームでの敗戦となってしまいましたが、下を向いている場合ではないというのが現実です。
 8試合を終えて4勝2分2敗という結果になり、決して悪くはないといった印象の勝点の積み上げ方ですが、戦国J3で昇格を達成するには少し物足りなくも感じてしまう結果かと思います。物足りなく感じるのは今季のチームから湧き出る期待感の裏付けであり、“もっとできる”と心から思うからこそもどかしい気持ちになってしまうのではないでしょうか。
 鹿児島ユナイテッドFC戦と同様に前半から自分達のスタイルを貫き、主導権を握りかけていたタイミングで失点してしまいました。あと一歩で流れに乗り切れるであろうタイミングで失点してしまう癖がついてしまわないようにしてほしいと思います。

②基本システム

4-1-2-3vs4-1-2-3

 アスルクラロ沼津は前節と同じく4-1-2-3を採用、パルセイロも前節と同様に4-1-2-3を採用しました。配置としては非常によく似たチーム同士の対戦になったと言えます。
 パルセイロは前節からスタメンを1人変更し、ほとんどが前節と同じ人選になりました。変更になったところは三田→デュークのところでした。これまでは試合開始時点で利き足と逆サイドにWGを配置することが多かったですが、デュークが先発になったことで利き足と同じサイドに配置するような形になりました。この変更の影響も含めて分析していきます。

③前半

【攻撃】

4-4-2でのハイプレス(喜岡サイド)

 ビルドアップの場面では沼津のプレッシングにやや苦戦したような印象を受けました。高い位置からプレッシングをかける局面では4-4-2に可変して圧力をかけてきます。おそらく狙いとしては、パルセイロの4バックの正面に必ず人を立てるといったところでしょうか。アスルクラロ沼津としては、前からマンツーマンで捕まえにきてビルドアップの自由を奪い、高い位置で引っ掛けてショートカウンターを成立させる狙いがあったかと思います。
 そして特に気になったのがボールホルダーのCBによって配置を少しだけ変えていたという点です。

4-2-3-1の守備ブロック(池ヶ谷サイド)

 上図のようにボールホルダーのCBの特徴によって守備ブロックの形を微妙に変えていたように見えました。
 運ぶドリブルに長けた池ヶ谷、狭い局面でも打開する力のある水谷がいる左サイドでボールを保持するとCFの選手はCBに出てきますが、もう1人はアンカーへのコースを抑えに行きます。この守備によってボールサイドは基本的に1vs1の構図になり、前進するのが難しくなります。
 一方これまでの試合を見ても左サイドほどはビルドアップに特長を持たない右サイドに対してはCBからしっかりプレスをかけてプレー選択時間とパスコースを限定してくるプレスでした。
 ここから推測できることは、ライバルチームにビルドアップの特長が分析されてきているということです。素人目に見ても今季のパルセイロのビルドアップは左サイドが多く、攻撃のスイッチが入るのは左サイドが多いように思います。当然、シュタルフ監督が各選手の特長に合わせて左右非対称のタスクを与えているとは思うのですが、ここまで徹底して“左サイド潰し”というより“右サイドへの誘導”をされるとなかなかプレス回避につながらないのではないでしょうか。
 シュタルフチルドレンの1人である船橋が怪我して以降、RSBの整理にやや悩まされていることも想像できますが、これから他のチームが同じような対応を見せた時に割り切ってロングボールのこぼれを拾う形にするのか、選手の特徴を生かしてプレス回避経路を設計するのか、シーズン序盤ですが大きな課題になってきていると感じます。

1列飛ばしで3人目が関わる

 マッチプレビューでも触れたところになりますが、前からプレスにくるアスルクラロ沼津に対して有効な前進をするためにはレイオフが重要になってきます。
 レイオフを簡単に説明すると、「縦(楔)パスを差し込む人」「受け手になる人」「落としをもらう人(3人目の動き)」の3人ユニットによるパス交換です。

レイオフの一例

 レイオフで前進することにより、アスルクラロ沼津のFWラインが背中で消していたはずのアンカーやSBが前向きでプレーすることができます。受けた時点で前向きかつ相手とボールの間に体が入っているので奪われにくくなっています。この試合でもレイオフがうまくいった場面では効果的に前進することができていました。ただ、パスのズレが起こると命取りになるため、監督就任1年目ではありますが、リスクを考慮した配置をいかに早く浸透させられるかが昇格争いに向けた鍵になってきそうです。

【守備】

4-3-3の守備ブロック

 相手のビルドアップに対しては今節も4-3-3の外側迂回強制守備で対抗しました。相手がビルドアップとしてセットする場面は多くありませんでしたが、今節でもこのブロックの効果性は抜群でやりたいようなビルドアップはさせていなかったかと思います。

 ただ、今節気になったところはそこではなく、ネガティブトランジションの場面です。
 パルセイロは4-3-3の4バックと3トップは比較的ポジション重視な立ち位置であり、試合中目まぐるしく変わることはありません。しかし、中盤の3枚は流動的にビルドアップの時にポジションを取ります。その時、中盤の選手がいるべき場所に配置されてはいるのですが、ネガティブトランジションに移行した時に選手の特長に合わない立ち位置にいるとピンチになりやすい印象を受けました。
 中盤のどの位置でも100点満点の役割をこなすことは難しいので、攻撃している時からリスクマネジメントを整え、トランジションの時に中途半端な圧力であったり、立ち位置にならないようにしていく必要があるでしょう。

 前半全体を見てスコアは1点ビハインドでしたが、内容に注目するとそこまで悪くないという印象でした。まさに前節の鹿児島ユナイテッドFC戦のような感じで…。この調子で相手の急所を突き続けることが出来れば、自ずとゴールは割れるだろうと思っていました。

④後半

【攻撃】

 攻守共に基本的には前半からの継続的な形が多く、良くも悪くも試合の流れが変化した66分の交代以降の戦いぶりに注目してまとめていきます。

66分以降の基本システム

 パルセイロの3,4人目の交代が行われた後の基本システムは4-1-2-3のままで、IHのポジションに普段WGで使われることの多い山本と三田を起用しました。シュタルフ監督がインタビューで口にした“最大の攻撃力”というワードですが、文字通り点の取れる選手を前方5枚に配置した形になりました。
 ただ、この交代策があまり効果的に作用していないと感じました。

4-4-2ブロックに対して5-5の分離

 IHにFWタイプの選手を投入したことでメリットとデメリットが明確になりました。
 メリットは5人のうち誰がボックスに入ってもゴールに直結するプレーが得意であるということです。後方から短いパスを繋ぐというよりも宮阪や水谷からのサイドチェンジなどで前線に預けて、前の5枚でシュートまで完結させるという攻撃に関しては鋭さが増した印象を受けました。相手GKのビッグセーブもありましたし、この攻撃でチャンス自体を作れていたことは確かな事実でしょう。
 一方、デメリットはフィールドプレーヤーの10人が5-5の形に分離してしまったことです。メリットで述べたような長い距離のパスから何度も決定機を創出できれば良いのですが、長いボールでくるとわかった状態ではアスルクラロ沼津もリードを保ちたいので4-4-2ブロックの重心を後方に置きます。この状態になるといくら攻撃に特長のある選手を前においても、4-4のブロックを5人で打開する形になるためなかなかゴール前に進入することができません。
 相手のブロックを前に出すためには4-4のブロックの直前や間で相手にとって嫌なプレーをする必要があります。こういったところで特長を発揮するのが東や佐藤、原田といった選手なのですが、今節の66分以降はライン間で相手の脅威になれる選手がおらず、アスルクラロ沼津にとっては割り切った守備がしやすかったかと思います。
 仮に、攻撃的な選手5枚の個人技でこじ開けるのであれば、もっと低い位置から明確にロングボールを入れてゴール前に進入していく方が効果的であったのではないでしょうか。5-5に分離した状況で相手のミドルサードを突破しようとしたため、選手間の距離が遠くなりパスの長さが伸びてしまいました。このことにより相手の2列目のブロックにインターセプトされるような場面も増えていきました。

【守備】

 攻撃の単調化がもたらした守備への負担もあったかと思います。攻撃の項でも述べたようにDFラインからのボールの受取手がおらず、5-5に分離することでインターセプトされた後のショートカウンターの脅威にさらされやすくなりました。
 4-4-2の2列目のブロックに引っかかった場合、ボールより自陣側で守れるパルセイロの選手は5人しかおらず、アスルクラロ沼津のカウンターを急所に受ける場面が多くなります。パルセイロは当然1点を奪うために重心が前がかりになり、余計にアンカー前のスペースを晒すことになります。
 後半途中から投入された住永のSB起用も攻撃面での配球役という意味合いが強く、カウンターに対するフィルターとしては機能不全に陥っていたかと思います。アンカー脇のスペースを埋めるべく、水谷が中央に入り慌てて相手のFWを倒したりする不用意なファウルも配置の歪さに起因するものではないでしょうか。
 得点を奪うために前がかりになり、後方のスペースをカウンターで突かれるという場面はサッカーの事象として珍しくありませんが、今節のパルセイロはアスルクラロ沼津を押し込みきれずに受けるカウンターが多かったため、DFラインの対応も後手を踏んだのではないかと推測します。

まとめ

 信州ダービー2連戦に向けて3連勝しよう、やはりこの認識が無意識にサポーターからも伝播してしまった結果の敗戦かとも感じます。選手たちの奮闘さや監督の采配がどうこうということではなく、何か潜在的な力が働いてしまったようにも思える試合運びでした。文字通り一瞬の隙を突かれて失点、目覚めたかように反転攻勢、交代選手の配置とグループ戦術の不一致、1年目のチーム作りの段階であることを露呈するかのような焦りを感じてしまいました。
 相手が上位であれ下位であれ簡単に勝てる試合は一つもない、ダービー前に認識するのにこれ以上ない良い材料だったと思うので、これを糧に前を見て目の前の試合に勝つことをサポーターの雰囲気も含めて作っていけたらと思います。
 そして、何といっても現状の上位組の勝点を削るという点に関して言えば、松本山雅FC戦が前半戦ラストチャンスです。いわきFC、鹿児島ユナイテッドFC、福島ユナイテッドFCとの対戦は既に1度終えているため、後半戦で逆転できる勝点差に留まるためには勝点3を取り続けるしかありません。次節は早くも第一次昇格争い生存ラインに残るための大事な一戦です。必ず勝点3をホームでつかみとりましょう!

 また、忘れてはならないのが天皇杯県予選決勝です。アスルクラロ沼津戦からの反省を生かし、サポーターとしても“リーグ戦に向けて勢いをつける”というメンタリティではなく、“長野県の代表を掴み取る”という覚悟で応援していきましょう。中3日で厳しい日程なのは相手も同じ、是が非でも負けられない戦いに勝って天皇杯本戦出場を決定しましょう!

 それでは、松本山雅FCvsギラヴァンツ北九州のマッチレビューでお会いしましょう!

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