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作品の感動を言葉にしてみる

かつて一緒に特集番組を制作した若いディレクターに時間を借りて、学生たちとリモート座談会を開きました。
その女性ディレクターは、大学から大学院の六年間映像を学んでから、テレビ業界に入ってきた実力派。
大学時代の話から、業界の話まで、学生たちは真剣に聞き入っていました。

その中で、感性を磨くために普段何をしているか、という質問に対して、彼女はこんな風に答えました。
「番組でも映画でも小説でも美術でも、何かを見る時に漫然と見るのではなく、どこが良かったのか、どう良かったのか、自分ならどうするのか、と分析して、それを言葉にしてみることが大切。ブログでも日記でもSNSでも何でもいいから、言葉にすることで意識化される。その連続が自分の力になる」
その言葉に、我が意を得たり、と私は心の中で手を打っていました。

メディア業界では、アンテナを張り巡らせて感度を磨くことが必要だ、とよく言います。
そのため、とにかく数をたくさん見ることを競う風潮もあります。
しかし、私は漫然と何も考えずに見ていたのでは、何本見ても何十本見ても、感性は磨かれないと思います。
例えば映画を一本見たら、もう一本見るのではなく、同じ時間を使ってその映画についての自分なりの分析を言葉にしてみる。
もっと分析したければ、もう一回同じものを見てもよいかもしれません。
きっと二回目には新たな発見があります。
それをまた言葉にする。
そんな風に見ていく方が、感性が磨かれる気がします。

私は中学生の頃に、「ルパン三世カリオストロの城」について、そのカット割りや音楽の使い方、セリフ回し、キャラ設定などについて、数ページにわたって日記に書きつけた記憶があります。
同じように、「宇宙戦艦ヤマト」と「機動戦士ガンダム」の比較、とか、「うる星やつら」のキャラの分析とか、様々なテーマで書きました。
分析そのものは、今から考えれば幼稚なものだったと思いますが、とにかく気に入った作品を見たら、それについて分析し言語化する。
これは結構効果的な「感性の磨き方」だと思います。

数年前に彼女が新人で入ってきた時に、番組制作について色々と教えた記憶がありますが、数年経って、今度は彼女から貴重なことを教えてもらった気がしました。


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