長本和子

イタリア料理研究家。料理教室「マンマのイタリア食堂」主宰。著書「イタリア野菜のABC」…

長本和子

イタリア料理研究家。料理教室「マンマのイタリア食堂」主宰。著書「イタリア野菜のABC」他。日本ソムリエ協会機関紙sommelier誌に「パスタの方程式」、「イタリア好き」に小説を連載中。 https://www.nagamotokazuko.com/

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  • イタリア食の万華鏡〜1ヶ月ぶんお試し版

    長本和子がマニアックなイタリアの食文化について色々お話しするページです。最初の月に連載したぶんをお試し用として単独マガジンにしました。無料記事3本、イタリア郷土料理のレシピ5つとコラムが5本入っています。気に入った方は定期購読マガジンにお申し込みください。

最近の記事

【ミニ小説】 モデナのランブルスコ蒲萄 〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜

「あんなマザコン男、口もききたくないのよ。お願いだから、もう電話かけてこないように言って」「そんな大切な事、自分で話しなさいよ。貴女たち、奇跡で結ばれたんだから」 確かにルナとカルロの出会いは奇跡としか言いようがなかった。 アルプスのふもとに広がる広大なパダーノ平野はポー河の流れが作った物だ。この河の源をたどればトリノの南西に三角に浮かび上がるモンヴィーゾ山から始まっている。 その頃トリノの醸造大学に留学していたルナは、この孤高の山に心惹かれ友人たちのモンヴィーゾ登山に参

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    • 【ミニ小説】 カラブリアの唐辛子 〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜

      細長い唐辛子、丸唐辛子、小型だけれど飛び上がるほど辛いディアヴォリッキョに粉唐辛子、粗挽き唐辛子。それだけじゃない唐辛子とシラスを漬け込んだ「ロザマリーナ」、豚肉と混ぜで腸詰にした「ンドゥーヤ」、唐辛子オイルの「オリオサント」、唐辛子入りのチーズと・・・あ、「唐辛子ジャム」も忘れちゃいけない。 ナナミのスーツケースから際限なく出てくる唐辛子製品を目の前にして、なんだかくしゃみがでそうになった。 江戸時代から続く唐辛子問屋の娘ナナミ。漢字では七つの味と書く。初めてあった時に、

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      • 【ミニ小説】 アックアラーニャの白トリュフ〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜

        「才能なんてものはね、天から頂いたものなの。技術は努力に努力を重ねれば身につく。その先の話なんだよ」 アックアラーニャの白トリュフ祭りの楽屋でヨースケさんが語ってくれた。 今は世界的アコーディオン奏者となったレオとヨースケさんが会ったのは、共に十代の頃、マルケのカステルフィダルドでだった。こんな小さい街なのにアコーディオン奏者の間では有名で、いくつもの工房があり、そこでは微妙な音を出すために必要なパーツ作りの熟練職人たちが技を競っている所。 母親の勧めで子供のころからアコー

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        • 【ミニ小説】ソラーナの白インゲン豆 〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜

          「散骨してきた」微笑みを浮かべながら、テルミニ駅のホームでタキが言う。その日フィレンツェから到着した特急は満員で、座席指定をとっていても、車内に持ち込むだけで大変な重さのキャリーバッグを引きずっている彼女。「重いでしょう。手伝おうか」「いいえ、持っていたいんだ。迎えに来てくれただけで御の字よ」 タキの母親タエコさんが亡くなって三か月。遺品を整理している時に出てきた箱の中に「ソラーナの白インゲン豆」のラベルが沢山あったことから、今回休暇をとって、その地に行ってみたのだ。病院の

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        【ミニ小説】 モデナのランブルスコ蒲萄 〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜

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        • 【ミニ小説】 カラブリアの唐辛子 〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜

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        • 【ミニ小説】 アックアラーニャの白トリュフ〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜

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          10本
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          【ミニ小説】 ヴェネツィアのトレヴィーゾ 〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜

          狼男にスーパーマン、男装の麗人に女装の……ともかくこの車両は異常だ。ダ・ヴィンチの絵画にあこがれてミナがイタリアに来てから3カ月。トレヴィーゾに来たついでの観光にと乗ったカーニバルへ向かう列車は、もう異次元の世界だった。 前日に見学したヴェネトの特産野菜トレヴィーゾの生産者は、絵に描いたように誠実な生活を営むイタリア人ファミリー。そのファミリーが栽培するトレヴィーゾは「冬の華」と呼ばれる美しい野菜だ。畑で栽培したものがそのまま売れるのではなく、アルプスの雪解け水を引き込んだ

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          【ミニ小説】 ヴェネツィアのトレヴィーゾ 〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜

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          【ミニ小説】 ペルージャのスペルト小麦 〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜

          「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく、山際すこしあかりて~こんな感覚、イタリア人には分からないよな。ああ、日本に帰りたい!」おやおやジョルジョが、また吠えている。そんなに帰りたかったら帰ればいいのに・・・とは思っても、家族はいるし、ギタリストとしての社会的地位も築いたし、今更帰国するなんて無理でしょう。 二十五歳で東京国際ギターコンクールに優勝したジョージは、高額な賞金を得てイタリア留学への道を選んだ。両親から外国でも通用するジョージという名前をもらったが、ここではすぐにジ

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          【ミニ小説】 ペルージャのスペルト小麦 〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜

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          【お知らせ】イタリア食の万華鏡のサイトを移転します。

          フォローをしてくださった皆様へ 「イタリア食の万華鏡」をフォローしてくださり、ありがとうございました。書きたいことはたくさんあるのですが、なかなか背骨になるようなものを見つけられず、時が過ぎてしまいました。大変申し訳なく思っております。 そこで「イタリア食の万華鏡」を日本イタリア料理協会のホームページ内にあるCUCINA ACCIに移動することにいたしました。こちらは無料でごらんいただけ、月4回のアップになっています。なので、9月いっぱいでこのページを閉じたいと思っています

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          ニョッキの歴史を見るには

          イタリア料理を知るために、よく語源辞典を広げます。手持ちの物は二冊。なぜかと言うと編者によっていつの時代を語源とするかが違うからです。 そこで調べたニョッキの語源。 一冊には・・・①「ヴェネツィア方言のGnoccaから出ていて、ロンゴバルド(6~8世紀に北イタリアに侵略したゲルマン系民族。ロンバルディア州の語源となった)語のknohhaから出ている。意味は「指の関節」。もう一冊には、②「ナポリ方言のGnoccola,およびシチリア方言のGnoccula、遡るとラテン語のN

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          青トマトが手に入りました

          「澁谷農場から青トマトをいただきました〜まずはピクルス」 この季節になると、澁谷農園から色々と頂き物があります。一番嬉しいのが、青トマト。熟した物はスーパーで手に入りますが、青トマトは特別のルートがなくては手に入りません。 いただいたのは4キロほど。大きめのものは青トマトジャムにし、小さいものはピクルスにしました。 まず、青トマトのピクルスの作り方をお知らせしましょう。

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          【レシピ動画付き】緑(ほうれん草)のラザーニャの作り方

          パスタ料理の中でも最も手のかかった一品です。生地にホウレン草を練り込んで、ベシャメルソースとミートソースと重ね、それをオーブンで焼きます。これはエミリア-ロマーニャの家族中が集まる日曜日の食卓の定番。作ったマンマの得意そうな顔が浮かびます。 ↓レシピ↓ 緑のラザーニャ(ボローニャのスペチャリタ) Lasagna verde ラザーニャ ヴェルデ 材料 パスタ用 小麦粉・200g ほうれん草・150g 卵・2個 スーゴ用 豚挽き肉・100g 牛挽き肉・100g

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          【レシピ動画付き】ジャガイモとドゥーロ小麦のカヴァティエッレ 豚肉のラグー

          南イタリア全域にあるパスタです。本来はドューラム小麦と水で作るパスタですが、これは小麦の収穫が少ないモリーゼ州の料理。おそらく小麦の節約のためにジャガイモを練り込んだのでしょう。そのためかえって個性的な食感になりました。 ↓レシピ↓ カヴァティエッレ 豚肉のラグー Cavatielle al ragu di maiale カヴァティエッレ アル ラグー ディ マイアーレ 材料:4人分 (カヴァティエッレ) ジャガイモ・400g ドゥーロ小麦・150g 塩・少々

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          【レシピ動画付き】カラブリアのお菓子 ピッタンキューサの作り方

          花の形をしたかわいらしい焼き菓子です。ピッタはピッツァの語源となったパンの事。インキューサは閉じ込められたという意味です。型の中にぎっしりと詰めて焼いてください。一つずつパリッとはがして食べるのが楽しいドルチェです。 ↓レシピ↓ ピッタンキューサ Pitta‘n chiusa 材料 生地 セモリナ粉・300g 卵・1個 リキュール・適宜 オリーヴ油・適宜 ベーキングパウダー・適宜 詰め物 刻んだクルミまたはピスタチオ・40g アーモンド・

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          【 レシピ 】 古代ローマの焼き豚

          豚肉は古代ローマ時代の肉。他にも羊を食べてもいましたが、こちらはミルクをとってチーズにするのが目的なので、肉の主流ではありません。その豚肉の骨付きロースを、ガルムと香草に浸けてオーブンで焼いたもの。まさにチャーシューです。 料理名は「オスティア風豚肉のロースト」オスティアはローマから空港のあるフィウミチーノに行ったあたりで、テーヴェレ川の加工です。古代ローマは地中海各地から膨大な量の輸入をしていて、この港に陸揚げしたのです。ここの遺跡に行ってみると往時どれほど栄えていたかが

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          【 レシピ 】 シチリアの庶民のごちそう~茄子のティンバッロ

          ティンバッロはティンパニーという意味。貴族料理の代表格です。それを庶民が真似たのが、この「茄子のティンバッロ」です。貴族の物は生ハムやパイ時期で包んだ、贅沢で技術を必要とするもの。 しかしそれを横目で見ながら、あきらめるようなシチリア人ではありません。生ハムが使えなければ、簡単に手にはいるナスにしてしまおうと作ったのが、このシチリア名物茄子のティンバッロ。 ちょっと手がかかりますが、パーティーのテーブルに持って行くと、拍手が起こります。 ケーキのように切り分けてください。

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          【 レシピ 】 シチリアの庶民のごちそう~茄子のティンバッロ

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          【 レシピ 】 ご先祖はローマ~ご馳走クレスペッレ(クレープ)

          クレスペッレはイタリア語のクレープの事。語源はラテン語のcrispus(縮れた)から出ていると言います。 5世紀にはすでにイタリアで作られていたといわれ、こんなエピソードが残っています―フランスの巡礼がバチカンにたどり着いた時に疲れ果てお腹を空かせていたので、時のローマ法王ジェラースィオ1世(在位492~496)が哀れに思い、クレスペッレをふるまった。その作り方を巡礼たちがフランスに持ち帰えった―。その後フランスでは、特にドルチェとして発展していきます。 一方イタリアで

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          【 レシピ 】 古代ローマ時代にプリンがあったって知っていましたか?

          ここ数カ月古代ローマの食を調べています。探っているとびっくりするようなものが出てくるのです。その一つが「プリン」! 出典は古代ローマ時代のアピキウスの料理書「De re coquinaria」 この本は10章に分かれていて、以下のように章ごとにテーマが決まっています。 第一章 勤勉なる料理人 第二章 挽肉 第三章 野菜類 第四章 種々の料理 第五章 豆類 第六章 鳥類 第七章 王の食材 第八章 四つ足動物 第九章 貝・甲殻類 第十章 魚介類 プリン載っているのは第七章

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