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【ミニ小説】 モデナのランブルスコ蒲萄 〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜
「あんなマザコン男、口もききたくないのよ。お願いだから、もう電話かけてこないように言って」「そんな大切な事、自分で話しなさいよ。貴女たち、奇跡で結ばれたんだから」 確かにルナとカルロの出会いは奇跡としか言いようがなかった。 アルプスのふもとに広がる広大なパダーノ平野はポー河の流れが作った物だ。この河の源をたどればトリノの南西に三角に浮かび上がるモンヴィーゾ山から始まっている。 その頃トリノの醸造大学に留学していたルナは、この孤高の山に心惹かれ友人たちのモンヴィーゾ登山に参
【ミニ小説】 アックアラーニャの白トリュフ〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜
「才能なんてものはね、天から頂いたものなの。技術は努力に努力を重ねれば身につく。その先の話なんだよ」 アックアラーニャの白トリュフ祭りの楽屋でヨースケさんが語ってくれた。 今は世界的アコーディオン奏者となったレオとヨースケさんが会ったのは、共に十代の頃、マルケのカステルフィダルドでだった。こんな小さい街なのにアコーディオン奏者の間では有名で、いくつもの工房があり、そこでは微妙な音を出すために必要なパーツ作りの熟練職人たちが技を競っている所。 母親の勧めで子供のころからアコー
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【ミニ小説】 ヴェネツィアのトレヴィーゾ 〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜
狼男にスーパーマン、男装の麗人に女装の……ともかくこの車両は異常だ。ダ・ヴィンチの絵画にあこがれてミナがイタリアに来てから3カ月。トレヴィーゾに来たついでの観光にと乗ったカーニバルへ向かう列車は、もう異次元の世界だった。 前日に見学したヴェネトの特産野菜トレヴィーゾの生産者は、絵に描いたように誠実な生活を営むイタリア人ファミリー。そのファミリーが栽培するトレヴィーゾは「冬の華」と呼ばれる美しい野菜だ。畑で栽培したものがそのまま売れるのではなく、アルプスの雪解け水を引き込んだ
¥1,000【ミニ小説】 ペルージャのスペルト小麦 〜Racconti italiani イタリアのほんの小さな出来事〜
「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく、山際すこしあかりて~こんな感覚、イタリア人には分からないよな。ああ、日本に帰りたい!」おやおやジョルジョが、また吠えている。そんなに帰りたかったら帰ればいいのに・・・とは思っても、家族はいるし、ギタリストとしての社会的地位も築いたし、今更帰国するなんて無理でしょう。 二十五歳で東京国際ギターコンクールに優勝したジョージは、高額な賞金を得てイタリア留学への道を選んだ。両親から外国でも通用するジョージという名前をもらったが、ここではすぐにジ
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