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カント先生の散歩 池内 紀

前に読んだルソーの本のように、哲学の本を読むときには、先にその人の時代背景や人となりなどのバックボーンを知りたいと思っています。

今回はカントの本を読むために、カント自身について書かれた本を読んでみたいと思っていたら最良の本に出会いました。

生い立ちから体格や風貌、出世についての意欲や遅咲きの貧しい暮らし、日々の生活や召使との関係、住まいや町並み、世界情勢とそれらの情報との距離感、施策の源泉や財務、食事の趣味や友人との会話、部屋の風景や大学教授としての講義の時間割や大学教授という職の当時の社会的立場、そして晩年の老いの苦しみなど、様々な情報が詰め込まれています。実にマニアック。

いずれ国際連合の本になり、日本国憲第九条の基本ともなった冊子「永遠平和のために」を書いた高名な哲学者は、宗教や戦争、革命など人権についての転換期に、こんなに遅咲きで苦労し、辺境の今はなき「東プロシア」という国を一度も出ることなく一生を終えたそうです。

同年代に生きたルソーを尊敬していたことも初めて知り(部屋に唯一ルソーの肖像のみかけられていたそう)、今後ルソーの社会契約論と、カントの政治学、純粋理性批判をそれぞれ読もうと思っていたので、その面でも洞察が深まりそうです。

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