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059:笹塚の先輩

・自分には尊敬してやまない親愛なる先輩がいる。年は一つ上だ。
・出会ったのは大学時代の京都だが、社会人になってから彼は東京の笹塚に住んでいたので、よく遊びに行った。
・現在彼は京都に戻っている。2年前に転職して東京から去ってしまった。

・彼の感性がとても好きだった。

***

・大学時代、京都の西陣に住んでいた彼の下宿先にはデカ・本棚があり、壁にはライブハウスばりに大量のフライヤーが貼ってあった。
・およそ彼と出会うまでの自分に趣味と呼べるものはニコニコ動画くらいしかなかったが、彼のその宇宙よりも広い感性の引き出しにはニコニコ動画も入っていたようで、過去の面白い動画やVOCALOIDの話題にも気さくに乗ってくれた。

・文学研究会に入っているという彼は書物に関してはもちろんのこと、メインストリームな文化からサブカルチャーまで幅広く精通していた。
・彼のおすすめしてくれるコンテンツは自分にとって新鮮であり、かつハマってしまうものばかりであった。

・彼と出会って、自分は今聴く音楽の楽しさを知った。
・彼と出会って、自分は今観る映画の面白さを感じ取った。
・彼と出会って、自分は今読む本の奥深さを味わった。

・社会人になってから上京した彼を追いかけるように、自分も就職時には東京へ赴いた。
・とにかく彼と話すのが楽しかった。
・同じものを似たような感性で語り合うのが、とても楽しかった。

・東京に来てからは、おそらく普通に考えたら迷惑だろと思われるほど頻繁に彼の住む笹塚へお邪魔しに行っていた。
・一緒にアニメを観たり、このMV良いですよねと音楽を共有したり、映画の感想を語り合ったりと、自分にとってはとても楽しい時間を過ごしていた。
・明け方まで起き、「モーニングには行こう」と目覚ましを設定するものの起きることに失敗して、夕方まで寝ているというのがいつものことだった。

・気づけば自分は彼からおすすめされるだけでなく、自分でそのようなコンテンツを漁るようになっていた。
・最初は彼と共有したくて漁っていたはずだが、今はただ一人で楽しんでいるものも多い。

・彼が東京を去った時は、京都へ戻るというので安心感はありつつも(自分も将来京都へ戻るつもりだ)、大きな喪失感もあったことをいまだに強く覚えている。

***

・彼から受けた恩はとても大きい。自分の人生の楽しみを何倍にもしてくれた。
・笹塚のことを思い起こすと、いつも同時に哀愁に襲われる。郷愁めいたものを感じる。
・夜中一人で音楽を聴いていると、笹塚で彼と過ごした夜を思い出す。

・自分が京都に戻ったら、また迷惑だろと言われるくらい遊びに行きたい。

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