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3 対等な関係

岸見一郎さんの『嫌われる勇気』と『幸せになる勇気』を参考に、アドラー心理学を生かして教師としての在り方を見直そうとするためのnoteです。

前回は目的論とライフスタイルという視点から教師の在り方をみる記事を書きました。

今回は僕が子どもたちと接する上で大切にしている”対等な関係”について書いてみようと思います。

劣等コンプレックスと優越コンプレックス

対等な関係について述べるにあたって、この劣等コンプレックスと優越コンプレックスについて簡単に触れておく必要があります。

ネガティブな感情として使われがちな劣等感ですが、必ずしもネガティブなものではなく、劣等感を健全な方向へと向かわせることができる場合、例えば「まだまだ授業が上手くないから本を読む」といった時には、劣等感を自己成長へと生かすことができているので、よい働きをするものとして捉えることができます。しかし、そこで勇気をくじかれてしまい、結局自分は授業が下手だから教師としての資質がないのだと、根拠のない結びつけをしてしまった場合には、劣等感がよくない方向に働いている劣等コンプレックスに陥っているということになります。

また、劣等感を抱き続けることがしんどくなり、過去の栄光にしがみついて誇示してしまう場合、例えば「以前にに雑誌の記事を書いたことがあり、それを常々語ってしまう」などの時には、劣等コンプレックスとは反対のよくない方向に劣等感を働かせている状況、つまり優越コンプレックスに陥ってしまっているということになります。この劣等コンプレックスも優越コンプレックスもどちらも劣等感を上手く飼い慣らせずに、よくない状況に陥ってしまっているという理解になります。

不要な他者との比較

劣等コンプレックスや優越コンプレックスに陥る原因の一つに他者との比較があります。年齢、性格、職業、趣味、知識の量など、人はそれぞれ違っています。これらの違いは優劣を表すものではありませんが、他者との比較をしてしまう人はこれらを比較の観点として用いてしまい、不要な劣等感を抱いてしまいます。

これは教師と子どもの関係においても同様で、教師は子どもたちの成長を支える存在であるというただそれだけで、教師に優越性を認めることはできません。もちろんのことですが、子ども同士にも優劣はなく対等な存在です。教員間に役職や経験の差はありますが、それは優劣を表すものではありませんし、それによって劣等感を感じる必要はないのです。しかし人は往々にして他者と比較をしてしまう。子どもの視点でみると、「◯◯さんは、〜できるのに私は〜できない。」という具合であり、教師の視点でみると、「◯◯先生のクラスは〜なのに、自分のクラスは〜ではない。」や「◯◯先生は〜主任を任されているのに、自分は役職がない。」などという具合になります。これは不必要な他者との比較によって、先述した劣等コンプレックスに陥っていて、健全な状態ではないと言えます

比較の対象にすべきなのは理想とする自分の姿であり、「こうなりたい」という理想と自分の現在地を比較して、劣等感をプラスの方向へと働かせることが必要なのです。繰り返しますが、他者との比較や競争はせず、「こんな教師になりたいから、今はこれに取り組もう。」と理想の自分との比較が健全な状態で行われた時に、劣等感を上手く生かすことができていることになるのです。

対等な関係

他者と比較するということは、他者を競争相手すなわちライバルとみなすということになります。この競争原理に沿って生きると人生では常に他者と競争することになり、勝敗にビクビクしながら生きていくことになります。その競争原理を捨てて、他者を共に生きる対等な関係の仲間であると思えた時、社会と調和して生きるというアドラー心理学における目標を達成することに向かうのです。

学校に当てはめるのであれば、まずは同じ学校に勤める教職員は対等な関係であり、より良い教育を目指す仲間であると認識します。そしてそのような仲間と共につくる学校に通う子どもたちも教職員と対等な関係で、学校で共に成長していく仲間であると考えるのです。教える教えられる、与える与えられるという優劣のある関係性ではなく、共に学校をつくる対等な関係の仲間であるという意識で関わるようにすると、教室や学校は安心して過ごすことができる空間へと変わっていくのです。もちろん教師は子どもたちの成長を支える存在であるので、時には教え導くことも必要です。ただそこに優劣のある関係ではなく、対等な関係として結ばれた中で接することを意識するだけで関係性は変わっていくことでしょう。

アドラー心理学とは他者を変えるための心理学ではなく、自分が変わるための心理学です。

子どもを変えようとするのではなく、自分の教育観や関わり方を見直して、自分を変えることによって状況を変えていきます。

https://note.com/nagaken/n/nfb48d21b150c

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