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勝手に”敵”を作りすぎてツラかったはなし

まだ音楽を始めたばかりの頃の話です。
福岡という土地は割と音楽が盛んな地域ですので、若くて可愛くて歌も演奏も上手いミュージシャンが結構います。
そういう人たちを、私は敵視していました。
いや、そういう人じゃない人さえも、敵視していたと思います。
私は音楽活動を始めたのも遅いし、学校で何かを習ったわけでもないし、技術もそんなにないし、可愛くもないので、妬みですよね、お恥ずかしい。

特に、同世代で活躍している人なんかは「負けてなるものか」と思ったし、若い人なんかは「彼氏に止められて辞めてしまえばいい」なんて思った時期もあります。
(嫌な奴)
でも、思ったところで、多少練習の糧にはなるものの、それ以上にしんどい事の方が多かった気がします。
勝手に敵視している人のライブ告知は見たくなかったし、「たくさん来てくれてありがとう!!」なんて写真付きでライブの報告を上げているのはもっと見たくなかったし、迂闊にも「いい曲だな」なんて思いたくなかったからあまり曲を聴こうともしなかったし、繰り返しますが本当に嫌な奴でした。
それで自己嫌悪に陥ることも何度もありました。
(何もプラスになってない……)

これをお読みの方で、福岡にお住まいで、インディーズのライブシーンに詳しい方ならご存知かと思うのですが、お客さんの数って、ちょっと少ないんですよね。
何に対してか、って、ライブができる施設の数に対してです。
ライブハウスやライブバー、カフェ、レンタルスペースなど、たくさんの場所でライブは開催されています。
(今は自粛ムードだからそうでもないところも多いかもしれないけど)
だけど、そこが毎回パンパンに埋まるほど、インディーズのアーティストを聞きに来るお客さんが存在するか、と言われると、NOなんですよね。
もしかしたら、これは福岡だけではないかもしれないけど。

もちろん、いつもパンパンにお客さんを入れられる人気の方もいますが、割とフロアに余裕のある状態で演奏しているアーティストの方が多いと思います。
また、お客さんも、特定のアーティストのみを見に行く人ばかりではなく、好きなアーティストが何組もいて、みんな同じように応援してくれるお客さんが結構います。
(そしてそういう方々に支えてもらっているシーンでもあります)

もし、ライブ日程が被ると、どちらかしか来てもらえないんですよね、体は一つしかありませんから。
そういう状況だなっていうのが身をもってわかって来た時に、どうしてもそこに競り勝たなければ!みたいな気持ちになってしまったんだと思います。
(同じ日にするなよ!と思うかもしれませんが、自分だけで決められる訳ではないので、意外といつもどこかで誰かと被ってしまうんです)

でもある時ふと思ったんですよね、なんだかスケールの小さい話をしてしまっているな、と。
福岡というエリアに限定して考えれば、私のように鍵盤弾き語りでやっている同世代の女性は数えていけるくらいの人数かもしれないけど、日本全国で考えたらどのくらいの人がいるんでしょうか。
全然、見当がつきません。
しかも、そういう全国のアーティストを知りつつも、タイミングが合う時には福岡まで足を伸ばして聴きに来てくれる方もいて、逆に「え?私?」とすら思ってしまうんですよね。

あと、よくよく考えてみれば、お客さんを取り合う状況というのは、取り合う相手が悪いんじゃなくて、お客さんになってくれる層が少ないっていうのが問題なんですよね、きっと。
元々音楽好きかどうかっていうのも大事だと思うんですけど、そうではなくてもライブに行くきっかけはいろんなところにあると思っています。
友達に誘われて、とか、職場の同僚だから、とか、常連の店でイベントをしていたから、とか、路上でたまたま聴いたから、とか。
そうやってせっかく来てくれた方に、最初の1回に、「いいな」と思ってもらえるような演奏や振る舞いをすることが、やっぱり大事なんじゃないかな、と思いました。
それまで大事にしてこなかったわけではないけど。

だから敵視すべきは同業者ではなくて、路上をしている時に「やめちまえ!」と言いながらマイクスタンドを蹴って来る人の方なんですよね。

残念ながら今は、楽器を背負って電車に乗っているだけで、悪者扱いされる世の中になっているみたいで、とても悲しいです。
そういう思いをしながら、周りに反対なんかもされながら、でも一生懸命に音楽を作って、歌って、演奏して、それが誰かの支えになればいいなと思って頑張っている人を、苦しめないで欲しいんです。

ちょっと話が逸れてしまいましたが、とにかくそうやって敵視していたものが実は敵じゃないと気づいてから、少し楽しくなりました。
心に沁みる良い曲というのは周りにも溢れているし、そういう人たちと実際に会って、一緒に演奏できたりするのは、本当に嬉しいことです。
ここまで書いてようやく、”ライバル”というのはお互いに高め合っていける存在なんだな、なんて思いました。

今日は旦那がライブなのですが、実は行っていません。
体調が悪すぎて家でお休みしています。
旦那の作る曲が私は好きすぎて、「お、お金を払うから、家でライブをしてくれ!」と懇願するくらいなのですが……
そのうちYouTubeを載せますね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!