永池マツコ

映画紹介ポッドキャスト「日々シネマチック」やってます。時折、コミュニティFMさんやポッ…

永池マツコ

映画紹介ポッドキャスト「日々シネマチック」やってます。時折、コミュニティFMさんやポッドキャストにも出没。 日々のことを気の向くままに書いて行けたら。

最近の記事

拝啓、チバユウスケ様

あなたがこの世界から居なくなったと知り、驚いています。あなたはお若いでしょう、この世界で音楽を奏でてくださることが、まだまだ続くと思っていました。それが当たり前だと思っていました。 昨日は、実感が沸かぬままひとり会議室で「暴かれた世界」を聞きました。多くの人が「世界の終わり」を聞いていると思いますが、私はなぜかこの曲を選んでいました。 あなたはとてもロックンロールで、甘くロマンチックで、私の青春でした。 最初の出会いは、某国ロシアのタトゥー事変。翌日にはあなたがたの話題

    • 「推し燃ゆ」の影響で私も推しのことを書きたくなった

      先日野外フェスに行き、心が動いたことがあったので書き留める。ただの気持ちのメモ書き。忘れたくないので記録するのと、書くことで自分の価値観を見つめたいと思っているから。 小説「なつをとめ」の更新は、ちょっと待ってね。 私には、最近熱狂している推しがいる。複数人メンバーがいて、私の推しはその中の数人。中でも特に好きな人、新町さん(仮名)について書きたい。 私は本グループの存在はうすうす知っていた。このジャンルの音楽は元々好きで、YouTubeで楽曲PVをみてわあ恰好いいと思っ

      • 短編小説「なつをとめ」②

        店から彼女の家までは思ったほど遠くはなかった。店がある商店街を通り抜けた先の、坂を登った閑静な住宅街にその家はあった。大きな門、3階建てのモダン建築の2階、3階部分には大きなガラス窓がはめ込まれ、この街の景色を一望できる。庭には美しい花々が咲き、きちんと剪定された緑が瑞々しく茂っていた。 チャイムを鳴らし、店名を名乗る。どうぞというスピーカーからの声とともに門が開く。僕は門を抜け玄関に辿り着き再度チャイムを鳴らした。今度ははーい、という声とともにガチャリとドアが開いた。声色

        • 短編小説「なつをとめ」①

          正直、彼女のことを僕はよく知らない。何をしている人で、出身はどこで、どんな経歴があって、家族は他にいるのかとか。誕生日と名前、住所は知っているが、基本情報はそのくらいしか思い当たらない。しかしそれらも本当のことではないのかも知れない、と思う時がある。では僕は、一体彼女の何を知っているのだろう。猫が甘える時のように柔らかくのびる甘い声や、ゆったりとした独特のリズムで喋ること。白い肌、口元のほくろ、そう言えば左肩の後ろにもほくろがある。丁寧にまとめられた黒い髪、存在感はあるのに意

        拝啓、チバユウスケ様

          煌めく瞬間にとらわれて(THE FIRST SLAM DUNKのキャスト発表で泣いた話)

          自分でもびっくりしたけど涙が 今日、映画『THE FIRST SLAM DUNK』の声優、主題歌、予告情報が解禁となった。メインキャラクターの声優陣が一新されたという内容に、誰もが驚きを隠せなかったに違いない。私は今、涙を浮かべながらこの記事を書いている。 正直なところ、私はSLAM DUNKの「熱心な愛好家」ではないと思う。漫画やDVDも持っていないし、内容も朧気な部分がある。そんな身分の者がこんなブログを書いては、熱心な愛好家の皆様からお叱りを受けるのではないかと少し

          煌めく瞬間にとらわれて(THE FIRST SLAM DUNKのキャスト発表で泣いた話)

          映画「ドライブ・マイ・カー」は自分自身と向き合うこと

          「自分と向き合うこと」がこの映画の1つのゴールだと思う。ドライブ・マイ・カー(自分の車を運転する)とは、自分の人生を自分で生きる(運転する)というメタファーなのではないか。(椎名林檎もニュアンスは違うが「走れわナンバー」にて、借り物の身体をどこへ運転するのかという趣旨のことを歌っている) 家福(西島秀俊)は自分の車を渡利(三浦透子)に運転してもらうが、それは「時には人生を他人に委ねて、休みつつ客観的に見てはどうか」という意味なのだと思う。一方で家福の車を運転していた渡利は、

          映画「ドライブ・マイ・カー」は自分自身と向き合うこと

          東京という街

          私は、西方面から東京駅に滑り込む時の、あの瞬間に新幹線から見える景色が好きだ。速度をゆっくりと落としながら、そびえ立つ高層ビルの合間を縫って進んでいく。建造物高さ規制のある京都で育ったからであろう、見上げるような高いビルは「知らない都会に来た」感をいっそう強く印象付け、そのダイナミックさにいつも心を躍らされる。夜はより一段と素敵だ。高層ビルの明かりがまだ煌煌と灯っていて、キラキラと街を彩る様に心を奪われ、何故か何かが始まる予感にワクワクする。映画「プラダを着た悪魔」で主人公の

          東京という街

          あなたの為に、丁寧に。

          私のよくいくお気に入りのカフェは、ホットサンドが美味しい。具は、卵とハムとキャベツ、チーズ、少しのマヨネーズと粒マスタード。いたってシンプルなホットサンドだ。しかし何よりも「あなただけの為に作りました」という気持と丁寧さがじんわりとにじみ出ていて、その気持ちがまるで温泉のように、お腹を暖かく満たしてくれるところが一番気に入っている。こういう気持ちを表現してくれるお店は、意外と沢山はないように思う。 最近見つけた別のカフェでは、テーブルの真ん中に生花が活けてあった。黄色くて大

          あなたの為に、丁寧に。

          腹を割って話す飲み会という名の都市伝説

          皆さんはこんな都市伝説をご存知だろうか?ニポンという東洋の国で働く人々は、仕事終わりの飲み会で切腹し、それを見物しながら話を弾ませる… と言うのは大嘘で、本日は本音を打ち明けあうという意味の「腹を割って話す飲み会」という都市伝説について話をしよう。  古くから「飲み会」は日本においては強力なコミュニケーション手段として捉えられ、その強さは「飲み二ケーション」との二つ名を持つほどだ。そこでは業務時間内では話せない腹の底を、お酒の力を借りながらリラックスした雰囲気で打ち明けあ

          腹を割って話す飲み会という名の都市伝説

          映画『夕霧花園』の感想と、作中での日本の描かれ方

          「海外作品での日本人のポジションってどうなってるのか、と気になる話です」  そうコメント頂いたのは、私が「夕霧花園」という映画の感想を述べた時だった。はて、どういう角度から話せばよいものかと考え込むうちに短文では収まりそうになかったので、この場を借りてつらつらと書き綴っていきたいと思う。 映画「夕霧花園」について  マレーシアの小説「夕霧花園」が原作である。台湾のトム・リン監督がメガホンをとり、主演は香港や台湾などで活躍するマレーシア人女優の李心潔/アンジェリカ・リー、日

          映画『夕霧花園』の感想と、作中での日本の描かれ方

          愛をこめて花束を

          高校生の時、花束を貰ったことがある。 花束と言っても、赤いバラ一輪に小さな花が数本添えられた気軽なものだ。スーパーで298か398くらいで売ってそうなもの。おそらく向かいに住んでいた女の子がくれたのだと思う。 その日、いつもの様にいつもの道を通って、私は学校から帰っていた。帰り道には今はもう潰れてしまったスーパーがあって、裏手の道をぼんやり歩いていた。 すると後ろからパタパタと足音が聞こえて、向かいに住む女の子が「ばあ!」と脅かすように私を覗き込んだ。「あら、こんにちは

          愛をこめて花束を

          これぞジャーナリズムだ!と言うつもりはない 映画『コレクティブ 国家の嘘』を観て

          偶然にも2021/10/2公開初日に観ることになった。マイペースな私にしては珍しい。最近、身の回りの色んな事がきっかけで医療に関心があって、今読んでる本にジャーナリズムがテーマのものがある。私の両方のアンテナにひっかかるタイムリーな作品なので、思い立ったが吉日、劇場に足を運んだ。 本作品を簡単に紹介するならこんな感じだ。 ・ルーマニアの医療と政治とジャーナリズムへの密着 ・淡々とすすんでいく手法が永池マツコ的魅力ポイント あらすじ ルーマニア、ブカレストのライブハウス「コ

          これぞジャーナリズムだ!と言うつもりはない 映画『コレクティブ 国家の嘘』を観て

          艶女は不滅なり? 雑誌NIKITAの考察

          艶女 さて、何と読むでしょうか。 正解は アデージョ でした。正解したあなたには、10マツコポイントをプレゼント。2兆ポイント貯めて、100円と交換してください。という冗談はどうでもよくて、さてはあなた、雑誌NIKITAをご存知ですね? 2004年、かの有名なちょい不良(ワル)オヤジの教科書「LEON」とともに華々しく創刊された女性ファッション誌「NIKITA」。30代女性の肉食性を前面に押し出し、「モテ」や「SEXY」にこだわったリッチでゴージャスで相当眩しい雑誌

          艶女は不滅なり? 雑誌NIKITAの考察

          何度も何度も同じ

          またルックバックを読んだ。今までに無いほどに胸がいっぱいになり、ぼろぼろ泣いてしまった。拭っても拭っても涙が止まらなかった。単行本を買ってよかった、こうして何度も何度も感動を味わうことができると思った矢先、こんなやりとりを思い出した。 「永池さんって、何度も同じ作品を見るの。へえ、わかんないな。」 昔、飲み会で上司に言われた一言だ。とある映画の話をしていて、私が「何度も見た。それくらい見ごたえのある素晴らしい作品だった」と力説していた時に、本当に不思議そうな顔をして言われ

          何度も何度も同じ

          五感で選べ

          ネット注文して、楽しみにしていた本が届いた。最近お気に入りのエッセイストさんの本で、タイトルもワクワクするものだった。これは絶対に読まなくては、今の私に必要なものだ!と確信をもってカートに入れたはずだった。 届いて、すぐに開封し、ページに目を通したら、違った。 これは今の私が欲しているものではないと、直感的に思ってしまった。 今の私は、その人が渾身の力を込めて綴った文章を欲していたのだ。人の内にあるモヤモヤとした形のない気持ちや考えを表す、太陽の日差しも届かない所まで深

          五感で選べ

          絶対に勝つという強い気持ち

          今日は、皆さんに訊きたいことがある。 「絶対に勝つ」という強い気持ちをもったことがあるかどうか。 私はない。勝利への執念がまるでないことに最近気が付いた。いや、うすうす気が付いていて再確認させられたというべきか。オリンピックで活躍するアスリートたちを見ていて感じたことだ。 東京2020に対する思いは人それぞれいろいろあると思うがそれはいったん置いておいて、競技にフォーカスをあてて話をしよう。私は、横目でちらっとだが、男子100mやリレー、卓球、バスケ、3on3、バドミン

          絶対に勝つという強い気持ち