平和の祭╱ヴェトナム寺参拝記
去る5月22日、神奈川県愛甲郡にあるChùa Việt Nam (ヴェトナム・パゴダ)に於いて、日本在住インド人仏教徒の非営利団体:アンベードカル博士国際教育協会 (B.A.I.A.E.) 主催による『ブッダ・プールニマ(灌仏会╱花祭り)』が開催されました。
花祭りといえば、日本ではグレゴリオ歴の4月8日に固定されていますが、アジアの仏教圏では太陰暦で行われるのが一般的です。この日は、御住持のヴェトナム僧と尼僧のおはからいで、近隣在住のヴェトナム人や日本人諸氏の随喜を賜り、盛大かつ華やかにお勤めすることが出来ました。
ヴェトナムの仏教は、歴史的に中国から支配を受けていた関係上、中華思想の影響を少なからず受けているようです。基本的に朝鮮半島や日本と同じく大乗仏教であり、加えて儒教や道教なども混入し、また宋代以降の中国仏教と同様、臨済禅と浄土教を合わせた「念仏禅」的な特徴があります。
「皆さんが唱える『ジャイビーム』とはどういう意味ですか?」
ヴェトナムの仏教界ではアンベードカル博士の功績についてあまり知られていないようで、寺僧から尋ねられました。美しい発音の英語に恐縮しつつ、
〝Victory to us (我らに勝利あれ)〟
そう御説明申し上げると、静かにたなごころを合わせて、頷いてくださいました。
御斎(おとき)は、ヴェトナム仏教の精進料理。日本で入手できる食材を駆使して作ってくださいました。基本はあっさり系ですが、油断してると予期せぬ方向から青唐辛子が…!
食後の休憩をはさんで、女の子によるダンス奉演。ところで、日本の一部ではいまだに〝インド映画は急に踊り出す〟などと言われてるようですが、古くから日本に伝わる漢訳仏典には「歓喜踊躍 (嬉しい気持ちをダンスで表現する)」と、インド人の習慣をもとに記されているのです。
いつもは一般の主婦として「しま◯ら」ファッションのインド女性たちも、ブッダ降誕を祝うこの日は、百花繚乱の最盛装で集いました。あえて申しますが、現代の仏教徒たちは祖父母の代まで(!)ヒンドゥー教社会で〝ひと〟として認められていなかったのです。ブッダが説いた人間平等、アンベードカル博士が指揮した仏教復興は、彼ら彼女らにとって生命の讃歌、人間宣言に他ならないのです。
── ヴェトナム。
その名を聞いて、私の世代が最初に思い浮かぶのは、陰惨な戦争です。
イデオロギーの名を借りた覇権主義と大国同士のエゴが、アジアの仏教国を地獄に変えたのです。そして今、再びこの世界に戦争が起こっています。戦争に勝者はいません。屍の山に座して悦に入る、愚者がいるだけです。
ヒンディー語には、こんな語呂合わせがあります。
「युद्ध या बुद्ध (ユッダ・ヤー・ブッダ╱戦争か智恵か)」
ブッダの智恵は慈悲と相即不離です。つまり、無慈悲の極みたる戦争は、無知の極みでもあるのです。
《Wikipedia:ベトナム戦争》画像をCLICK。
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