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【俳句20句】ほたるぶくろ~劇場版「夏目友人帳 うつせみに結ぶ」に寄せて

ほたるぶくろ

柏柳明子


 「名を返そう」記憶涼しく揺らめいて
片蔭にふはり気弱な妖(あやかし)よ
さるすべり溢れ知らない祖母のこと
夏座蒲団どこ吹く風の用心棒
滝壺へ運命落つる迅さかな
高貴な妖サイダーを所望する
朝焼に禁断の実のまるまると
三体に分かれ先生の炎昼
猫追へばアリスのごとし夏夕べ
「君は誰」短夜を目覚めてひとり
自転車の苦手な息子雲の峰
告白の低く始まるねむの花
母と子のほたるぶくろの時間かな
微笑みの揺れてレースカーテン揺れて
蟬声のもつとも強き木の洞へ
「レイコさん、うつせみ幾つ拾つたの」
さよならの光はじけし鱗雲
夜の秋家族の距離に馴染みつつ
八月の切り絵に透ける記憶かな
竜胆の濡れてしづかな羽の音



【御礼とお断り】
お読みいただきありがとうございました。
本作品は劇場版「夏目友人帳 うつせみに結ぶ」にインスパイアされて作った俳句20句です。

創作にあたり、作者の判断で劇場版には出てこない事物などを組み合わせた作品があります。同様にインスパイアによる創作ですので、こちらで想像して加えた内容も適宜あります。
俳句の観点からは、季節については作者の独断で「八月」としています。劇場版の世界が夏であること、またラストが初秋の風景(空の色や雲の形、登場する植物など)なので、そうしました。
その他、夏の季語と秋の季語が混在しています(季節順にしていません)。また表記の点では、おおむね旧仮名ですが一部は現仮名が混在しています。
以上、ご了承いただきたくお願い申し上げます。

本作品を世に送り出して下さったアニメ「夏目友人帳」のスタッフの皆様と原作者・緑川ゆき氏に感謝いたします。
本作はオリジナルアニメで緑川氏の原作によるものではありませんが、同じ世界観に基づく名作と思います。
かりそめの世=うつせみと空蝉(偶然にも季語!)のイメージを全編に漂わせながら、人と妖(妖怪のこと)が共に生きていく姿を深いまなざしで描いた本作。儚き時間の中に縁を結ぶ、それがタイトル「うつせみに結ぶ」であり、観た者それぞれに語り掛け寄り添ってくれる味わい深い物語です。
今回、拙いながら俳句作品として詠むことができ、嬉しく思います。

今後は原作やテレビアニメ版(シーズン6まで)の世界も俳句作品にしていければ、と思います。ちなみに、現在再放送中の「夏目友人帳 壱」の各話タイトルを入れた「物語る句」14句を下記ページに掲載しています。
併せてお読み願えれば幸いです。どうもありがとうございました!


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