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【服の物語#0】旅の記憶は、かくし味

siimeeの服は、一つ一つに「旅で見た情景」という物語が込められている。

ラオスの布を日本に伝え、それを手に取った人にどう感じてほしいのか。
布の手ざわり。手織りにしか出せない身体に馴染むような柔らかさ。草木の力強い色。
それは「素材」としてラオスに長く在り続けたものたち。それを生かしながら、より魅力的な形にするために、加えたかったのは「旅の物語」だった。

siimeeの服をどんな人に着てほしいかというと、「旅が好きな人」だ。
もちろんこの服を旅に着ていってもいいと思うのだけど、多くの人にとって旅は日常ではない。
だからこそ、日常の中で「旅するように生きる」ための服をつくりたかった。

仕事が毎日忙しい人。今は子育て真っ只中の人。試験に向けて目の前のことに向き合っている人。
本当は思いっきり新しい景色を見に行きたい。行ったことのない街を歩いている自分を想像してみたりする。
旅に出て解放的な気持ちを感じたい。未知のものに触れてワクワクしたい。
そんな気持ちを思い出してもらうための服を届けている。

そのために、デザインをするときにまず「旅をしている時の情景」を頭に思い浮かべる。
それは特定の街の景色であることもあれば、旅をしていると定期的に感じる、自分が違う場所からこの世界を見ているような気持ち。
そんな情景や感情を、デザインに落とし込む。

私が旅をするようになったのは、19歳の時から。
それは年に1-2回の、短い旅であることが多い。
でも、その期間だけは、その時にいる社会をいったん抜け出したような気持ちで、まっさらな気持ちで景色を見て、人々に出会う。

バンコクの街を歩いた時、今までにかいだことがない、鼻にツンと来る異国の香りがした。
ドイツの電車の中から見た山々は、日本の山とは違う、ブルーグレーの色だったような気がした。
ラオスでいつも寄り添ってくれていたメコン川、見るたびに色が違っていた。ある日はピンクがかったオレンジで、ある日は絵の具を混ぜ合わせたような不思議な青色。

それらはただの景色ではなくて、その後もずっと自分の生きる栄養素となって心の中にとどまりつづけた。
そんな「旅の記憶」が、まるでかくし味のように、日々の足取りを軽快にさせてくれる。
それが旅の力なのだと思う。

毎日を旅するように生きることで、日々に「解放感」と「ワクワク」を届けたい。

そんな思いでsiimeeというブランドが生まれ、服をつくり続けています。

ひとつひとつの服にこめた物語も、これから執筆してお伝えします。



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