サヨナラババァ2

サヨナラババァ(2)

2013年の12月、僕は東北自動車道を北上し石巻市を目指していた・・・。

ババァはその年の夏頃から”K”からの依頼で石巻へ入っていた。震災瓦礫が片付きはじめ仮設住宅へ住民が移住していた時期だ。そこで、地元で、家族をなくした若者で僕と同年代の”D”と同じく震災後自殺してしまった嫁の残された旦那”M”とババァは知人の紹介で関わり合いを持つことになる。そうして数ヶ月秋口頃まで東北各地を回ってきたらしい。その足跡の発端になった石巻にまずは僕はむかった。

石巻に到着したのは夕方ぐらいで日の暮れが始まっていたが雪のせいもあったかもしれないがひっそりとしている。人気が町の中から失せてしまってる感じだった。

市街地のはずれにあるまずは50代半ばの”M”さんの家にお伺いした。

「東京から、会長(ババァ)の使いできました。石巻では随分会長がお世話になりました。つきましてはこちらお納めください。」

と指定された手土産を渡す。相手は恐縮しきりで、なにか僕に持って行ってもらおうと地元でとれたものを渡そうとしてくるが僕は受けとらず帰る。 

一目見れば十分だ。

相手に信頼があるかないかなどすぐにわかる。
不意打ちで、相手もびっくりするし誰の使いかわからないところでババァの名前をだせば相手の表情や態度をみればわかる。

「このひとはババァの信者だ。」

確認して少しだけ世間話しを玄関先でして帰る。

”M”の嫁は震災後生きる気力を失ってしまい首吊り自殺をしてしまった。残された子供や婆はどこか時間に取り残されたような感触をもっていた。彼は地元で影響力のある男で地場産業に顔が効いた。だから、彼を利用し地盤を利用するのだろうかと推測した。

そうして、若い”D”のほうに会いにいく。この時は、"D"は仮設住宅にまだ住んでおり。年齢をきくと僕と同世代で1人の小さい子供がいた。両親が津波で流されしまい働く気力を失っていた。「このままではいけない、このままではいけない」と念仏を唱えるように生きてるよう見えた。彼に仮説住宅や商店街の惨状を説明してもらうために彼の車に乗りぐるりと石巻を回ってもらった。

真っ暗でなにもない一番流された場所はただただ何もなかった。
戻る車の途中で

会長ってどんな人なんですか?」と質問してきた。

見たままの人だと思いますが、なにかありますか?

ここへきて泣いてくれたり僕に仕事をくれたりするんですが・・・

仕事ですか?どんな仕事って言ってましたか?

九州の工業団地建設用地の投資組合の話で300万だしました。Mさんも出したので僕も・・

ゾッとしたが、ここでめくれ上がると問題になると判断し平静を保った。

なるほど、僕が関わってる案件ではないので詳しくは聞いてないので聞いておきましょう。

あ、いいんですどっちでもいいんです、毎日パチンコいって金つかうのも騙されて金なくすのも一緒なんでいいんです。

僕は、ババァが東北で金をつまんだなと思ったがなにが理由だったのかまだわからなかった。
でも答えは「ババァに疑いを持ってる」ということを僕は確信する。

よくババァが使う言葉がある「複雑怪奇な物言いをするでない!」使う本人が一番複雑怪奇なことを言ってくるのだが、なんの為に金を東北の連中から巻き上げたの僕はその時わからなかった。”D"と打ち解けMさんが最初いくら出したのかも聞き出した600万だ。もしかしたら他にも出してる人はいるのかもしれないがまずは900万が一体なんの種銭に使われて言ったのか突き止める必要が出てきた。

そうしてもう1つ出てきた九州の案件とは一体なんなんだ?

一旦福島を経由し東京へ戻ることにしたが、”K”がなに関わってるのか本心を聞きだす芝居が必要になった・・・。

サウナにいきません?”K”さん

上野のダンディというサウナを"K"はよく使っていたのを聞いたのでこちらから誘ってみた。彼は最初口が重かったのを僕は感じとりババァに不満を持ってる奴の常套句をぶつけてみた。

「ほんとあのバァさんには参りますよ、金だけ毎度使わされてまいる!」
「そうなの?谷内田さんは完全に会長の忠犬だと思ってたよ。」

と簡単に書くがサウナであれやこれや、震災ビジネスを聞いてすごいだなんだへったくれだと褒め殺しでここに辿りついた。 金作りを無論Kは計画したのだが計画1個だけだと資金が作れずいくつもの複雑な案件を組み合わせていた。そのかいつまんだポイントだけを僕は説明され現場に飛ばされたのは場面作りの為だったことがわかった。

この案件の裏にはまだ誰かいると感じたのでもう少し深く踏み込まないとダメだと思い始めていた。

この時点で、僕はすでに沼にはまっていた。

つづく

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40才になったので毎日書く修行です。