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ホットケーキから蝶が羽ばたく

昨春『四角いホットケーキ』という詩が、世田谷文学賞の二席に入ったことがきっかけで、『木庭撫子』というわたしが生まれた。

それまで詩を書いたことはほとんどなく、そもそもこの文学賞には随筆部門で出してみようかと軽い気持ちで考えていた。街のポスターで「あ、今日がしめきりだったな」と締め切り当日になって思い出し、詩ならなんとかなるかもと慌てて書いたものだったので、地域の小さな(しかも1番じゃなく2番の)賞だったけれど、意外な自分の一面を認められて、とても嬉しかった。

すると、これもまた意外なことに、その年の秋には、NHK教育『おかあさんといっしよ』の10月の月うたに『まあるいせかい』という詩が採用された。
なにかの思し召しかもしれないと勝手に思い、本格的に詩を書いてみようと決めた。
あれからもう一年になる。

45歳を過ぎた頃から、自分の人生を見つめ直し始めていた。ドラマを書くことに行き詰まり、放送作家に戻ったらやりがいも見つかって、仕事としてはそれなりによかったと思っていたのだけれど、果たしてこれでいいのか、人生を逆行しているような気がしてもやもやしていた。

人生100年の時代。
40代50代になって「第二の人生」に思いを馳せ、思い切って新しいことをスタートさせる方も多いと思う。わたしはその新しいこと、新しい自分を、探していた。何をやればいいのか、やりたいのか、模索していた。
そして運よく、ひょんなことから「詩」に出会った。

詩に関しては、まだまだ未熟である。
たくさん書いて鍛練しなければと思いつつも、正直あまり書けていない。
今年秋にはHPも立ち上げたのに、なかなか更新できずにいる。
ときどきこのnoteで、思い付いたひとりごとのような、日常の詩を載せているけれど、詩というにはあまりに稚拙な気がして、あとになって読み返して落ち込むこともしばしばだ。
一方で、些細な日常を切り取った、そのとき感じた素直な言葉こそ、わたしの詩だとも思っている。

夕方、喫茶店で頼んだホットケーキに「蝶」がいた。
はっとして、その蝶をしばらく眺めた。

羽ばたいていかなければ。
ここからもう少し別の場所へ。
この、ホットケーキから。

そんな年の瀬。12月3日である。

追伸。『四角いホットケーキ』『まあるいせかい』は
木庭撫子HPで紹介しています。
http://kobanadeshiko.com/

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