【ジョーカー/JOKER】

※以前書いてあったものを間違えて消してしまった為、再掲。

【あらすじ】
「バットマン」の悪役として広く知られるジョーカーの誕生秘話を、ホアキン・フェニックス主演&トッド・フィリップス監督で映画化。
道化師のメイクを施し、恐るべき狂気で人々を恐怖に陥れる悪のカリスマが、いかにして誕生したのか。原作のDCコミックスにはない映画オリジナルのストーリーで描く。
第79回ベネチア国際映画祭で、DCコミックスの映画作品としては史上初めて最高賞の金獅子賞を受賞して大きな注目を集め、第92回アカデミー賞でも作品賞ほか11部門でノミネートされ、主演男優賞と作曲賞を受賞した。
「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、大都会で大道芸人として生きるアーサー。
しかし、コメディアンとして世界に笑顔を届けようとしていたはずのひとりの男は、やがて狂気あふれる悪へと変貌していく。


まず見終わって最後に残った感情は、「共感」だった。

理不尽で、不条理で、どこを向いて、どんな風に進めば正解か分からなくて、そんな時期があったんですよね、自分も…。
「辛い」「悲しい」とかの感情って人によって違うから、勿論比べられるものではないけど、
私が経験したそれらと、ジョーカーの生い立ちとは比べ物にならない、、、とはいえ、やっぱり共感してしまう。
だから、もう序盤から少し涙が出てしまった。

自分が苦しかったのが、中学生の頃に受けていたイジメで、いまでもトラウマになっているくらいの出来事なんですが、
その頃も苦しんで泣いていれば「いい気味だ」と嬲られ、へらへらとしていれば「気持ち悪い」と叩かれ、
平然としていても、何をしていても、標的になっていたんですよね。
もうそれって、本当に正解が見えない。あんなに苦しいことない。

よく「言葉が死ぬ」と、その頃は想っていたなあ。
何か言葉を出そうとしても、それこそ、死にたい、とか、ツライ、とか。
そんな言葉も発する前に「この言葉を発することが間違いなんじゃないか」と想って飲み込んでしまって、
そのたびにその言葉は一度死んでしまう。という感覚だった。
何をしても正解が分からない(ここでいう正解は、いじめられないということのみになるけれど)のって、
本当に、海底にいるみたいだったなあと、今は想う。

体は鉛みたいに重くて、もがくたびに溺れて深く落ちていく感覚。
どんどん息苦しくなって、息ができなくて、光がどんどん遠くなってく、感じ。
そうやって動けなくなって、息ができなくなっていく感覚って本当に怖くて、
それに反するように自傷行為をしたこともあったりする。ODとかも含めて。
その頃ってもう本当にただの子どもなので、その頃はいろんな感情が溢れすぎて、もうどうしていいか分からなくて、
明確に「死にたくて」「生きてると実感したくて」なんて高尚な理由はなく、
ただ「怖い」という感情だけで動いてたなあ。懐かしい。

…というのは少し外れてしまうのだけど、その頃って、そういうことをしてくる相手に対して立ち向かう術がなかったんです。私は。
いや、術はあったのかも知れないけど、その術をもって、どう戦えばいいのか分からなかった。
それが正しいかはおいておくとして、相手を殴ったってよかった。極論。
やめて欲しいと何度いってもやめられなかったそういう、悪質なことに対して、手を出して、声を荒げたってよかったんだと想う。
でも私はそれができずに、適当に流して、いじめられたり、いじめられなかったり(他に標的が移ったり)を繰り返して、
そのたびに心は削り取られていくのを、黙ってみていたような気がする。

ジョーカーが銃を持ち、相手に銃口を向け、引き金を引いた瞬間、
私も「理不尽なそれら」に対して、牙をむけばよかったんだ、と涙が出た。

私がいままで抱えてきた、「理不尽なものへの恐怖」に対して、
ジョーカーは引き金を引く選択が取れた、それが、理性を無くす、という結果だとしても。
勿論、その後のジョーカーの姿、ネタバレになるけれど、最後のシーン。
人々に称えられ、歪んだヒーローとして称賛されている姿、それはとても晴れやかで、美しくて、あの頃の私がなりたかった姿だった。

どんなときも、私は多分、人に嫉妬している。
妬んで、欲しがって、それでも「いい人」で、「しあわせ」であり続けたいずるい人間だ。
でもその、ずるさや、汚さを愛してくれる存在、それこそ、「親」には恵まれたから、道を踏み外さなかっただけで、
私だって、他の誰かだって、十二分にジョーカーになる可能性を持っているんだろうな。

なんだか感情に沿った部分のみ、あまりネタバレしない程度で書いてしまったけど、
普通に映画としても本当にすごかった。圧倒された。
ホアキンの表情がどんどん笑顔になっているはずなのに、なんでこんなに不気味なんだろう、と背筋がぞくぞくする。
ちゃんと「狂っている人の目」をしていて、それに引き込まれてしまう。危ない、となる。
これ以上見つめていたら怖い、となる感じ。

序盤から痛くて、不気味で、気持ち悪い感じが続いてて、胸やけしそうになるのだけど、
その世界の中でうまく生きていくことができていないジョーカーの背中を、
しっかりと焼き付けておかなきゃいけない気持ちになるのは、本当にすごかったなあ。

普段洋画より邦画派なんですが、これはもう、本当に見てよかった。
映画館に行く価値がある、とこんなに感じられるの、すごいなあ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?