【ロマンスドール】

高橋一生さんが好きな私としては、「これは…!(絶対に"いい"高橋一生さんが見れるぞ…!)」という熱い気持ちをもって映画を見た。
その予想はぴったりと当たって、昨今の高橋一生さんの中でもずば抜けていい役、物語だったと想う。(カルテットも、よかったけれど!)

【ストーリー】
一目惚れをして結婚した園子(蒼井優)と幸せな日常を送りながら、
ラブドール職人であることを隠し続けている哲雄(高橋一生)。
仕事にのめり込むうちに家庭を顧みなくなった哲雄は、
恋焦がれて夫婦になったはずの園子と次第にセックスレスになっていく。
いよいよ夫婦の危機が訪れそうになった時、園子は胸の中に抱えていた秘密を打ち明ける……。


ラブドール職人、というだけでなんてキャッチーで痺れる役どころ…!という私の性癖はおいておくとして、
ストーリーを読むだけでは伝わらないくらい、素敵なラブストーリーだった。
哲雄の、宝物に触れるように園子に触れるひとつひとつがずっと綺麗で、指先の神経までしっかりと、
ああ、綺麗だな、と想っているような、そんな気持ちが伝わってくる気がして、
一見、性的に見えるシーンでも、それは全く破廉恥な、下世話なものではないのが素晴らしい。
後の方で、二人がセックスをするシーンも、園子の肩甲骨の美しさだとか、哲雄の、恐る恐る触る、ということで伝わってくる愛情だとかがあふれていて、
そういったシーンでぐっと涙が出そうになったのは、多分初めてだと想う。

誰かを大切にする、というのは、とても大変だ。
大切にしているつもりでも、見返りだとか、飽きだとか、「ここにずっとある」と想ってしまうからこそ、
少し手を抜いて、乱暴に扱ってしまうときだとか。
それは恋人、夫婦だけではなく、同僚、友達、仕事など含めて。

大切にできていなかったことに対して、自分や、相手に嘘をつくことは簡単なのに、
哲雄も園子も、これが壊滅的に下手なのが愛おしい。
不器用で、下手くそで、愛情だけが先走りして、なんて不格好な夫婦なんだろう。
…といいつつ、多分これは哲雄と園子に限った話ではなく、多分人間なんて大体みんなこんなものなんだろうな。
(私も壊滅的に不器用な、下手くそな人間なので、とても気持ちがわかる)

嘘といえば、噓も方便、という言葉があるように、人に嫌われたくない、傷つけない為の嘘はこの世に蔓延っていて、
私たちは多分それにうっすらと気づきつつも、自分も、そういった類の嘘をついているような気がする。
そういう、「嘘」の積み重ねが、この作品の根底にある気がして、それは決して「嫌な」気持ちにはならない類のものだ。

物語の大筋としては、大きな出来事もなく(いや、あるけれど、多分想像ができると想う)進むけれど、
そういった二人の不器用さに一喜一憂させられる。


この作品は、なんせすべての役者陣の演技が素晴らしいのもあるのだけど、
哲雄と園子がもう、本当に、本当に素敵。
哲雄がラブドールを制作中、胸のあたりを作るシーンがあって、整える為に撫でているシーンがあるのだけど、
ここの哲雄の表情がなんとも愛しくて、指先がとても綺麗。
ああ、好きなんだな、大切なんだな、愛情があふれているんだな、とこんなに伝わるとは、とびっくりする。
(私が好きな高橋一生さんの詰め合わせすぎて、びっくりしてしまった)

何も言葉なんてない、一瞬といえば一瞬のシーンなのだけど、これがもう本当に…。
園子に関しては、ちょっとした言い回しが妖艶なのがずるい。
「あせも」と言いながらはにかむだけで、こんなにも魅力的だなんてずるい。
ずるい。(大事なことなので何度でも言う)


優しい、優しい、不器用な物語。
蕩けるくらい甘いくせに、じらされているような、それこそふたりがしていたセックスそのもののような映画。
レイトショーでもう一回見たいし、あえて好きな人と見に行きたくなる。

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