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ZORN「My Life at 日本武道館」レポート

去る1月24日(日)、ラッパー・ZORNによるワンマンライブ「My Life at 日本武道館」に足を運んだ。ライブから半月近く経った今でも、その余韻が消えない。そんな当日の模様を、ここに記録しておきたい。

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新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下の東京。そうした厳しい環境でも、開催の決断を下してくれた全ての関係者に敬意を表し、呼応するかのように、当日の武道館はヘッズで溢れた。雪の予報は小雨に変わったが、吐息は白い。後ろに並んでいた男性は福岡から参加という。この歴史的な瞬間に立ち会うため、まさに日本各地からファンが詰め掛けていた。

最大収容人数14000人を超える日本武道館(※当日は感染対策として収容人数を制限)で単独ライブを行った日本のラッパーは、日本のヒップホップ史を振り返っても20組に満たないそうだ。

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開演の17:30を10分ほど過ぎたところで、1曲目の「Shinkoiwa」からスタート。「立て!」のたった一言で会場は総立ち、早くも興奮はピークに。そして入れ替わり立ち替わり、歴々たるコラボミュージシャンが勢揃いした。

漢 a.k.a GAMI、ANARCHY、Kvi Baba、Weedy、AKLO、NORIKIYO、AK-69、KREVA、カミナリ(お笑い芸人)、般若、SHINGO☆西成、ILL-BOSSTINO、MACCHO (敬称略)。

彼ら客演アーティストが登場するその順序、構成が素晴らしかった。

Haruna氏がTwitterに投稿して下さったセットリストがコチラ

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AK-69、KREVAらのショービズ界のドン然としたステージングは流石で、大舞台慣れしている、スケールの大きな立ち振る舞い。そんな彼らを横目に、「現場の作業着のアンチャン」そのままのZORNが、自然体で気を吐く。そのミスマッチ感が、かえって小気味良い。なにせこの日の主役はこの「現場の作業着のアンチャン」ZORNなのだ。

客演それぞれがそれぞれ、個性的なラッパーで、バックグラウンドも違う。ショーが進むにつれフと感じた。
ラッパー達は、どうやら「舞台の上でパフォーマンスを存分に発揮できるそれぞれのパーソナルスペース」があって、そのスペースのサイズは、ラッパーによって異なる。
ZORNは、離れたほうが良いときには離れ、並んで立って掛け合いを見せるべき時にはそうし、客演アーティストがもっとも輝く距離で、ステージを共にしていたように見えた。その配慮にシビレた。

また、観客へも再三、お礼を口にした。その時は手前前方のモニター(カンペ?)を見ているようだった。その“言うべきことは言いもらさない”几帳面さも、とても好感度が高い。

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緩急のついたステージでは、しっかりとソロのラップも聞かせた。

「最近は話しかけても“それなー”とかしか言わねーけど。TikTokもいいけど、HipHopはもっといいぜ」

と韻を踏みながら娘たちや家族にラブソングを捧げたり。

「紅白でKOHHを観たい人、どれぐらい居ますか。ミュージックステーションで舐達麻を観たい人、どれぐらい居ますか。日本のヒップホップはもっと良くなる」

とシーン全体の底上げを鼓舞したり。(そのシーンは自分が作るという自負!)

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個人的には終盤、THA BLUE HERBのILL-BOSSTINOを迎えての「Life Story」が印象深かった。BOSSの伸びやかな太い声。大声量なのに諭すような声。昨年末の恵比寿リキッドルームでのTHA BLUE HERBワンマンライブ。それがあったからのこの武道館のライブに来ることができた。すべて繋がっていた。

そしてOZROSAURUSのMACCHOが歌う「AREA AREA」で、涙が溢れた。

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ライブも2時間半を迎えた頃、ZORNは地元の仲間たちを何十人もステージにあげた。「街を歌い地元をRep(レペゼン=代表)しろ」と歌うZORNが、地元の仲間をステージに上げて、そして「All My Homies」を歌う。最高かよ。
地元への愛着がないリスナーもいるわけだが、そうしたリスナーへはAKLOをして

俺の周りには無いぜボーダー
トライリンガルラッパー国際派
そりゃ地元は無いからアウトサイダー
でもRepresent Me 唯一無二さ
                                                ZORN / Have A Good Time feat. AKLO 

と歌わせしめる。そのバランス感覚。

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「アンコールは用意してません。この曲で最後になります。」

とラストを飾ったのは、本公演のタイトルにも掲げられた「My Life」。

そんな最後の曲を終えると、

「明日も朝から仕事なんで。帰ります。」

とだけ残し、サッとステージから去っていった。
そして翌朝、Twitterにはこんな写真が投稿された。

全ての働く人間の人生に 僭越ながら俺がいいねを押してぇ
それは素通りされるストーリー 生活の声よ 柵を越えろ
嘘のない言葉 お前を後押し 武道館の翌朝も俺は作業着
                                                   ZORN / Life Story feat. ILL-BOSSTINO

言葉に嘘がないことを、姿をもって示し、この投稿を見届けた多くのヘッズを唸らせたのだった。

と、

ここまで長々と書いてきたけれど、何が書きたかったかって
それは

ZORNさん、シビレます。力貰いました。

以上!!

(※このエントリで引用したZORNのMCは、全て筆者のうろ覚えです、一言一句正確ではありません、ニュアンスまでに)

ZORN-THUMB-s-1027修正

<了>


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